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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第3章:梅雨時に始まる行事
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『第9節:最近ベーコンはトーストより白米で食べるのにハマってる』

空へと打ち上がるは花火。ラッパや太鼓を奏でるは生徒。

屋台が建ち並び売られるは、焼きそば・たこ焼き・綿飴・etc...。


今日日晴天の下迎えた親睦会、学園全体大盛り上がりだ。


「・・・屋台まで出るんですね」


「去年初参加した時、僕も同じ反応した。

 まあ、公募に限らず行事は毎回この盛り上がりだ」


「楓、抽選行ってきた。俺たちは最後から2番目」


「あー最後のグループが可哀想」


「どうしてですか兄上」


「俺たちの発表が良すぎるから最後は霞むからか」


「そうそう」


「・・・」


「もーいい加減にしろ!どうして急に黙り出す」


「いや、その。香織らしくない発言が増えた気がして」


「兄上本当に変わりましたね」


「そーか?」


まあ、この2人が言うならそうなんだろうけど。

自分じゃわからん。言うほど変わったかな。


「ところで先輩は」


「シャロ先輩ならずっとあそこで踊ってますよ」


わー、チアリーディングの格好で応援してる。

自分も参加する側なのに誰を応援すんだよ。


僕が変わったと言うなら、あの人は相も変わらず

元気一杯オロナミンCみたいな人。


「最後から2番目だとだいぶ後ろだな。

 下手したら夜になるんじゃないか」


「他のグループの発表見に行こうぜ」


「良いですね」


他のグループを見に行ったがどこも発表も凄い。

知力と魔力により生み出された生物や兵器を

鍛えられた肉体、鮮麗された技で破壊する。


わざと武力クラスの生徒に傷を負わせ、知力の医療技術と

魔力の回復魔薬で治す。


各クラスの生徒が得意とする技術を披露するグループもあれば、

楓たちと同じ3クラスの持ち味を活かしたパフォーマンスをする

グループもある。


予想以上に魅力ある発表の多さに、思わず時間の経過を

忘れるほどのめり込んでいた。


気づけば時刻は20時を過ぎ、あたりはすっかり暗くなっている。

遂に楓たちの発表の番になると観客が一気に沸く。


あのシャーロット家ご令嬢に一条一族次期党首に加え、

安心院一族の次期党首という豪華すぎる面々に注目が

集まるのは不思議では無い。


いざ発表が始まると予想通りの反応だった。

先輩が作り出す音に見事に感情を操作される者。

奏が体現する鬼に感情移入する者。

楓が具現化する風物詩に心を打たれる者。


発表が終わると喝采が会場を包み込むだけで無く、

学園中に響き渡る。失敗もミスも無く完璧にやりきり

満足という表情を浮かべる3人。


そして次が最後のグループ。

どうやら発表内容の都合上申請して最後にしてもらったらしい。

しかも鬼塚さんのグループか。あれ?メンバーが違う。


前に見たときはもう1人女の子がいたと思うけど、

金髪のTHE不良になってる。


発表が始まると先ず鬼塚さんが描いたと思われる絵を並べ始める。

どれも鮮やか且つ繊細な風景画。

逆さ富士が見える湖。

緑の地に荒れ狂う台風。

色彩豊かな花畑。


なるほど、暗闇の方が綺麗に見えるから最後にしたのか。


これが彼女の絵。確かに漫画にする際、

作画では文句ないどころか神レベルと言える。


だけど漫画にせずともアニメーターの方が鬼塚さんの持ち味を活かせる気がする。


絵が並び終わると金髪の男子生徒が舞台の中央に立ち舞を始める。

ただ絵を背景にするのかと思いきや、絵が飛び出し

花火の様に美しく散る。おそらく魔力によるもの。


鬼塚さんの絵が飛び出し背景になるだけでも美しいのに、

それが花火の様に散る事で幻想的な世界が具現化される。

我が安心院一族と似て非なる格式高いモノと言える。


だがこれは基となる絵が美しくなくてはならない。

そして絵を紙から飛び出し散らす・・・。

まあ、あれに爆発魔法を応用できればさほど難しくない。

故に鬼塚さんの絵は素晴らしい。


あと気づいたのが舞をしてる金髪の人、思ったより実力がある。

見た目とのギャップを狙った作戦かな。


観客は皆静かにのめり込んでいる。

音は無く、絵画が美しく散りゆく幻想世界の中を舞う男性。

30分に及ぶ発表が終わると最初は静かに、徐々に大きく拍手が鳴り響く。


全てのグループの発表が終わり、即座に会場は後夜祭モードに入る。

梅雨入りのジメジメした空気をかき消すかの様に生徒はおろか教師までもが盛り上がる。


最初は先輩率いるバンド名「オープンエンド」がアニソンを熱唱しだし、

アニメが好きな人もそうでない人も一気にボルテージMAXとなる。


1週間後、成績発表が行われ結果は楓たちの優勝だった。

商品の外出権30日分を手にし、提案者はどんな反応を

しているのかと思いきや彼氏と思われる男とイチャついてやがる。


・・・出会いが目的で親睦会を開いたのか!!

更に周りを見渡せば以前よりカップルが増えた気がする。


おわかりだろうか?

3人のグループからカップルが生まれるという事は。


そう、1人余るんですよ!

キャー!


「香織先輩、話があるのですが」


僕の裾を引っ張りながら鬼塚さんが話しかけてくる。

彼女のグループは3位。大健闘だった。


「わかった。僕も話したかったから」


話場所に選んだのは休憩所。

僕はコーヒーを、 さんはイチゴオレを買いベンチに座る。


「漫画家の件なんですけど」


・・・僕の中で答えは決まっている。

鬼塚さんと友に漫画家を目指す。


発表で見た絵は本当に素晴らしかった。

生まれ持った才能によるモノか、はたまた努力の賜か。

確たる事実は彼女は本気で漫画家を目指している。


そんな彼女が僕と共に漫画家を目指すと言ってくれるのなら、

同じ漫画好きとして全力で力になりたい。


・・・だが、彼女が口にしたのは自分なりの答えだった。


「私は漫画家を諦めます。他にやりたい事が見つかりました」


晴れやかな表情をしている。今まで下を向いて自信が無い声色は

嘘かの様にハキハキと話す。


「何やるか聞いてもいいかな」


「私はアニメーターを目指します」


理由を聞いて次々に疑問が解けた。

僕は鬼塚さんと中学の時に1度会っていて、部活で描いた作品に

感動してくれたから僕と組むことを決めたと。


しかし親睦会後に色んな人から絶賛の声を貰い、

アニメーション研究会から誘いの言葉がかかったらしい。


本人も自分は物語で人を感動させるのではなく、

絵で人の心を満たしたくなったそうだ。


「すいません、散々ご迷惑かけたのに自分勝手な答えを出して」


「いいよ、自分なりの答えを見つけるのもここの意義な訳だし」


「あの、本当にシャーロット先輩とはお付き合いしてないんですか?」


「ほんと・・・呼び方が変わってる」


「その事なんですけど」


まあ、蓋を開けりゃこんなオチだ。

目的や尊敬、様々な感情が交ざった結果先輩を敵視した。

顔を見るのも心苦しいから彼女がいる時は姿を見せない。


とりあえず彼女はこれから夢のため努力するのに、

今までの厄介事は不問としますか。


「原画担当したら教えてよ」


「はい、香織先輩には是非見て欲しいです」


そうして彼女は去って行った。

まだまだ梅雨が明ける気配がない6月中旬。

後夜祭の時より、僕の心は清々しい状態だ。


・・・明確な日付はわかないけど、近いうち新たな厄介事がやってくる。

今それを考えるのはよそう。


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