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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第5章:蒸し暑い日に迫る冷血な手
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『第1節:確定演出はやはりたまらんなぁ~』


経験が無いから分からないが、ベットで恋仲ではない異性と寝ていたら、

人は先ず一線を越えてしまったと思うだろう。

大声で突っ込んでも目覚める気配の無い先生。


時刻は12時7分。試合が11時頃に終わったから、

1時間は寝てたんだ。


僕も先生も服を着ている。まあ、何より、酒を愛し酒が飲める男しか興味を示さないと

専ら噂の薬師丸先生が、飲める飲めない以前に未成年の生徒に手を出す可能性は皆無。

初めて治療を受けたから知らないだけで、こんな風にベットに潜り込むのは

珍しくないのかな。


「スゥ・・・スゥ」


静かな寝息、穏やかな寝顔。入学式で1度顔を見たきりだっけ。

基本的に保健室に籠もり、定時になれば愛する酒を狂ったように飲み出す。

酔っていても治療の精度に影響ないため、校長は勤務時間外の行動に異を唱えない。


「ん・・・しまった、寝ていたか」


サラサラな黒髪をかき分けながら起き上がる。

仕草もオーラも大人びていて、大人に魅了されやすい子どもには少々刺激的。


「おはようございます」


「おはよう、安心院香織。治療は済んでる。特に問題が無ければ帰って平気だ」


ベッドに寝ていた事は完全にスルーなの?


「先生、僕の眼なんですが、おかしくなかったですか?」


「派手に潰されてたな。それに変わった魔力攻撃が施されてた様だが、

柊直木は武力クラスだろ。治療が完了してもなかなか起きなかったのもそれが原因だ」


試合後急に眠くなったのはそれか。

腐乱花には睡眠の効果もあるのかな。


「魔力植物を使ってきました。うちですらなかなか手に入れられない

レア物なんですけどね」


「ほお、魔力植物か。酒に合うやつはないのかな」


この人はどこまでも酒の事しか頭にないのか。


「柊がどこで手に入れたか心当たりありませんか?」


「無い。持ってたら売って良いお酒買うし」


先生からではない。本人叩けば話すかな。


「先に来た筈ですけど、柊はもう寮に帰りましたか?」


「ああ。幻術をかけられただけだからね、解除した途端目を覚ましたから直ぐに帰した」


「すんなり帰ったんですか」


「どういう意味だい?」


「あいつの事だし、負けた腹いせに僕を殺しに来たかと思って」


「そうだね、ぶっ殺してやると叫びながら出ていったね」


サラッと恐ろしい事言うな。


「・・・なして僕は生きているの」


「さあね、治療以外の事で学内に干渉する気はないさ。

 20分ほどして、重そうに君を抱えたシャーロット=レーンが来た」


「すれ違わなかったのか。うわ~今も探し回ってるのかな」


「勝ったんだろ。何を恐れているんだい」


「運が9割を占めた勝利ですからね。次は殺されてる」


「さすがに死者の蘇生はできないから治療依頼は生きてるうちにしてくれよ。

ダメ元で死体を運ばないように」


「なんか死体運ばれても動じなさそうですね」


「お前が酒の味が分かるいい男なら、殺した相手に復讐ぐらいはするかもね」


「そうなるまで後3年か」


「ただ成人すれば良いってもんじゃない。

 酒を理解し、女の愚痴を聞ける器量を持つ男が良いんだ」


「後半個人的な願望詰めすぎですよ。校長に愚痴吐きまくってんすか」


「あの人だけだよ。私なんかに付き合ってくれるのは」


「辻先生とか桜木先生とは飲まないんですか?」


「酒弱いからね辻さんは。桜木葵は・・・苦手なんだ」


「辻先生は納得っすけど、桜木先生は意外ですな。

 女性同士話が弾みそうなのに」


「年下の同性は絡みにくいさ」


「校長は消去法なんですね」


「卒業生と飲んでも引かれてね」


「相当強烈な愚痴って事ですか」


「安心院香織はどうかな。他人の愚痴を聞くのは」


「美女の助けになるなら喜んで」


「なら、彼女は作るな。誘いづらくなる」


「それなら朝飯前です。告白された回数0なんで」


「確かにお前はモテそうにないし、安心だな」


「軽く傷つく事言いますね」


「傷ついてるのかい?」


「あ~、そう言われると、さして気にしてませんね。

 生まれて17年。慣れちゃいました」


「卒業した後なら、経験ぐらいはさせてやるさ。

 ギブ&テイクといこうじゃないか」


「マジッすか!早く3年経たないかな」


「若者がこんな年寄りを頼るなんて世も末だな」


「ガキって大人に魅了されやすいんですよ。

 嘆くなら、綺麗過ぎる自分を責めてください」


「ふふ。面白いんだな、お前は」


冷たい表情しか見せなかった先生が、初めて笑みを浮かべる。


「あ、忘れるとこでしたけど、何で一緒に寝てたんですか?」


「気にするな、昼寝が趣味なんだ」


いや、生徒と同じベッドに寝るのはアウトだろ。

その後も、軽く世間話をすると先生は新聞を読み出す。

こういう時、トップページの記事を読んでしまう。

建設会社社長行方不明か。物騒な世の中ですな。


保健室を出て寮に戻る途中、学園内が妙に騒がしかった。

どうやら来客がいるようだ。来客なんて別段珍くもないのに、

騒ぎ立てるという事は、大物が来たのかな。


客人は食堂にいるらしい。

あそこ本当に人気だな。他にも集まれる施設あるのに。

食堂に着くなり、大勢の人が入り口に固まっている。

中に入りたくとも人が多すぎる。でも、端にある料理は取れる。


お、ポテトだ。1番好きなのは、皮のパリッとした食感と

ホクホクさが美味しいウェッジカットポテトだけど。

なんとチョコソースがあるではないか。

ならば、細長いシューストリングポテトにして、チョコポテトといこう。

甘いとしょっぱいのミックスがたまらない。


「ふざけないで!!」


大きな声が響き渡る。なーんか、この学園にいると大きい声をよく聞く気がする。

声の主が誰かなんて直ぐに分かった。先輩か。

あんな激情的な先輩の声は初めて聞いたな。客人と何か揉め事でも起こしたか?


「お、おい。安心院だ、安心院香織がいるぞ!!」


1人の男子生徒が僕を見るなり声を上げる。

ほーら、また大きい声聞いた。


「帝王の武力代表が来てるんだよ、A+だぞ」


「・・・は。A+?帝王には去年いなかったろ。

 まさか新入生にA+がいるのか?」


「よく分からないけど、シャロ先輩と揉めてるんだ。

 お前も武力クラス代表だろ、行けよ」


「ええ~、交流会代表の先輩が既に話してんでしょ。

 それに武力の代表なら奏が・・・」


「兄上!良かった、無事完治されたんですね」


人をかき分け、楓が現れた。楓なら事情を知ってるだろう。


「なあ、楓。A+が来たって本当なの?」


「はい。それが、留学生らしく、アメリカから来日された方のようです」


「アメリカか。つまりは・・・」


「シャロ先輩のお知り合いのようです。それより・・・」


「それより?」


「いえ、それと見て欲しいものがあります」


「ちょ、見て欲しいもの?」


僕の手を引いて、楓は中央の方にグングン進んでいく。

人混みを抜けると、まあ、なんとも、おっかね~。


「か、香織君」


困惑な表情を浮かべる先輩の正面には、スーツ姿の男が

呑気にハンバーガーを食している。

モデルのような脚の長さ、サラサラなブロンドヘアー。

CIAだかFBIに所属しているって言われても信じられるオーラだ。

うわ~~、カッコよ~~。

そんなカッコいいアメリカ人の足下には、何故か柊が横たわっている。


・・・え、1日に2回負けたの?



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