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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第4章:学生あるあるのちょっとしたいざこざ
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『第10節:雑貨屋ってなんか良いよね』


「香織に何渡したんだ?」


「父上からの届き物です。決闘の役に立つだろうと」


兄上を見送った後、奏さんとシャロ先輩と一緒に決闘を観戦

しようとした。[運営会]が関係者という事で、兄上用に用意された

ベンチでの観戦を勧めてくれた。


シャロ先輩はずっと兄上と柊を見てる。もし兄上が負ければ

今夜、柊と付き合わなければならない。

みんなと仲が良いシャロ先輩だけど、恋人でもない人に

身体を許すのは嫌だろう。


元々ぼくたち安心院が起こした騒動なのに、巻き込んで

しまった事が心から申し訳なく思う。

シャロ先輩を柊から守るには、兄上に勝ってもらうしかない。

この事を話すか迷った。しかし、シャロ先輩が負けた際に責任を

感じて欲しくないと兄上には秘密にする事となった。


シャロ先輩はどこまでも人の事を考えれる人なのだろう。


「もう1つの魂に期待しても良いのかな」


正直、兄上自身では柊に勝てる可能性は低い。

だからあのもう1つの魂に賭けたくもなる。


「始まった」


性根が腐っているが、流石は武力A-。

常に兄上との距離を縮め、的確に急所を狙う突きと蹴り。

本来なら武力A-とB-では1分と経たず、勝負は付いてる。

【逃げ足を】持つ兄上は10分ほど回避し続けている。


「前より香織の避け方が上手くなった様な」


「私が香織君を徹底的に鍛えたもん!」


腰に手を当て、えっへんと言わんばかりの表情を浮かべるシャロ先輩。

ここ最近、魔力クラス団体戦の支援のため兄上と会話する機会が

減っていたため、兄上の状況を把握できていない。


「柊の手が止まりましたね」


そして兄上達は何か話し始め、終わると柊は深く深呼吸をして、

靴の爪先を数回突いた後、構えを整える。


「来る」


兄上の顔面をめがけた蹴りは紙一重で躱されるが、兄上は膝を着く。


「香織君の目から血が!?」


「まさか斬撃。奏さんの鎌鼬と同じですね」


「去年は見なかった技だ。鍛錬で習得したんだな」


脚を高速に振る事で斬撃を発生させてるみたいだけど、恐らく未完成。

あの距離なら奏さんの場合、顔面が真っ二つになってる。

柊の場合、相当近づかないとダメージを与えられないのか。


目を潰して視界を奪った後、一方的に攻めるつもりかもしれないが

兄上には治癒能力がある。それに兄上もぼくも目隠しで修行をこなした事がある。

基、【逃げ足】を持つ兄上は目より四肢の損傷の方が危険。

柊の次手三手を躱し続ける。このままなら目は再生する。


・・・けど。


「こんな大勢の前で治癒能力が見られるのはマズいですね」


「待って、香織君の様子が変」


「目を押さえてますね、治癒が発動していない?」


「あの能力でも治せない傷なんてあるのか?」


「そんな筈はない・・・・とは言い切れません。

 今回初めて例外が起こったのかもしれません」


資料には、あらゆる傷を修復するとあった。

これまでも資料通り兄上の身体を完治させた。

・・・あれは傷ではない?


「奏さん、柊が斬撃を放つまでいつもと異なる点はありましたか?」


「そうだな・・・靴」


「靴、ですか?」


「構えを整える前に直木は靴を数回突いただろ。

 今まであんな所作はしてなかったんだ」


「わかった!靴に薬品を仕込んでたんだよ。

 斬撃に乗せれば眼球内に叩き込む事ができるし。

 あ、でも薬品は香織君に効くの?」


「効きません。父の修行で毒物への耐性を付けようとした際、

 治癒能力が全て打ち消しました」


「傷以外に毒も打ち消すなんて凄いね」


「となると香織はどうして」







(このままじゃ勝てん、さっさと儂に変われ。)


ああ、クソ。目は痛いし、逆転の手を考えないといけないし、

謎の魂は話しかけてくるし、ドラえも~~~ん。


とりあえず目の痛みに耐えながら、ひたすら柊の攻撃を躱し続ける。

今の僕が勝つには、忍具で気を反らしたら【不意打ち】で四季剣術喰らわせる。

前に柳原とかいう謎の軍人には、

奴が武力B+だから上手くいったけど、柊はエリートのA-。


そもそも安心院の忍具を警戒してるし今回は難しいか。

ましてや柊が想像してる様な、大人数や強敵をぶっ飛ばせる

代物は無い。足止め、陽動、投擲、近接戦闘用。


基本的に魔力、武力で戦闘する事を前提に訓練する。

忍具を使うのは最低限の手段。それに頼りすぎると、

弾切れになればたちまち無力となるから。


・・・そうだ。父が送ってくれたあの球。

“四季は円を成している”“太陽の輝きを秘め、新たな道を示す”か。

ぜ、ん、ぜ、ん、わ、か、ら、ん。

こうなったらヤケクソで使っちまうか。


懐から謎の忍具を取り出すと、見える筈の無い目に映る、

光輝、耿耿、絢爛、燦爛、燐光の存在。

先ほどはただの橙色の球体にしか見えなかった。

なのに目を潰され、何も映さず闇に陥った今、確かに太陽の様に輝く

存在が、僕の手の上にある。


しかし、どう使えば良いのか分からない。

対象に向かって投擲すのか、地面に叩きつけるのか。

まあ、それ以前に柊から距離取らないとどうしようもないわ。


「忍具を使おうとしてる様だが、させると思うなよ」


「目が潰れた相手に攻撃を当てられない癖に、

 なかなかデカい口を叩くじゃないか」


「・・・ッ!!」


攻撃の手を速めるが、【逃げ足】は依然継続中のため当たらない。

だが、僕はこのスキルを過信してしまった。


スキルの詳細全てを把握しきるのは困難。

人間は自身の肉体について知らない事の方が多い。

スキルも同様に、概要を知り得ても全てを掌握できる者は少ない。


柊の上段蹴りを躱した後、奴の右足が僕の右手にあった忍具を高く

蹴り上げた。【逃げ足】の対象は僕のみ、正確には僕の肉体のみ。

衣服や、忍具、装飾品までは含まれない。


忍具を奪い取ろうと柊は高く飛んだ。

1対1で相手に背を向けるなど、どうぞ殺してください

と言わんばかりの行為。


奴がそうまでして、あの忍具を奪おうとするのは、

武力クラスでも感じずにはいられない程の存在感を放っているから。

懐から出した瞬間、奴は僕に攻撃しながらもずっと忍具を警戒していた。


まあ、1番は僕の武力がB-であり魔力はD-の雑魚だからかな。

不意打ちしたところで致命傷は与えられない。

【不意打ち】を使用したいが、奴は忍具を追っているが、ガッツリ

僕への警戒も怠ってない。


こういう時は・・・破壊するに限る!!

父も情報が漏れるなら、その情報源を絶てと教わった。

ただし、己が納得できるなら・・・と。


巻物を開き、孤影を取り出す。魔力を込められるのは僅か1秒。

狙うは忍具。そもそも僕の魔力で破壊できるかな、

斬るという概念の無いこの刀で。


・・・善は急げだ!!


「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


力一杯握り絞め、精一杯の魔力を込めた孤影を放つ。

柊を上回る速度で忍具にたどり着いた孤影は、触れた瞬間・・・

僕の、安心院香織という忍の命運を大きく分ける事となる。





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