『第4節:意外と子ども向け作品は馬鹿にできない。』
交流会まで残り5日。レポート作成で徹夜したが、内容が内容だけに
逆に目が覚めているので、深夜、楓と重要な話し合いをしようと思う。
「魔力植物の件。父上に報告しました」
「おう。ありがとな」
柊が目を覚まさないため、件の魔力植物の出所を聞き出す術を失った。
一先ず打てる手として、父に流通ルートを探ってもらう事にした。
学内にも目を張り巡らせてはいるが、依然として出所は不明。
しかし、今はそれ以上に重要な話がある。
「あの忍具が放った・・・光、のような何か。
兄上はどう感じましたか?」
柊と戦った際に使用した謎の忍具。孤影と接触した時放った魔力の塊。
あれを感じ取れるのは、魔力クラスの人間だけかと思った。
けれど、楓が軽く調べた限り、試合を観戦した者で
僕と楓以外に忍具の魔力を感知できた者はいなかったらしい。
察するに、あれは、安心院の人間のみが感知できる代物だろう。
「太陽みたいで・・・その、また始まるって、感じた」
「ぼくもです!終わる筈が、再び始まる。
一体・・・何だったのでしょうか」
「“四季は円を成している”って、四季忍術についてだよな。
繰り返し行うのか、全てを同時に使用するのか」
「『終局』が絡んでいると思います。
『四季の舞』は四季を型として発動しますし」
「でも、安心院の『終局』は既に分かってるし、今更忍具で
触れる必要はないだろ」
「“新たな道標を示す”終局ではない新たな能力を開花させる
ための忍具なのでは」
「新たな・・・。ん~わっかんね」
「時期も絡んでいるのでしょうか。四季忍術は、季節によって発せられる
自然魔力を使用しますし」
「まあ、自然魔力を使えば術の威力は上がるけど、1番は安心院の
弱点である直接魔力で攻撃するガス欠阻止だからな」
安心院において代々正当な後継者は魔力A以上を有している。
僕は例外だが、楓は既にAに達している。
季節の自然魔力に頼らずとも十分火力を有しているが、交流会は夏真っ只中。
楓は夏が好きだから、総合戦に出場できればかなりの戦績を期待できる。
「あの・・・兄上」
「どした?」
「もう1つの魂は、何か反応はありましたか?」
「ねーんだよ。こいつ僕が話しかけても無視ばっかでさ」
「そうですか・・・何者なのでしょうか」
幼少期。僕の身体に宿ったもう1つの魂。安心院の忍術を使えて、魔力はA+。
そして、紫色の髪・・・。考えるに安心院一族分家の人間の筈だが。
家系図を見返しても、紫色の髪をした者の情報が無い。
「こいつの正体を考えるより今は交流会だろ。
楓は準備しとけよ。総合戦に出られる可能性大だし」
「兄上も準備は怠らないでください。シャロ先輩と特訓した成果を発揮するチャンスです」
「あ~それな~。まあ、使いようによっちゃ、ダニーの攻撃を回避できるし。
出番がある可能性は去年よりは高いか」
「ただ、今年の英証は層が厚いので、スタメンに入れるかは
なんとも言えませんね」
「楓に奏。赫夜も強くなってるし、高山はサポート役には必須。
沖田先輩の動物操作も強力だし」
「あと、夏目さん。あの人も潜在能力はかなりのモノだと思います」
夏目・・・夏目世界。魔力クラスA-。前に親睦会で鬼塚さんと一緒にいるのを見かけたな。
桃色の可愛らしいゆるふわな髪型が印象的で、いかにも魔法使いだと分かるローブを
纏った女の子。何故、鬼塚さんと親睦会に参加しなかったのかは分からないが、
1年でA-とは、相当の実力者。
「楓がそこまで評価するのも珍しいな。いつかAになりそう」
「クラス団体戦は兄上達を倣って、沖田先輩と夏目さんの二人体制。
50点未満の特典付きで挑むそうです」
「ほほう。美女コンビか。試合見に行こうかな」
「美女?」
「沖田先輩美人だし、夏目さんも可愛いじゃん」
こ、れ、は。まーた楓の地雷踏んだか?
やたらと僕が女の子の容姿誉めると不機嫌になる癖。
どうにかならないかな~。
「夏目さんは男性ですよ」
「・・・・・・・えええええええ!!!!!??????」
おおおおおおお男!!!
「だ、だって、あんな可愛い見た目で、軽く声聞いたら
優しい声女の子みたいな声だったし。うっっそだろ」
「見た目は可愛らしいですが、男性ですよ」
「え、初見で分かった?それとも会話の中で?」
「ぼくも見た目で女性と間違われるので、分かるんです」
なるほど。まあ、楓も黒髪ボブだし、声も高い。
ぱっと見は女の子・・・いや、男だと分かる確証が
無ければ、ずっと勘違いするだろう。
その後は互いのクラス団体戦、個人戦の話を交わし、夜が明け始めるのを
確認し、食堂で楓特製の朝食を食べに食堂に向かう。
「は!!!!!」
「ど、どうしました。兄上。」
「・・・てない」
「兄上?」
「奏達が用意してくれたスイーツ食べてない」
「ありますよ。兄上がレポートに没頭していたので、
出すタイミングを逃してしまいましたが」
「よし食べよう。部屋の冷蔵庫か?あー頭が糖分を欲してる。
ヒャッホー!ご褒美タイムだ!」
「ダメです。きちんと朝ご飯を食べてからです。
さあ。行きますよ」
「グエ・・・い、やだ。あさは、すい・・・つ」
頭をフル稼働しっぱなしだと、思考力が鈍るだけでなく
力が全く出せず、抵抗できないまま楓に食堂へと連行される。
確かに腹が鳴るくらい空いてるし、ガッツリ炭水化物を
胃にぶち込んで、別腹に色とりどり食べる芸術の
スイーツを心置きなく味わおうではないか。




