『最終節:リアルの生徒会ってどんな感じなんだろ。』
光を見た・・・否、目が潰された今では見るではなく
感じると言う方が的確だろう。
先ほどまでピンポン球ぐらいの大きさだった忍具は、
孤影と接触した瞬間、一気に膨張した。それは計り知れないと
言える大きさだった。
恐らく、あの光は魔力の塊。ただの、塊。
他人に害をなすモノではない。
そして魔力を感知できる者でしか、あの光は認知できない。
優しい・・・違う。
暖かい・・・違う。
あの光から感じるのは、人が人に与える、
利益や利得、幸福や慶福なんかじゃない。
生物としての本能が反応している訳でもない。
ただ、何だ、どう表現すればいい。
始まる気がする。違う、終わらないんだ。
待て、何言ってんだ。
ああ、クソ。頭回らね。
光に圧倒していると、腹部に激痛が走る。
鍛えられた拳の感触。
【逃げ足】を無意識のうちに解除していたのを、
柊は見逃さず、一撃を加えてきた。
「・・・で、何だったんだ。何も起こらなかったぞ」
武力クラスの柊は先ほどの光を感知する事はできず、
ただ僕がボーッと立ってる様にしか見えなかった筈。
「とにかく、やっとまともに決まったな」
「ううう、痛い」
状態を立て直し、直ぐに【逃げ足】を発動せねば。
・・・と、思っていたら、奇跡が起こった。
何故か、さっきの光の魔力が落ちてくる。
理由は分からないが、確かに感じる。
このままだと柊に直撃しそうだ。
「くたば・・・」
柊の言葉が途切れると、ストンと地面に何かが落ちる。
視認できないため、魔力を頼りに手を近づけると、
手に馴染む感触だった。そして、何故さっきの魔力を
発してしたのかも分かった。
「孤影・・・か」
孤影の特性は安心院の魔力を込め、対象の脳に刃を通す事で、
災害の幻覚を見せる。
あの忍具は、安心院の人間が手がけた物。
当然魔力は安心院の魔力。となれば、孤影が魔力を吸収
してもおかしくない。
僕の魔力じゃせいぜい1秒しか込められない。
しかし、さっきの忍具に込められてた魔力量は、
最低でも魔力Aはあった。
空中から落ちてくるまで、魔力を発していたのも納得。
「あ、ああああああ、が、ぁぁぁああぁが」
「おーすまん。忘れてた」
年末の某バラエティ番組でタイキックを喰らった芸人みたいに
のたうち回っていると、柊は一切の声を出さなくなった。
とりあえず【逃げ足】を発動しといて構えていると、
結界が解かれ、アナウンスの声が響く。
「勝者、安心院香織――!!!!」
思い出した。勝利条件は10カウントを取るんだった。
勝った・・・のか。勝ったんだ。
「急げ、薬師丸先生の所に運ぶんだ」
複数の気配が近づくのが分かる。
まあ、怪我人を運ぶ医療係だろうな。
一際デカい存在感を放つ3人から逃げ出したいのだが。
「兄上!待ってください。兄上はぼくたちが運びます」
「香織、やったな」
「凄いよ香織君。本当に凄いよ」
「うん。とりあえず保健室に行きたい」
「分かった、私がおぶって行くね」
「いえ、ぼくが運びます」
「便乗する流れみたいだから、俺が運ぶ!」
いいよ、便乗なんかしなくて。
柊はスタコラ運ばれたが、3人がうだうだ揉めてる。
そもそも目が潰された以外で特に怪我してないし、
自分で歩けるわ。
「いいよ、自分で歩くから」
最終的にじゃんけんで先輩に運んでもらう事となった。
しかし先輩は、いつものスーツを着ていないから生身で僕を運ぶ。
武力C+、運動神経が良い程度の筋力を有するとはいえ、男1人を抱えるのに苦労している。
「運んで貰ってる身で、言える立場じゃないんですけど。
楓か奏に変わった方が・・・というか自分で歩きますよ」
「だい・・・じょうぶ。香織君目が見えないでしょ。
それに2人は行っちゃったし」
「本当だ。気配が消えてる」
先輩は歩き出す。ぎこちない足取りで。
けれどそのぎこちなさが、ゆりかごの様な安心感を
与えてくれる。
「赫夜さんの所に行ったの。香織君に大勝利を報告に」
「え、見てなかったんですか?」
「もし直木君が卑怯な手を使ったら、大人しく見てる自信が無いからって」
「なるほど。納得ですな。でも、柊は正々堂々と戦ってましたよ」
魔力植物の件は、卑怯ではないな。武器の使用は認められてたし、
勝つためなら当然の手段と言える。
「じゃあ、良かった。香織君の完全勝利だね」
「勝因は運ですけどね、まあ、それも実力って事で」
「私、何が起こってるか全然分からなかったよ。
途中で楓君も固まってたし」
恐らく、楓もあの忍具が発した光を感知した筈。
後で楓から見解を聞こう。
「そうだ、目治らなかったよね、薬師丸先生なら治せるかな」
「大丈夫です。魔力A以上の治癒なら治ります」
「良かった~、ずっと心配だったよ」
「ありがとうございます。まあ、もっと重傷を負った人も・・・ふぁ~あ」
「疲れたよね。良いよ、寝てて」
「あ、いや、運んでもらってますし」
思ったより疲れてんだな。まあ、赫夜の事以外に、
知らずに先輩の責任も負わされてたし、勝って気が抜けたか。
「随分強情ね。香織君なら、遠慮なくとか言って寝ると思ったのに」
「まあ、偶には遠慮するんですよ」
「お、これは理由がありそうだ」
「そんな深い理由はありませんよ」
「へ~、じゃあ言ってよ。浅い理由なら言えるでしょ」
「その、寝ると先輩の肩に顔乗せるのが恥ずかしいので」
「・・・」
「・・・」
「「・・・・・・」」
ええええええ!!!おうぃ;ほいcな;ん;おんv;あ。
な、なして無言!!!!ぅhr3p0;ふpb;わmv:おj094jp32。
「・・・よ」
「え?」
「良いよ、別に」
照れと、強気が混ざった声色。
僕が変な気を遣わず、大人しく寝ていれば
こんな気まずい事にはならなかったのに。
あ~しくった~。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
肩に頭を乗せた途端、全身の力が抜けていった。
花の様な香り、ゆりかごの様な揺れ。
細い腕に支えられている。もし、姉がいたら、こんな感じだったのかな。
徐々に眠りに着こうとしてるのが分かる。
「ありがとう」
何か聞こえた気がしたが、気にする間もないまま僕は眠りに着いた。
起きた時には、薬師丸先生の治療が完了していた。
理由は開いた瞳には光が差し込んだからだ。最初に映したのは、何故か僕の横で
同じベットで寝ている薬師丸先生がいた。
とりあえず、医務室にいること、周りに誰もいないのを確認して叫んだ。
「なんでやねん!!!!!!!!!!!!!!!」
次章に続く。




