『第4節:運動会があるのに球技大会がある理由とは』
外と遮断されている。つまり私達A+が3分で強制退場されることはない?
とにかく、みんなに事情を説明しないと・・・あ。
「美津希!」
3匹の犬に囲まれている。結界に気づいてないから作戦通り問題探索を
してくれてたんだ。
「シャロちゃん。良かった、問題3つも見つけられたよ」
「もう交流会は中止。周りは結界で閉じ込められてるの」
「え!?」
「みんなを1カ所に集めたいの。場所は解答ルームにしようと思ってて、
文ちゃんがどこにいるか分かる?」
「それならさっき動物で探してあっちの方に670mほど離れた所にいるよ」
「分かった。先ずは美津希を運ぶからその後動物でみんなを護って」
「私が、む、むり・・・うん。分かった!」
香織君が言ってたけど本当に今年の美津希はどこか変わった。ここで責任ある役を
請け負うなんて。詳しく経緯を聞きたいけど今は他にやるべき事がある。
私は美津希を抱えて教えてもらった方向に移動すると白い立方体の建物があった。
「英証の看板がある。ここで間違いなさそう」
「文ちゃーん。いるー?」
美津希の呼びかけに文ちゃんが出てきた。
「待ってました。後は任せてください。直ぐに解きます」
「交流会は中止。結界で閉じ込められてるみたいなの。文ちゃんは
美津希とここで待機してて」
「結界ですか、分かりました!シャロ様はどうされるのですか」
「他の人達をここに集めてくる。その後は警護と結界破壊の2手に
分かれて行動するから、2人はここを動かないで」
「文ちゃんは私が必ず護るから、安心して」
「シャロ様、お気を付けて」
「また後でね」
2人に見送られながら相手校の人達を探しに行く。時間は3分を超えても会場に
いるということは完全に外と遮断されてるのね。気絶していた一成と知力クラスの
人達の保護は完了。帝王の魔力、窈窕の武力の選手は私の話を信じず攻撃してきたから
やむを得なく気絶させて解答ルームに運び、窈窕の魔力クラスの人を探したけど一向に
見つからない。魔法か魔具で隠れてるのかな。
「う、嘘」
大きな衝撃音の方向を見ると、大樹がどんどんなぎ倒される。百合さんの仕業で間違いないけど、私の目には災害が映る。大樹を焼き尽くす業火、一部を飲み込む大量の水、
天より穿つ雷、轟音が響く突風。あいつだ。香織君のもう1つの魂。これだけの魔法を、
いや、忍術が使えるなんて。もし香織君が才能を失わなければ・・・それどころじゃない。
さっきから敵らしき存在が見当たらない。結界で閉じ込めてから何も仕掛けてこない。
いったい誰が何の目的を持ってこんな事を。
「なあ、あいつ何者なんだ?」
背後から聞き慣れた声が話しかけてくる。全体を見渡すため大樹を登ったのが失敗だった。
射程の通る位置を先取りするためにダニーは高台を陣取りする傾向にある事に、どうして頭が回らなかったの。
「クッ!」
「お~っと。動くな、お前の兵器より俺の方が先に引き金を引ける」
ただ後ろを取られるだけなら対処できたけど、香織君達の戦いに気を取られてた。
戦闘が目的ではないけど話を聞いてもらわないと。
「あれが、かの有名な安心院一族の長男よ。質問に答えたから
突きつけてる銃を下ろしてくれる」
「すっげ。あいつ戦闘モードになると髪の色変わるの?」
もう1つの魂の存在は伏せるよう言われてるしそういう事にしとかないと。
「そうよ。それより、もう交流会どころじゃないの」
「カッケー!!・・・交流会どころじゃないってどういうこと?」
「誰かが結界で私達を閉じ込めてるの。だから速く逃げないと」
「結界ってあれだろ、魔力のバリア。うおーすげー!!」
ぐぬぬ・・・すんなり聞き入れてくれたのは嬉しいけど相変わらず呑気な性格。
「だから逃げないと危険なの」
「結界を破壊する算段はついてるのか?」
「英証の解答ルームに人を集めてあいつ・・・香織君に結界を破壊してもらう。
相手はA+の魔力系だからダニーも力を貸して」
「それは良いけど、香織と戦ってる彼女をどうにかするのが先じゃないか」
「さっきの感じだと話し合いに応じる気がしないし、どうしたら」
「うっし。俺が一発麻酔弾を」
「ダメダメ!百合さんも戦力に加えないと」
「そっか。じゃあ、シャロが行って説得してこいよ。俺が援護するし
3体1ならさすがに耳を貸すだろ」
「ありがとう。行ってくる」
香織君達の元へ向かおうとすると森全体が揺れる。敵の攻撃かと思ったけど違う。
私達がいるのは森の中心地にある最も巨大な大樹。その真下から現れた巨大なモノ。
黄金色の体表に魅了されるような白い翼、毒々しい紫色の蛇が尻尾の様に蠢いている。
神話上の怪物・・・。
「き、キメラ?ありえない。あんな幻獣が存在するなんて。どうして」
「シャロ」
ダニーは私を脇に抱えると、まるで、うんうん、少年の目をしながら高揚に叫んだ。
「みんなであの化け物ぶっ倒して英雄になろうぜ!」
非常事態が連鎖しているにも関わらず、新作ゲームを買ってプレイするのが待ち遠しい
みたいな顔をしている。香織君と百合さんは巨大なキメラの出没に気づき、戦いの手を
止めている。急いでこの結界から脱出しないと。交流会開始から12分。
焦燥、不安、疑問、様々な感情と思考が入り乱れる・・・のに。
意識し始めた後輩を視界の中に、好きだった・・・好きな人の腕に抱えられて
心が喜んでいる自分がいる。この雑念が、最悪の事態を招くとも気づかずに。




