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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第1章:始まりの春
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『第6節:和解』

5分ほど絞められてようやく解放された。

気絶した方がずっと楽だったと思うが、

無意識に抵抗する癖がそうさせてくれなかった。


「よし、もういいかな」


「ゴホッ、ゴホッ」


「ごめんね、勝負なんて言いながら香織君の身体検査しちゃった」


「ゲホッ、身体検査?」


「うん、ずっと香織君の身体データが欲しかったんだけど、

 逃げられてたから良い機会だし調べちゃった」


そういえばさりげなくベタベタ触られた気が。

あの服そんなことまでできるのか。いったいどれだけの性能が搭載されてんだ。


「調べた限り、身体能力は特別低いわけじゃないし、香織くん忍具使うの得意なんだよね」


「そこだけは弟に唯一負けないところですね」


「忍具使った奇策戦法なら十分強くなれると思う」


「でも、武力をA以上にしたり、党首になれるかって話になると?」


「・・・かなり難しいかな」


「もう分かってますよね、僕の実力の限界を」


「うん、はっきり言うと成長できてB+レベル。

 だからB+の人とは戦えてもAの人達と対等に渡り合うのは無理」


・・・そうなんだ。B+までいけるのか。

もう僕は今より強くなるのは不可能だと思ってた、小学時代の6年間、全く成果がでなかったから。


「強くなれる、強くなるべきって言われましたけど、

 それが無理だって理解してもらえましたか」


「うん・・・。でも、どうして香織君は自分の実力の限界を知ってたの?」


「小さい時・・・不慮の事故にあって」


「え、それって」


どういうことなのかと聞きたかったのだろうが先輩は言葉を飲んだ。

他人の過去に必要以上に干渉してはいけない。

触れてしまっても無責任に謝ってはいけない。

人と関わるうえではとても大切なこと。


先輩は本当に良い人だ、こんな風に気を遣えるのだから。


「と、いうわけですよ。なんだ、初めから調べてもらえばこの1年

 あんな面倒くさい日々送らずに済んだんだ」


「面倒くさい・・・」


おっと、流石に正直に言いすぎたか。

悪口なんて気にしない正確だと思ってたけど、先輩も人間だしな。


「まあ、もう1つ分かったことはありますね」


「え?」


「Aは無理でもB+にはなれる」


「う、うん」


「B-から先は無理と思ってましたが先輩の言葉を聞いて努力することにしました」


「嬉しいけど私に気を遣ってるならいいよ」


「僕がそうしたいから勝手にやるだけです」


「・・・良かった、香織君がその気になってくれて」


先輩にしては珍しく細く小さい声だ。

挫折の中のほんの小さな成果に安堵したのだろう。

僕なんかより多くの努力と挑戦をしてきた先輩なら、今さら挫折の1つや2つ

どうってことないだろうと思ってた。けど、それだけ真剣だったんだ。


他人の人格をここまで尊敬したのは人生で初めて。

そう言えるほど目の前のシャーロット=レーンという女性は偉大に見える。


「あの、ごめんね。この1年間私の身勝手に付き合わせて」


「まあ、僕が提案したことですし、それで逆に他の人に頼むのも

 無責任な話なので謝らないでください。それに・・・」


「それに?」


楽しかったとは照れくさくて言えない。

先輩とは戦闘以外で漫画やアニメの話をしたり、行事で僕と一緒に参加してくれたり、

中学じゃモブみたいな位置にいた僕に楽しい学園生活を送らせてくれた。


「それに学園のマドンナを独り占めして、周りの嫉妬した顔を見れて面白かったですし」


「え、香織君以外の人とも研究したり遊んだりしたよ?」


・・・わーーーーーーーはっずかしいーーーーーーー。


ですよねですよね、こんな綺麗なうえに愛嬌も良ければ

いろんな人と仲良くしてますよね。

そっか、毎日じゃなくてほぼ毎日か。


僕は話したり追いかけっこしただけだけど

イケメンとは手つないでデートしたり、やることまでやってますよね。

自意識過剰の自分乙、ちょっと滝に打たれてきます。


「あ、で、ですよね」


「そうだ、この前秋葉くんと秋葉原行ったとき

 香織くん誘いたいって言ってたから今度3人で行こ!」


「良いですね、行きたいです」


あの人そんな親しかったのか!

ってか、これ完璧に先輩のこと好きだよな。


「そっか、僕は先輩のこと好きなんだ」


「え?」


やべ、声に出してた。さっき照れくさいとか思ってたのに。

でもいいや、さらって言って普通にフラれよう。


「僕は先輩が・・・」


「兄上!」


僕の言葉を遮る高く大きい声が突然耳に入ってくる。

女の子ように優しく可愛らしい聞き覚えのある声の主に視線を向ける。


「か、(かえで)



その正体は僕の弟、安心院 楓。




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