『第5節:ポテチ開発者に感謝』
ふむ。昨年は手合わせする事は叶わなかったが、やはり此奴・・・強い。
4m程の長刀を絶えず振り回しておる。あれだけの長さでは、通常の刀の構えでは
重心が偏りまともに持てん。故に此奴は遠心力を利用し舞うように攻撃しておる。
僅かに生まれる隙を突いてクナイを放るが、腰にぶら下げた短刀で防ぎおった。
短刀を握る間、長刀は片手で支えねばならぬが難なく振り回す。仮に刀を折ったとしても
素の力で殴り合うだけでも十分猛者を蹴散らせるじゃろ・・・じゃが。
「オラオラ。どうした、防戦一方じゃねーか!」
刀を振り回す力より人格の変わりようが面白いのう。華らしい女子がここまで凶暴に
なろうとは、儂が生きとる間に出会いたかったもんじゃ。
「話を聞いてもらえんかのう。交流会どころではないんじゃよ」
事態を伝えねばと話し合いを持ちかけると手を止めおった。
やけに素直なのが気味悪いと思っておったら、訳の分からぬ事を言い出しおった。
「そんなに・・・」
「なんじゃ?」
「そんなにシャロが好きなのか!!!
オレとの勝負より、あいつといたいってのか」
「む~香織は・・・ぼ、僕はあの小娘・・・じゃなかった、シャロを好いておるが、
そういう訳ではなくとのう」
「せっかく政略結婚の話が無くなったんだ。オレは、オレを救ってくれた人と
一緒にいたい」
「かお・・・それが僕か?」
「ああ。オレを解放してくれた。何より、家柄も、体裁も気にしない香織の側にいると、
どこか安心するんだ」
ふむ。確かに、香織の奴は儂に似て、くだらん柵みを嫌う。いつの時代も、人とは
面白く、難儀なもんじゃのう。緊急時代じゃが、若人の苦労を蔑ろにはできん。
「ならば全力でかかって来い。我を通すには、結局力を証明せねばならん」
「・・・やっぱ、お前は最高だ」
そこからの時間はまさに至高至福。生身でありながら、風火土雷水の攻撃を避けては
受け流し、長刀を華麗に舞いながら斬りかかって来る。
全力で己の能力を発揮し、相手の攻撃が自分の命に届くかという緊張感。やはり闘いは良い。儂の真の目的がいつ果たせるかなど今はどうでもいい。今は、この時間の愉悦に身を委ねよう。・・・じゃが、楽しい時間は直ぐに終わる。
突如森全体が揺れ始めた。ただならぬ気配を直下から感知しその場を離れると、
大地がひび割れ現れたモノ。獣の身体に翼があって尻尾が蛇。
「何じゃありゃ」
「キメラ?あんなの本でしか知らねーぞ」
本・・・空想上の生き物という訳か。
「ふむ。どうやら第三者の仕業の様じゃの」
「第三者ってなんだよ」
「ここらは結界で囲まれておる。おそらく頭とやらの仕業じゃな」
「早く言えよ!」
「言おうとしたんじゃが斬りかかって来たからのう」
「・・・ごめん」
「なんのなんの。実に楽しい時間じゃった。お?」
「どうした?」
「あれ見てみい」
「シャロと帝王の・・・」
ダニーとやらがシャロを抱えてこちらに真っ直ぐ突っ込んで来る。
何かデッカい声だしておるが。
「おーーーーーーーーーーっし。じゃあ、やるか!」
現れるなり何を言っておるんじゃこいつは。
「やるって、何をだよ」
「あんたは窈窕の百合だよな。今からここにいる全員で化け物を討伐するぞ!」
「おいシャロ。此奴は何故こんなやる気なのじゃ」
ずっと脇に抱えられたシャロは何故か赤い顔をしておるが、そんな事よりダニーの心境を
確認する方が先じゃ。
「えっと、ほら、男の子って怪物を倒す英雄伝好きでしょ。つまりそういう事」
「ふむ、香織がそんな書物やらあにめ?を見てたのう。儂は男心は分からん」
「男心って、貴方・・・もしかしてお」
「行くぞ香織、俺たちの英雄伝を後世に残すんだ!」
シャロが何か言いかけていたがダニーが遮る。
英雄伝か、安心院の名を更に広めるのは良いか。
「待てよ。あんな化け物と争えば近くにいる奴らまで巻き込まれるだろ。
先に他の奴を結界から逃がさないと」
「百合さんの言うとおり。ねえ・・・香織君、結界はどうやったら破壊できるの」
「普通の壁を破壊するのと要領は変わらん。階級や術式に組み込んだ条件次第で
強度は変わる。よほど特殊でない限りは儂が破壊できる」
「おいおい、香織は俺達とキメラをぶっ倒すんだ。他の奴に頼めないか?」
「相手は魔力A+よ。香織君じゃないと破壊できないんじゃ」
「かと言って、オレ達4人いないとあの化け物は倒せないだろ」
地面から完全に姿を表したキメラとか言う怪物は毛繕いしておる・・・可愛いのう。
儂が結界の方に行ってはあの化け物を、化け物の方に行っては結界をどうにもできん。
化け物退治と結界破壊の2手に分かれるには。
「お主の能力が必要じゃ」
「・・・誰に言ってるの」
さっきからそこで異空間能力で隠れている奴がいる。僅かに感知できる魔力に儂の魔力を放つと空間に亀裂が入り、次の瞬間はじけ飛んだ。空間からは現れたのは、術の主と思われる空のように青く美しい長い髪をした女子であった。




