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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第6章:炎天下の弱肉強食戦
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『第1節:カロリーは時と場合で敵にも味方にもなる』


何で、どうして。貴方は自分の事しか考えない人だったのに。


「お願いやめて!私はそんな事の為に造ったんじゃない!」


「やった。やっと見られる。自らの意志で自らを殺す瞬間を」


私が必死でダニーを説得しているのに、この何の特徴も無いのが特徴の男は

感情も込めず、表情も変えず目的を果たせる喜びを口にする。


「おいおい。そんな事なんて言うなよ。俺は嬉しいぞ。

 やっとこいつを使う事ができるんだからな」


ダニーはいつもの軽い口調で銃口を自分の頭に密着させている。

私が造った、アガペーを。


「嬉しいって何よ。せっかく私が造ったのに、他の銃に浮気して」


「・・・ずいぶんと重い事情があるみたいだね。ダニー。

 今右の手にある、殺人に特化した兵器はどういう違いがあるんだい」


回りくどく、嫌みが混じったその発言が非常に腹ただしい。

・・・でも反論ができない。私はただダニーに喜んで欲しくて、

自分が造った兵器が将来人を傷つけるかだなんて考えず、その後も

ダニーを忘れたくて武器造りに没頭して。


ダニーがどんな返答をするのかと意識を集中させると出た答えは。


「俺がこの銃を使うのは・・・」


ああ。私はなんて最低な人間だったのだろう。

人と仲良くするのが好きなくせに。

人の気持ちを理解しようとせず。

自分の中で勝手に答えを出し。

自分の答えで周りを振り回した。


「そんな顔するなよ。なんかさ、大丈夫な気がする」


ほんと・・・何言ってんだか。銃口を頭に向けて、これから自死するって状況なのに。

ダニーはいつもと変わらず、優しい顔をしている。私が大好きな顔。


「安心して。彼女には手を出さない。契約に誓って」


私を結界に閉じ込めた頭は、ずっと一定の口調で淡々と話す。

悔しい。無力である事が凄い悔しい。香織君もこんな感じだったのかな。


「シャロ」


引き金を引く刹那。私達は、最後の最後に言いたい事を言った。


「愛してる」


「私もダニーを愛してる」


そして、ダニーは笑顔で引き金を引いた。銃声は静かで、弾丸がダニーの頭を貫通した。

血がはじけ飛び、倒れ込むダニー。映画じゃない、アニメじゃない。

リアルに、人が死ぬ瞬間を目の当たりした。事件が起きてから1時間程度しか経ってないのに、多くの犠牲を出した。用意周到な様でどこか杜撰な計画に私達は振り回された。

百合さんは両腕を失い、楓君は魔力が枯渇し意識不明。外ではまだ奏君が戦っている。

そしてダニーが死んだ。私はどうすれば良かったのかな。

なんて、今更考えても意味なんて無いのに。


「これが・・・これが自殺。自分を殺す自殺!あーーーはっははははは!」


今まで一切の感情を見せなかった頭は声高らかに笑った。

気づけば私を閉じ込めた結界は解除されている。けど、私達を閉じ込めた結界は

解かれていない。考えなきゃ、この後どうするべきか。武器が無い私じゃ力尽くで

頭をどうにかできない。契約上私を傷つけられないから人質にできない。

どうやって逃亡するつもり?結界魔法しか使えない中で、一体どうやって。


「ふう。後はこの空間の中で空腹状態の末期と言える餓死を待つだけ」


「え?」


「ここに来る前から俺の頭の中ではこの瞬間を計画していた。

 人が自分を殺す場面を見たら後は餓死するだけ。悪いけどシャーロットは出さない。

 結果餓死する運命だけど、俺が手を出す訳ではないから契約違反にはならない」


「そんなの無理よ。事件が外に漏れるのも時間の問題。貴方がここにいるって分かれば

 政府が絶対捕まえに来る。いくら貴方が魔力A+でもこんな結界解かれるわ」


「どんな人間でも不可能さ。この結界は俺の終局。自分が生きている間は、結界内に

 永遠に閉じ込められるのを条件に、絶対人の手で破壊されない」


そんな。自害を覚悟して発動するのが終局。嘘はついてない

つまり、ダニーは犬死に。どうしたらこんな人間が生まれるのかなんて今はどうでもいい。とにかく、結界は破壊して頭に罪を償わせないと。問題はこの結界をどうやって・・・


「・・・ところで、どうだったかな。俺が自分の目標のために考えた計画は」


「殺意が湧く質問ね。そうね、杜撰なところが幾つかあったけど見事よ。

 多くの優秀な人材を育成した名門3校の精鋭達を撃退した」


「もう少し細かく、頭から順におれの計画の解説をしてよ」


「何でそんな事を!勝手に自分で振り返ればいいでしょ。

 どうせ死ぬのに意味が分からない!」


「しないとダニーの肉体が原形を留めないほどもんじゃ焼きみたいにするよ」


「やめて!」


「解説してくれるなら腐らないように保存結界を使うよ」


「ほんっと、良い性格してるわね」


「はいもしくはいいえの返答が耳に来ないけど」


「はいはい。分かったわよ。だから速くダニーに結界を」


「俺は幸せ者だ」


頭はダニーの遺体に手を向けると鮮やかな緑色の魔力がダニーの周りを巡回する。

徐々に結界が張られていく。結界が完成したのを黙認して私はこれまでの、たった

30分の事件を振り返る。まさか交流会開始のカウントダウンが事件開始だっただなんて。


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