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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第1章:始まりの春
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『第4節:安心院と一条』

彼女から(ぶつ)を奪うにはやつの協力が不可欠。

学園全体を見渡すために壁を伝って校舎の屋上を目指した方が良さそうだし、

壁を伝って上るとしよう。


運が良いことに、屋上には先ほど勧誘から逃れるため逃走劇を繰り広げていた

僕の探し人、一条 奏がいるではないか。


「お、これは運命だ」


「ああ、運命だよ。今すぐ復讐ができるのだから」


先ほどのことに腹を立てているのか刀を構えさっきはなかった殺気(笑)を向けてくる。

オーケーオーケー、このままじゃ3秒後には3枚にも5枚にもおろされちまう。

早めに要件を伝えよう。


「奏、頼みたいことがある」


「ど、どうした?何でも言え」


「頼む立場であれだけど相変わらずお人好しだな」


「香織が頼み事なんてよほどのことなんだろ」


真剣な眼差しを向けられ頼み事に手を貸してくれるのはありがたいと思うけど、

内容が内容だけに気が引ける。

一通り勝負についてと参加目的を話す。


「わかった。香織がやる気なんだし、いっちょやるか!」


「何で僕以上にやる気なんだ」


(かえで)だったらもっとやる気出してるだろ」


「あー、そうか?」


「とにかく行こう。作戦はあるのか?相手はあのレーン財閥ご令嬢だよ」


「一応ね。【不意打ち】を使えばなんとか」


「・・・そうか、俺は何をしたらいい」


そんな暗い顔するな、このスキルを使うことが楓のためなんだ。

と言いたいがその言葉を飲み、作戦を伝え実行に移す。


シャーロット=レーンを探すのは難しくなかった。

デカい音の方に行けば大勢の人たちが争ってるのが見える。

驚くことに彼女はまだ漫画を手にし、傷も汚れも無い状態を保っている。

そして向かってくる生徒達を返り討ちにしてる。


「運動場以外であんな戦闘繰り広げていいのかよ」


「校則では一般エリアで器物破損および生徒に危害を加えたら、

 全責任を本人が負うことになってる」


「レーン財閥ご令嬢なら壊した物は自分で修復できるし、

 怪我を負わしても治療できる訳だ」


「香織、本当に大丈夫?かなりの死体が転がってるよ」


「いや、死んでないだろ。た・・ぶん」


電気を帯びたスーツでの蹴りや拳で攻撃しているが、

まともに受ければ無事では済まないだろうレベルの攻撃を何人もの生徒が食らっている。


「まあ、戦うのは俺の役目だから大丈夫か」


「悪いな、一番危険な役頼んで」


「もともと戦闘に特化した一条家と、暗躍に特化した安心院家なら適材適所だよ」


バンっと肩を叩かれ体勢を崩す。

こいつ自分の武力Aで僕がB-なのよく忘れるのが困る。


でも、いつでも助けてくれることには心から感謝してる。


「そんじゃあ、作戦開始と行きますか」


僕の合図と同時に奏は彼女の元に向かい、僕は裏から回り木陰に身を隠す。


他の生徒は返り討ちに遭うやつらを見て怯えたのか

攻めるのを止め距離を取る。


「ほらほら~どうした~」


そんな中、堂々とシャーロット=レーンの元に向かう奏に注目が集まる。

うわ~ドヤ顔で歩いてるよ。僕ならいきってるとか言われそうだけど、

奏なら勇気ある挑戦者って思われるんだろな。本当に人生は不公平だよちきしょうめ。


「わ、お侍さんだ。次は君が挑戦者?」


「武力クラス1年。侍専攻。一条 奏です」


「一条ってあの警護会社の」


「ご存じですか、光栄ですね」


「だってうちとライバル関係だもん。最近セキュリティ部門に手を出そうとしても、

 君の会社の勢力が強くて上手く軌道に乗れないし」


「うちの社員は地獄の研修を生き抜いた人たちが務める実力主義なので。

 でも、かのレーン財閥が相手となると油断できませんね」


「うんうん、お互いが家を継いだときが勝負だね」


「今は家のことは関係なく手合わせ願いたいです」


「もちろん!どこからでもかかってこい」


レーン財閥対一条家の戦い。

乱戦から始まった勝負が奏の登場により一騎打ちとなった。

2人が戦う情報を嗅ぎつけ、勝負に参加していなかった者達も集まってくる。


先手を取ったのは奏。シャーロット=レーンは漫画を右手に抱え、

左手で応戦し戦いの火蓋は切って落とされた。


奏は懐から巻物を取り出し、開いて刃を曲線状に変形させる。

そしてシャーロット=レーンから距離を取り、鋭い剣圧から生まれる斬撃を放つ。


鎌鼬(かまいたち)!」


いくつもの斬撃に怯むことなくシャーロット=レーンは左手に電気を集中させなぎ払う。


「面白いね、巻物で形が変わるんだ。他にはどんなのがあるの?」


「おしゃべりとは余裕ですね」


彼女が興味を持つのもしょうがない。

奏が使う巻物は我が安心院家が開発した物で、その技術を公表するつもりはなく使えるのは安心院家でも本家の一部のみ。例外は奏のみなのだ。

奏は多彩なうえ、常人ならば1つの剣術を習得するのに何年もかかるが、

僅かな期間でいくつも習得できる天才。


故に、1本の刀では足りないので我が安心院家が力を貸したのだ。


「凄いけど私の電気にビビってたら勝てないよ!」


目的は彼女から漫画を奪うこと、そのためには近づくことが必須なため

距離を取るのはビビっていると言われてもしかたがない。


「その斬撃を防ぐにはこうする!」


足に電気を集中させ一瞬で奏の前まで間合いを詰める。

斬撃を放つには振り切らなければならないため、近づかれるのは避けなければならない。


「これで止め」


雷を纏った手刀を奏の首元めがけるが、当然奏も反撃に出る。

直ぐさま別の巻物を取り出す。


「甘いですよ」


彼女の速さを事前に把握していれば、遠距離から攻撃しても直ぐに近づかれるので意味が無い。

だからカウンター用の近接手段の攻撃を用意しておく。


ここまでは奏の思い道理だが上手くいきすぎている。


「さあ、それはどうかしら。」


右手の漫画を空中に放ち、そのまま巻物に手を伸ばす。本来なら近距離の攻撃を得意とする侍。

しかも一条家の長男がわざわざ遠距離の攻撃をするなんて誘っている。


「その巻物で変えた刀が本命ね」


巻物を奪おうとするがこれこそが奏の狙い。

奴は目をつぶり敬意を込めて言葉を放つ。


「ありがとうございます。刀だと思ってくれて」


巻物からピカッと閃光が走る。シャーロット=レーンはもちろん、

その場にいた者たちの視界が一瞬奪われる。

僕は事前に把握していたのでサングラスでガード。


「しま!」


初めて見せた隙に慢心することなく物を取りに行く。


「もらった!」


「・・・甘いのはどっちかな」


「グハッ」


奏が漫画に手を伸ばし高く飛び上がろうとする直前にみぞおちに一撃を加える。


「スーツに感知機能と自動攻撃をプログラムしてるから、

 この程度じゃ隙を突いたとは言えないよ」


邪魔する者がいないため落ちてくる漫画を優しく手に取る。

奏は確かに勝てなかったが作戦を全うした。次は僕の番だ。


「良い作戦だったと思うよ。でも勝てたと思って油断したのが敗因だね」


「・・・油断は、貴方もじゃないですか?」


「何言ってるの、ちゃんと漫画は私の手に・・・無い!?」


「ふー【不意打ち】成功っと」


「あ、やられた!」


「さすがだな」


もう勝負はついた。初めは彼女は他の生徒の乱入を警戒していたはず。

しかし、奏が閃光で生徒の目をくらませシャーロット=レーンをあと少しという所まで追い詰めた。

彼女はそれを跳ね返したことで意識は()()()()()()()()()

そこまでいけば【不意打ち】を発動する条件は整った。


「そんじゃ、失礼します。」


後は五体満足なら必ず逃げ切れる僕の【逃げ足】を使えば楽勝。


「あちゃー、そっか相手が目の前の人だけとは限らないもんね。

 奏君が組むなんて何者なの?」


「そうですね、親友とだけ言っておきます」


「ふふ、いい顔で言うじゃない。でもまだ時間あるしさっきの子とっ捕まえてやる」


「頑張ってください。俺の役目は終わりなので」


「今度は一対一の勝負しようね」


「ええ、是非とも」


彼女や他生徒は必死に僕を捕まえようとしたが、【逃げ足の】のおかげで時間いっぱいまで

逃げ切り無事勝利することができた。


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