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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第5章:蒸し暑い日に迫る冷血な手
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『第9節:やっと干支覚えられた』


ふむふむ。頭 卵値 武力D- 知力A 魔力A+

戸籍記録は役員の意識を操作し全て抹消。

頭 卵値という名は本人の供述であり、本名であるかは不明。

一度操作されると前後の記憶も抹消するため、本人と関わった人間は

他人と認識させるか自殺を強要され、家族や交友関係の特定は不可能。


警察の取り調べ資料はこれだけか。意識を操作される危険性を考えれば、

取り調べに時間と人員を割くのは悪手。魔力封印装置を付ける直前に意識を

操作される危険性もあるし、何より魔力A+。どれだけ対策してもしたりない。

脱獄時の資料を見たけど・・・。どうやら、頭に脱獄をそそのかした輩がいる。


脱獄直前の警官の動きがやや不自然すぎる。魔力封印装置を付けられた状態で、

頭が意識を操作できる筈がない。ならば頭に似た魔力を持つ人間の仕業・・・

いや、万が一に頭も仕業であっても残留魔力がある。魔力でないなら・・・知力。


上手く香織先輩と鉢合わせる事ができらば、もう1つの魂の能力を観察できると期待したいけど。

できれば、香織先輩自身に解決して欲しいな。

前に柊と決闘した時に使った忍具が発した魔力の塊。

恐らく魔力系の人間のみならず、安心院の人間にしか効果がない。

あの忍具を使った後、香織先輩の魔力に灯火が宿った。

交流会で真価が発揮されると思うけど、魔力A+の殺人鬼の方が良いかも。


さてさて、わざわざ魔力をA-と偽造してまで交流会に参加した訳だし。

たっぷり観察させてもらいますよ。香織先輩。


「夏目さん、入っていい?」


ノックの後に美津希先輩の声がする。選手用の室内電話を使わないで直接会いに

くるなんて、何か重要な用事かな。とにかく急いで資料をしまわないと。


「着替えてるので少し待ってください」


「ご、ごめんね!ゆっくりでいいから」


この人は魔力系の人間にしては珍しいタイプだ。

魔力系の人間は大きく分けて2種類に分けられる。

自らの能力を誇示するタイプと、自らの能力を秘匿したがるタイプ。

安心院や瀬良は前者。誇示するタイプは実力に関係無く基本的に自信家。

香織先輩は才能を失ったせいで自信も失ってるけど。楓氏は安心院の四季忍術に

誇りを持っている。逆に、秘匿にするタイプは、自らの能力は使うべき時に使うという

思想を持つ者が多い。そのためあまり主張をしたがらない性格だ。


・・・父と母がそうであったように。


ただ、美津希先輩は、自らの能力を披露しているが、どこか自信が欠けている。

魔力がAにさえなれば、動物と視覚共有も可能だし。A+ともなれば意思疎通もできる。

そうすれば、安心院に並ぶ魔力使いになれるのに。足りないのは自信だけ。


「お待たせしました。何のご用ですか?」


「シャロちゃんが呼んでたの。意識が操作されてるか確認できる

 魔具を創れないかって」


「できますよ。でも、魔力A+の魔法を見破れるかは分かりませんが」


勿論余裕だけど、周りから高性能の魔具を創れると目を付けられると面倒だ。

シャーロットも脈拍や鼓動で操作されてるか調べる機械を創るだろうし。

魔力の能力を知力で見破れるかお手並み拝見といきますか。


「・・・」


目の前の美津希先輩が浮かない顔をしている。殺人鬼が近くにいるかも

しれないと考えれば当然だけど・・・。別の理由な気がする。


「どうかしました?」


「私・・・新しい魔法を覚えようと思うの」


「どうしてですか。動物操作はめったにないレアな魔法ですよ。

 それに、持って生まれた魔法以外を習得するのは大変ですし」


「私も自分の魔法が好きよ。でも、私がやってるのは、動物の意識を

 勝手に操作して私欲のために・・・頭って人と同じ」


同じ魔力系の人間に相談したくて直接会いに来たのか。

本当に珍しい人だ。自分の魔法と殺人鬼の魔法を比較するなんて。・・・でも。


「そうかもしれませんね」


「・・・だから、2度とこの魔法を使わなくて済むように新しい魔法を」


「良いじゃないですか。私欲でも」


「え?」


「むしろ、私欲以外で魔法を使う人なんているんですかね」


「あ、安心院とか薬師丸先生は人のために」


「あの人達は、人のために魔力を使って最終的に自分の利を得ているんですよ」


特に薬師丸先生は完全お酒目当てだし。


「も、物は言いようだよ」


「なんだ、分かってるじゃないですか」


「何を?」


「物は言いよう。美津希先輩も自分の魔法を人のために使って利を得れば、

 頭なんかと同じにはなりません」


「・・・そう、かな」


まだ浮かない顔をしている。こんな心優しい人が、自らの魔法を捨てていい訳がない。


「なら、証明すればいいじゃないですか。美津希先輩の魔法は、人のためになるって」


「う、でもどうやって」


「美津希先輩はどうして英証に?」


「私・・・家族で初めて魔法が使えて、動物が私の思い通りにできて

 最初は嬉しかったけど、周りからは気味悪がられたの」


よくあるパターンだ。魔力の存在が明るみになっている世の中だけど、今でも

魔力系の人を恐れて距離を取りたがる人は少なくない。たとえそれが家族であっても。


「だから、同じ立場の人がいる英証を勝手に居場所だと思い込んで。

 特に証明したい事なんて無いの」


「入試はどうしたんですか?証明したい事柄を述べてる筈です」


瀬良みたく、家系の魔法の優秀さを証明するためだけで入学できるガバガバ入試だけど。


「えっと、動物を操作するだけでなく、意思疎通ができるようになって、

 危険生物と共存できる事を証明したいって書いたかな」


「良いじゃないですか!動物操作魔法は魔力Aなら視覚共有も可能です。

 人が入れない所を動物で調査できるとなれば世間に必要とされます。

 卒業までの残り数ヶ月でAにしましょう」


「わ、私が魔力Aに!?A-にするだけでも大変だったのに」


「今年の総合戦はなんとしても美津希先輩を出場させます。

 いいですか、試合では如何に自信が出せるかにかかってます」


「私がそ、総合戦に。やれるかな」


「美津希先輩」


「うん。そうだよね。やれるかじゃなくて、やるんだよね!」


「その調子です」


ごめんなさい。ちょっとやる気にさせる魔法かけちゃいました。

きっと、今まで美津希先輩の周りにいた人は、本人の性格からあまり前線に立たないよう

気遣っていたのだろう。でも、それはただの過保護。人は窮地に立った時こそ、

本人すら自覚しない能力を発揮する。その結果、ボクはここにいるのだから。

美津希先輩は自信が無くとも向上心はある。じゃないと、交流会にだって

参加しない。厳しい環境に身を置きさえすれば、この人は大丈夫。

・・・ただ、1つ気になる。


「どうしてボクに相談してくれたんですか?」


「女の子同士だと話やすくて。赫夜さんだと、楓君や香織君に話されそうだし」


「・・・ボクも男ですよ?」


「またまた~、自分のことボクって呼ぶからってそんな冗談言わなくても」


「あったあった。これ学生証です」


学生証の性別欄を目にするなり美津希先輩は血相を変える。

急いで耳を塞がねばと思い、手で塞ぐと先輩は声を上げる。


「・・・え、ええええええ!!!!」


誤解されるのは慣れてるけど、そんな女の子に見えるかな。

この後、シャーロットの所に行くと美津希先輩の大声の理由を聞かれ、

何故か香織先輩が少々不機嫌な顔をしていたが、その理由を知る術は無かった。


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