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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第4章:学生あるあるのちょっとしたいざこざ
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『第5節:でも、今を楽しんどけ』


交流会まであと1週間。・・・長かった~~~~。


先輩が開発したギブスは特訓の間、僕の四肢に電流を流し

痺れでまともに機能させない代物だった。


ギブスを付けた状態で先輩の攻撃から逃げ続ける。

1年酷使し続けてもランクが上がらなかったスキルを、

僅か1ヶ月で上げる。


難しい話ではあるが、昨年と違う点は2つ。

四肢に負荷を掛けている。

先輩が本気で僕を攻撃してくる。


これをまた1年続ければランクは上がるだろう。

だが、先輩は先輩のやるべき事が、僕も【逃げ足】以外も

鍛えなければならない。


結論としてランクを上げる事はできなかった。

けれでも、今回の特訓で何かきっかけを掴めた気がする。

人の成長は必ずしも課題を1つ1つこなしてなし得るというだけではない。

死の境界線まであと1歩の淵に立ち、そこから生を求める信念が、

人を劇的に急成長させる事もある。


特訓で掴んだきっかけ、後は実戦にて2校の猛者どもと

対決すれば、僕は成長できるだろう・・・たぶん。


さて、交流会まであと1週間。

今までは各クラスで団体戦を勝ち抜くため一丸となって

鍛錬に励んでいた。


しかし交流会には総合団体戦もある。

総合団体戦の参加条件はクラス別団体戦メンバー・三大ステータスA-以上の者。


クラス別以上に、総合戦は3校の名誉を懸けた重要な競技。

故に、その戦場に立つ者は正真正銘の実力者ではなくてはならない。

だからか点数関係で団体戦に参加できないA-以上の者も参加できる

仕組みとなっている。


競技内容は交流会の最中で発表される。

そのため急造チームでの勝利を要求されるので残り1週間と

なった今、夕食は3クラスが親睦を深める時間にしようとの事。

はたして1週間やそこらで親睦が深まるのかという疑問があるが。


「それでは、交流会まで残り1週間。これからは

 他クラスの人とも話す時間を作りましょう。

 皆さんグラスを手に取ってください」


最初の説明会に集まった生徒達が一斉にグラスを手に取る。


「乾杯!」


「かんぱーい!」


宴会室を手配し、飲み物や料理が用意された1つの長方形のテーブルに、

武力・知力・魔力クラスが、なるべく均等になるよう席に座る。

近くの人とグラスを合わせ、得意分野や意気込みなど世間話を始める。


席は平等にクジで決める。僕は1番端の席、正面に先輩、左には初めましての

知力1年の女の子。先輩の隣に赫夜が座っている。


・・・マズい!女子に囲まれた!!


「ささ、男子から自己紹介して」


先輩は顎に手を当て、どこかからかう様に僕に自己紹介を指示する。


「え~、安心院香織、武力クラス2年っす。

 長所は逃げ足、短所は非力ですかね」


「まったく、そんな自虐な言い方しなくても」


「そうですよ、シャロ様から逃げ切る程の実力。

 もっと誇って良いと思います」


正面から先輩に小言を言われ、左からは目を輝かせながら

三つ編みおさげが似合う、知的な雰囲気を出す少女に誉められる。


そして赫夜の大きな拍手が宴会場全体に響く。


「じゃあ、次は文ちゃん」


「はい!村田(むらた) (ふみ)、知力クラス1年です。

 現代古代を含めた言語と考古学の研究をしています」


「文ちゃんは30国語以上話せるんだよ」


「人類の歴史はまだまだ謎に満ちています。

 私は日本のみならず世界の過去を知る事で、

 未来を更に発展させる方法を導き出したいです」


壮大な夢を語る少女の目は、とても堂々としている。

世界を視野に入れた目標を若くして掲げる。

歴史的価値のある文献が揃っており、学びの為なら

海外遠征の費用を負担してくれる。

ここ私立英証雌雄学園は、そういう者達に打って付けだ。


「私も一時期海外にいました。日本とは全く異なる

 魔力や武力の技術を見た時は驚きました」


「そうなんです!国によって歴史も文化も異なる。

 後世に繋げていく事で技術は独自の進化を遂げます」


大人しそうな印象だが、赫夜の話を聞くなり活き活きと語りだす。


「今も受けつながれている歴史の根源の解明。

 消えてしまった歴史の発見。

 それらが人類の文明を進歩させます」


「帝王も窈窕にも歴史専攻の人がたくさんいるから、

 たくさん情報交換すると良いよ」


「はい!シャロ様!」


「何で様呼びなの?」


「シャロ様は専攻は電気工学ですが、その他の分野も

 専門知識は多くのA-・Aを凌駕しています。

 私はそんなシャロ様を心から尊敬しています」


「ふふ、ありがと」


片や輝かせた目で敬意を示すし、片や照れながら謝意を述べる。

高校生のやり取りとも思えぬ目の前で繰り広げられる。


「赫夜さんも香織君を様呼びだし、そんなに

 不思議な事じゃないでしょ」


「そうですけど、僕と赫夜は一族の間柄ですし」


「私はたとえ赤の他人でも香織様にお仕えします」


え、なして?そう言いたいけど言えば赫夜の長話が始まりそうだから

口を閉ざした。


「よほど香織先輩を尊敬してるんですね」


誤解を生みそうな発言を前向きに捕らえてくれる村田さんに感謝。

先輩は何故か赫夜の方をじっと見てる。


「次は赫夜さんの番よ」


自己紹介が止まっていたのをすっかり忘れていた。

流石は先輩、周りを良く見てる。


「初めまして、今年転校してきました安心院一族分家の

 安心院赫夜2年です。得意な事は近接戦闘です」


「海外にいたと言ってましたが修行ですか?」


「はい。私は香織様と楓様の母である夏榎様と違い、

 戦闘向きの能力なので、厳しい環境で少しでも強くなって

 お2人のお役に立つ人間になるべく海外の任務に志願しました」


「本当にそうかな」


明るく話す赫夜を遮る様に冷たい声色で先輩は赫夜に言葉を掛ける。


「あの、どういう意味でしょうか」


「確かに赫夜さんは戦闘面では強くなったのかもしれない。

 けど、香織君や楓君の役に立ててるのかな」


「今はまだですが、これから・・・」


「説明会で暴れた事は無かった事にするんだ」


「ッ・・・!」


重い空気が全体を包む。いつもの優しい先輩からは想像もできぬほど

恐怖を感じさせる。


実際先輩の言う事は間違っていない。私情で暴力沙汰を起こす。

その後に楓と奏も加わったのは最初に赫夜が引き金と言っても良い。

もし、赫夜が騒動を起こさなければ奏がそれなりに対処しただろう。


自分だけが処罰されるならまだしも、魔力A・武力Aの

デカい戦力が無い状態で各クラス競技に臨まなければならない。


これは昨年の柊とは違う意味で場を乱している。

その事実を赫夜にしっかりと示さなければならない。

 

ただ、解せないのは、何故先輩が宴会の席で行ったのか。

別に2人だけの時間を作って反省させても良い筈。

 

先輩は不適な笑みを浮かべたまま赫夜を見つめ、赫夜は下を向いている。

先輩が作り出した空気により、宴会場はしばし静かな時間が流れる。


何かを決意したかの様に、赫夜は顔を上げる。


「私は・・・」


静かな空間に響くのは赫夜の声のみ。

自然とこの場にいる者全員が赫夜の方に耳を傾けている。



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