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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第5章:蒸し暑い日に迫る冷血な手
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『第6節:週5日の労働の疲れが、2日の休みで取れる訳がない』


バスは山奥へと進み、その先にある目的地に到着する。

旧国立帝王学園校舎。ここが交流会の舞台。

英証並の敷地だが、旧校舎のため大部分の施設は取り除かれ、

その分3校の生徒が寝泊まりしたり、調整するための設備が揃っている。


開催式は明日。前日はクラス別、総合戦出場者のみの顔合わせ。

会場に入れるのは3校の生徒及び教員。交流会はあくまで3校の親交と、

競技による生徒の実力向上が目的。故に企業など外部の人間は観戦などできない。


本戦を行う会場から少し離れた所に寝室棟がある。

バスを降りて、荷物を受け取ると先輩から指示が入る。


「では、各自部屋に荷物を置いたらしばらく自由時間です。

 18時に宴会場に集合してください」


先輩の指示と共に各自動き出す。ある者は真っ先に部屋に、ある者は

早速他校の人間に挨拶に、ある者は絡まれたり・・・。


「止まりなさい!安心院香織!」


もーさー。なーんで学校出てまでデカい声聞かなあかんの。

振り返ると視線の先には見たことある女性集団。

お嬢様みたいなドレス式の制服を纏った集団。

マリオのピーチ姫が持ってそうな傘を持った集団。


「兄上、あの方々は窈窕(ようちょう)の人でしょうか」


「そう。学園名の如く、上品で奥ゆかしい女になるため

 厳しい規律の下学園生活を送っている。言わばお嬢様学園だ」


「香織様を呼ぶとは、宣戦布告ですか」


「良い度胸だ!我らが香織様にコテンパンにされる覚悟はあるか!」


「なんだ奏、安心院の傘下にでも入ったのか?

 よーし行ってこい。僕の代わりにコテンパンにしてやれ」


「香織様を見下すとは頭が高いぞ!」


「違うぞ赫夜。僕の頭が低いんだ、ほら、物理的に。

だから挑発するな。物理的にならお前の方が頭が高いわ」


「兄上に用があるなら菓子折の100個や1000個用意してからにしてください!」


「お、楓~。良いこと言うじゃん。もっと言ったれ」


TEAM 4Kによる作戦名「悪ノリ」で攻撃してると、お淑やかな

優しい声が聞こえてくる。


「再び会えるのを心からお待ちしていました」


そもそも窈窕の人達が何故僕を呼び止めたのか。

昨年は特に関わった覚えが無い。

先頭の人が道を空け、奥からゆっくりと前に出てくる人物。

傘を前に傾けているから顔がまだ見れない。

しかし、歩き方からただ者では・・・まあ、今日この場に

いる人間に弱者はいないんだけどさ。とにかく強者だ。


「お久しぶりです。香織くん」


傘をどけると、その顔を見た途端、僕が最初に脳裏を過ぎった言葉は・・・。


何故。


凜々しい顔立ち、教養のあるたたずまい。緑がかった髪色、まるで、

森林の妖精が具現化したかのようなオーラを放っている。


窈窕学園 武力クラスA+ 升園(ますぞの)百合(ゆり)

彼女の姿を見たのは昨年の交流会が初。

しかし、特に会話をしたわけでもなく、武力クラス団体戦で

僅かな間、王先輩の到着まで対峙しただけ。


なのに何故、升園さんは僕を呼び止めたんだ?


「久しぶりっす」


「貴様、百合様に向かってなんたる態度を」


「いいのよ。香織くんは英証雌雄学園の生徒だもの。

 私達のように立ち振る舞う必要はないわ。奏くんもお久しぶりね。

 立ち姿だけで分かる。昨年より遙かに、貴方の剣は研ぎ澄まされてる」


「ありがとうございます。けど、今年は団体戦には出れません」


「あら、どうしてかしら」


「若気の至りでちょっと・・・けど、香織は今年も出場します」


「そう。残念だけど、香織くんが出るなら今年も1分参加にします」


「わ~、今年は帝王もA+がいるし、うちは劣勢か」


「香織くんがいるじゃない。貴方は、みんなが予想もしない何か。

を、起こしてくれると、私は期待してるの」


「あの、どうして香織様を評価してくださるのですか?」


赫夜がやっとしたかった質問をしてくれた。

升園さんは僕の過去を知らない。つまり、升園さんからすれば、

僕はただの武力B-の雑魚。昨年は、まあ、もう1つの魂のおかげで

帝王の武力Aを倒した。けれど、それだけで升園さんの目に止まるだろうか。


「綺麗な赫髪。噂に聞く安心院分家の方かしら。

 なら、私なんかより、貴方の方が香織くんの能力を理解してるのではなくて?」


「は・・・はい。ですが!」


「赫夜さん。言葉の真意は、試合を見て確かめましょう」


「あら。並々ならぬ気迫に香織くんと似た気配。弟さん?」


「安心院楓 魔力クラスです。貴方が兄上の何をご存じかは知りません。

ですが、兄上は、強いです」


「お兄さんにそっくりね」


どこがだ。


「ええ、ですから、今年も楽しみにしています。

 ところで、盗み聞きは感心しませんね」


気づいてはいたが触れるタイミングが無かった。

木陰で僕達の話を盗み聞きしていた者が1人いる。

升園さんに言われ現れたのは、昨年も見た事がある顔だった。


「・・・よう、百合」


「私の名を軽々しく呼ばないでください」


「何でそいつと会話してんだよ」


「そいつ?」


僕を指さし、そいつ呼ばわりする男に赫夜が敵意を向ける。


「はい赫夜、押さえて」


「どなたですか、香織様」


「えーっと、帝王の武力Aで、名前は・・・?」


「ぶっ殺すぞテメェ!」


奴が拳を振るおうとした瞬間、全員の視界に閃光が走る。

奴の腕を片腕で止める者が現れた。武力Aの動きを、武力Cでは

動きを止めるのはほぼ不可能。

しかし、雷を纏った制服から伝わる電流が、奴の動きを完璧に封じる。


「その闘気は、明日まで押さえてもらえるかしら」


雷を纏った先輩。軍服ではなく制服を改造し、光速での動きを可能としている。

制服の改造事態に驚きはない。しかし、意識外から唐突に現れるのは驚きを隠せない。


「チッ。武器便りの貧弱女が何の用だ」


「英証代表者として、選手に危害が加わるの事前に防ぐのは当然でしょ」


「はん!そんな雑魚を選手に選ぶなんざ、英証の底が知れたな」


「はいはい。一成(かずなり)君は強いんだから、強者の余裕を持って」


「今年は去年のようにはいかないからな!」


そう言って、一成とやらはふてぶてしく寝室寮の方へと歩み始める。


「思い出した、何とか一成」


手島(てじま)一成(かずなり)な。全然思い出せてないじゃん。あと、去年香織が倒した相手だ」


「香織様が!流石です!」


「まあ、"儂が"ね」


「・・・流石です兄上」


楓と赫夜は瞬時に察してくれた。名前は覚えてないけど、奴は知っている。

昨年の武力団体戦で僕に・・・もう1つの魂に瞬殺されたんだった。


「さ、香織君達も荷物置いてきたら」


「はーい。升園さん、またあとで」


「百合です」


「え?」


「私のことは百合とお呼びください」


「へえへえ。百合さん、またあとで」


「はい。またあとで」


部屋へと向かう途中、楓と赫夜に睨まれ、何故か先輩はジト目で

奏はめっさ笑ってる。

去年とはまた一味違う交流会。はたして、今年はどの学園が勝つのか。


それにしても。わざわざ僕を呼び止め挨拶した理由は何だ?

名前で呼べとか・・・あれれ。さっきの、脈ありってやつか!!!


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