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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第5章:蒸し暑い日に迫る冷血な手
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『最終節:冷や奴にはショウガと醤油とネギ派』


「私達は」


「正々堂々と」


「戦うことを」


快晴に恵まれた交流会。3校の代表者である先輩、升園さん、ダニーによる宣誓から始まる。


「「「誓います」」」


3名の宣誓と同時に、昨日の会合にいた者以外の生徒達が声をあげる。

交流会が諸事情により2日のみとなり、事情を知らぬ者は自分達の

代表者の勝利を祈ると前向きに考えてはいるが・・・。


事情をしる者からすれば気が気でない。悟られぬようにしても、僅かに

焦燥が伝わってくる。総合戦は武力、知力、魔力から代表を1名ずつ選出。

例年通りA+の出場時間は合計3分。頭の犯行に対応できるよう、今年は

A+の出場を禁止し、生徒の防衛に当てようとしたらしい。しかし、総合戦のみという

異例の事態に加え各校の宝人とも言えるA+の出場を禁止しては、ますます生徒の

疑心感を沸き立たせてしまう。


英証からは武力から僕が、知力から村田さんが、魔力から沖田先輩が。

明らかに武力は力不足過ぎる、まあ、奏と清水と高山は防衛に回ってくれた方がいいよね。

試合内容は、舞台である森に散らばる古文書で書かれた問題を発見し、制限時間までに

多く解答したチームの勝利。1度正解すると問題文は抹消される。解答方法は設置された

部屋で問題番号と答えを入力する事。森には様々な罠に猛獣が仕掛けられており、相手への

妨害もありなため、戦闘力と博識さが求められる。


文学専攻の村田さんを常に解答ルームにスタンバイさせ、沖田先輩が動物で問題を

散策している間に僕が相手チームを妨害。問題探しに夢中になってくれれば【不意打ち】の

成功率は上がるし、探索、妨害、解答の三位一体が成立するのはありがたい。

問題は相手校のA+がどのタイミングで現れるかだ。クラス別団体戦、総合戦合わせて

3分のみの出場条件。大抵は総合戦に出場時間を割くが、今年は総合戦のみのため全員

フル出場。・・・なあんて話をしたところで、英証にはあの人がいる。試合内容が1時間前に発表されたのにも関わらず、探索装置を開発し、雷速で移動しながら、古文書で書かれた問題を解く知能を併せ持つ。我らがシャーロット=レーン先輩が本気を出せば今回の総合戦は楽勝だな。

試合開始と同時に先輩には出場してもらうつもりだけど、当然相手は警戒するだろう。

升園さんは長刀と言えど広大な森の中を雷速で動き回る先輩を

捉えるのは困難。問題は・・・ダニーか。先輩曰く、動体視力は折り紙付き。

何より、先輩の人格を理解しているため、行動を先読みされる恐れもあるらしい・・・けど。


「ダニーは最後に出てくると思う。あいつは目立ちたがりだし、美味しいとこ欲しさに

 残り3分でトリを飾ろうとするの。本当に自分中心なんだから」


「なら、シャロ様が開始と同時に相手を倒し問題を発見できれば勝利ですね」


「ええ。その後は文ちゃんが正解してもらうだけね」


「わ、私がですか。シャロ様なら容易に解かれるのでは?」


僕もそう思うけど、おそらくこの人の頭の中ではみんなで勝つ事が第一なのだろう。


「無理よ。問題を回収したら、相手は私達の解答ルームを攻めてくる。

 もし百合さんも最初から出場して攻めてきたら、私は護るので手一杯」


先輩にかかれば問題を手にするのと同時に解答を導いて、全てを回収しきった後に

解答するぐらい楽勝の筈。まあ、村田さんは1年生。来年以降の事を考えれば

自分の力で勝つという経験を積ませるのは大事か。勝つ以外にも大切な事はあるしね。

僕は別に活躍も功績もいらないけど、沖田先輩は・・・


「自信を持って・・・大丈夫。私はできる」


お、随分と気合いが入っている。昨年はガッチガチに緊張していたのに。

最後の交流会に全力で挑もうとしているのかな。


「美津希、頼むよ。動物が相手選手の足止めしてくれると助かる」


「任せて。私はもっと自分の魔法を信じたい」


・・・沖田先輩とは、あまり話さないためどういう人なのか知らない。

けど、こんな前向きな人だっただろうか。少し、警戒しておこう。

最悪の万が一、意識を操作されていた時、沖田先輩が誰も傷つけず、傷つかないように。


「安心院君、私の顔に何か付いてる?」


「・・・え?あ、いや別に」


「美津希先輩の衣装を見てたのでは?香織先輩が好きそうなアニメっぽいドレスですし」


確かに、青いドレスに魔法杖、普段ポニーテールの沖田先輩が試合用だからか、

ウェーブのかかった髪型をしている。和服の方が似合いそうな黒髪の沖田先輩が

魔女の姿をしていると魅了されそうだ。


「お~い。恋に落ちるなら試合が終わった後にしてよね」


この人は・・・フッた男によくもそんな言葉を。


「ちょ、シャロちゃん!何言ってるの。安心院君が私みたいな人

 好きになるわけないでしょ」


この台詞リアルで聞けるとは。その可愛さと気遣いができる性格とか絶対モテるだろ。


「そうかしら。香織君は美津希みたいなお淑やかな人がタイプかも」


「シャロちゃん!」


うん。嫌いじゃない。


「優しいお姉様みたいです!」


「ふ、文ちゃんまで」


「やかましい次女に困らされる長女みたいっすね」


「香織く~ん。ちょ~っとあっちで話そうか」


試合前だってのにお説教とか勘弁してくれよ。

そんな起こるような事言ってないじゃん。


「なら私は3女ですね!」


村田さんって結構ノリいいんだな。部屋の隅に連行されどんな説教が

来るかと恐れていたが、目的は別にあった。


「美津希が操られてるの?」


やはり、勘が良い人だ。村田さんや沖田先輩に気づかれないよう

上手く場を離れてくれた。


「少し気になる程度です。例年と比べて沖田先輩が前向きなので」


「そうね。私も少し気になった。何か対策した方がいい?」


「事前に先輩と夏目の装置で調べた時に問題なかったので大丈夫かと。

 何より、操作するらないつもと違うようにするのはおかしいと思います」


「そっか。試合が開始してからの方が怪しまれないもんね」


「はい、それより・・・」


「それより?」


「いや、自分が試合で役に立つかって話なので」


「私と修行したんだから、胸を張って!」


バンと背中を叩かれる。本当は、少し気になった。さっきダニーに愚痴を溢していたが、

先輩は基本人の悪口を言わない。悪口を言える程の仲・・・やっぱ先輩とダニーは。


「間もなく試合開始です。選手は指定の位置に着いてください。」


アナウンスが入り、全員に緊張感が走る。


「この数字が移動用の魔法陣なんですよね。私は知力だから1番」


「うん。私は魔力だから3番ね」


「僕が2番っと」


3クラス別に振り分けられた番号に着く。


「じゃあみんな、後でね」


A+の先輩は特別控え室に向かう。


「うん」


「はい!」


2人は返事をしたけど僕は静かに敬礼をする。

アナウンスが再び入りカウントダウンが始まる。

各々が開始と同時に動けるよう意識をカウントに集中させる。


そのカウントダウンが試合開始ではなく、事件開始のカウントとは知らず。



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