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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第4章:学生あるあるのちょっとしたいざこざ
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『第6節:肌にもっと潤いが欲しい』



「私は安心院赫夜!安心院一族分家の者です。

 この学園には自分が香織様と楓のお役に立てると

 証明するために来ました!」


「・・・」


勢いよく立ち上がり、大声で自己紹介をし出す赫夜に皆が注目する。


「確かに私は説明会で暴れ、香織様、楓様、奏に迷惑を掛けました。

 しかし、安心院一族分家の役目は本家の人間に仕える事。

 あの時、柊直木の発言を見過ごす訳にはいきません」


最初は立ち上がる同時に机に視線を向け自己紹介をし、

次に先輩の方を向いて己の失態から弁解を述べる。


「そうね、赫夜さんの立場を考えるとあの時の行動は理解できる。

 けど、だからって暴力で解決して良いの?」


「・・・良く、ありません」


「今赫夜さんが言った事は理解はできる。でも納得はできない。

 大義を掲げれば、間違いを犯してもそのままにして良い訳ではないでしょ」


「はい。なので、必ず交流会で結果を残します」


「どうやって?」


「個人競技での優勝及び、総合戦勝利に貢献します」


「それは全部赫夜さん個人の為でしょ」


「・・・はい」


「私が言う間違いは、香織君を雑魚と罵られて怒った事を言ってるの」


「どういう・・・事ですか」


「香織君が弱いのは間違っていないでしょ」


先輩の話を聞くや否や、中央に座っている奏が先輩に反論する。


「待ってください。じゃあ、直木が香織を雑魚と罵ったのが正しいと言うんですか」


「正しい云々じゃなくて、直木君からすれば香織君が弱いのは間違っていないって事」


まあ、そりゃそうなんだけど。

何だろ、さっきから先輩の発言にどこか違和感を覚える。


「ちょっと良いっすか。結局先輩は何が言いたいんですか?」


「直木君が言ってた事が間違いだって香織君に証明して欲しい」


「・・・は?」


「香織君が直木君より強ければ、赫夜さんの行動にも少しは正当性が見出せるでしょ」


「はぁ・・・は、あ?」


えっと整理すると、そもそも事の発端は柊の発言。

赫夜はそれが許せず柊を殴った。

理由は僕を雑魚呼ばわりしたから。

けれど柊の発言に間違いは無い。


間違っているのは事実を受け入れず私情で暴れた赫夜の方、

だから僕が柊より強いと証明し、赫夜が間違っていないと証明する。


「・・・ふむ、意味わからん」


「シャロ先輩、それで柊の発言が間違いであると証明できますが、

 赫夜さんの行いが正しいとは言えないのでは」


今度は奏の正面に座っていた楓が反論する。

良いぞもっと言ったれ。


「あくまで正当性を見出せるって話。

 完全に正しいとまで言うつもりはないわ」


ん~、理解できるようなそうでないような。

そりゃ、言ってしまえば僕が強ければ、

今回の事件は起こらなかった訳だけど、

だからって今更強さの証明とか意味あるかな。


楓は若干下を向いて先輩の発言をどう受け取るか考えている。

まあ、我が弟ならば責任は次期党首の自分にあるとか言って、

先輩の話には乗らないだろう。


「兄上、柊と決闘してください」


「だよな、先輩の言う事はおかし・・・は!?」


嘘だろ。目の前にいるの楓だよな?

僕以上に僕の事を気に懸けてくれる弟だよな?


そんな楓なら今の話は絶対に断る筈。

何がどうして先輩の話に乗ったんだ。


「良し、次期党首から許可も出たし。

 明日12時に武力クラス決闘場に来てね」


「待て待て待て。大事な事なのでおまけでもう1回言います。待て」


「あら、なら他に赫夜さんの過ちを正す方法でもあるの?」


「ぐ・・・」


そう言われると反論できないが、どうにも解せない。

楓がびっくりするくらい先輩の言う事を聞いて、

奏はうんうんと頷いているからおそらく賛成なのだろう。


では、赫夜は。


「香織様。一生のお願いであります。

 どうか、柊直木より強いと証明してください」


わざわざ僕の目の前にまで来て、土下座をして懇願する。

一生のお願い。我が安心院家において、分家は宗家の言う事には

大抵従う。だが、反論してはいけないという訳でもない。


遙か昔、分家の人間が本家に多大な利益をもたらした事から、

当時の党首は分家からの意見も尊重するよう現代まで言い伝えられている。

そして、宗家の者は仕えられる分家の責任を取らなければならないとも。


故に、いつもの赫夜ならば頭を下げる事があっても、

まさか膝を着き、頭を座らせ、ましてや、一生のお願いをするとは。

それだけ強い気持ちであると痛感させられる。

更に、赫夜が問題を起こしたと時点で、本家の僕も責任を取らなければならない。


・・・しょうがないな。


「だが断る!!!直接戦闘の決闘じゃ勝ち目0だから」


静まりかえっているというのもあるが、あまり大声を出さない僕が

珍しく腹から声を出したため、宴会場に響き渡る。


こればかりはどうしようもない。仮にやったとしても十中八九負ける。

そうなれば柊の正しさが証明され、逆に安心院の名が汚れるオチになる。


僕の断固たる決意が伝わったのか、楓も先輩も何も言えないでいる。

しかし、奏が思いもしない反論に出る。


「ちゃんと決闘したらコーヒー奢ってやる」


「グッ!・・・こいつ」


分かってやがる。戦いの後のコーヒーが如何に美味かを。


肉体も精神も疲労しきった身体に流れ渡るカフェイン。

ほどよい苦さが脳を直接殴るかの様な刺激。

ここに甘味があれば更に良い。

何を食すかはその時の気分によるが、コーヒーに合うのはドーナッツ。

美しき円形。中心に穴がある事で、一口一口輪を描くように食べていく楽しさ。


落ち着け、落ち着くんだ。奏はコーヒーと言った。

ドーナツまで用意するとは言ってない。

コーヒーでも十分嬉しいが、ご褒美を妥協してはいけない。


さあ、奏は僕の取引に応じるか。


「ドーナツも用意するならやる」


「良いよ」


「交渉成立」


勝った・・・。僕は勝った。戦いの後に最高のご褒美が待っている。

それを得るのに高度な駆け引きを行い、勝ち取ったのだ!

やる、闘ってやる、殺ってやる。

あらゆる手を尽くして勝つ。そして勝利のコーヒーブレイクとしゃれ込むのだ。


「・・・香織君は素直なのね」


「はい。好きなものに関してはですけど」


宴会場に拍手が響き渡る。皆が応援してくれている。

修行をしたからか、静かに燃え始める闘志が、自分が思うより膨大していく。


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