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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第3章:梅雨時に始まる行事
33/95

『第3節:アイスはカップよりコーン派』

「親睦会?」


4月いっぱいまで投票期間を設け、5月1日に結果が発表された。

本来1位の筈の交流会は実現不可能となり、2位の親睦会が繰り上げで当選。


総合場内運動場、通称体育館で代表者と企画内容の説明がある。

直接見る者もいれば学園各地にあるテレビ中継で見る者もいる。


気分的に直接見たいと僕が言うと楓も奏も付いてきた。

体育館では予想以上に人がごった返していて、1番前に行くのは無理そうだから

後ろの方で聞く事にする。


親睦会か、学年別かクラス別の人たちが交流を深める事が目的なのだろう。

けれどそんなのみんな普通にしてるし、わざわざ行事にする必要あるのか?


「あーあー、マイクチェック」


舞台で1人の女子生徒がマイクを持って現れる。

彼女が今年の担当役なのだろう。


「初めまして、私は魔力クラス3年 高西(たかにし) (けい)と言います。

 今年の公募行事は、私が提案した親睦会に決まりました」


彼女の話はこうだった。武力・知力・魔力と学年は問わないが、

異なるクラスの人間3人で1チームを作り何か活動して発表する。


審査員は教師3人で行い、賞品は外出権を1ヶ月。

教師の目が届かない所での活動は危険であるため、長期休暇を除いて

学外活動を行うには諸々条件がある。

娯楽や材料などを揃えるのに必要な設備が学園内に備わっているため、

基本外出を望む生徒は少ない。

しかし反面、誰かと一緒にいればすぐ人の目に留まり、恋人らしい時間を

過ごしにくいと不満を持つ人もいる。

高西という人がどのような目的で景品を設定したのかは見当もつかないが、

生徒が勝手に言い出したにも関わらず、学園長がその賞品を許可したのはあの人らしい。

生徒の自主性にとことん協力的な学園だこと。


「何か活動して発表って随分と大雑把だな」


「僕たちならあると言えばあるじゃん」


「あ、四季忍術と妖怪剣術の事ですね」


「良いなそれ。香織、楓お互い一族の誇りを持って

 勝負しないか?」


「えー、ダルい。ってかチームはどうすんの」


「ぼくは魔力クラス、兄上は武力クラス。

 後はあの人がいれば完璧です」


あの人?・・・あー、あの人ね。はいはいあの人あの人。

何故だろう、きっと来るのではなく、もういる気がする。


「呼びましたか?」


そこには青と白のフリルが似合う小柄な少女がいる。

白銀の髪色をした少女は僕の右手の裾を引っ張りながら、

乙女の眼差しで上目遣いをしてくる。


おそらく僕だけでなく楓と奏も同じ事を思っただろう。


お前かよ!


「えっと、君ではない。別にあの人でもない」


「香織先輩、決めてくれました?」


やべ、普通に忘れてた。漫画は好きだけど自分で作ろうと

思った事は無いしこれからもたぶん無い。


「なんだ、いよいよ2人は付き合うの?」


そうだ、2人にも言ってなかった。


「話しても良い?」


「は、はい」


本人の承諾も得た事だし、かいつまんで話した。

先輩が作品を出してるのを言っていいか迷ったけど、

サイン会に出るぐらいだし問題は無いと思う。

その事実も含めて彼女の目的は僕と漫画家になる事だと話した。


「なるほど(笑)(笑)」


「確かに兄上に頼みたくなりますね(笑)(笑)」


なーに笑ってるのかな。ド突くぞこら。


「で、僕の返事としては断らせてもらう」


「どうしてですか、私が作画で香織先輩が原作。

 シャーロット=レーンに負けない作品が作れます」


この子、随分と先輩を敵視してるみたいだけどファンじゃないのか?

漫画家か、目指したいって気持ちは0ではない。

中学の時部活で創ったし。

だけど人生懸けてやりたいかと問われると難しい。

それに彼女がどれだけ本気かもわからない。


・・・お、そうだ。


「親睦会で決めよう」


「どういう事ですか?」


「君が僕以外の誰かと組んで親睦会で、

 絵に関する発表して内容が良ければ一緒にやろう」


「私の絵を、は、発表」


「ここは自分の実力を証明する場だろ。

 だから証明して欲しい、君の実力とやる気を」


「わかりました」


いつも視線も声色もオドオドしている彼女が

初めて自信のある表情して返事をした。


緊張のせいか手を僅かに震わせながら走って行く

彼女を見送り、さっきからずっとクスクスと笑う

奏と楓に怒りを覚える。


「おい貴様ら、何故笑っている」


「だ、だから証明して欲しい(笑)(笑)」


「君のやる気と実力を・・・ですか(笑)(笑)。

 カッコよかったですよ、兄上」


「あーもーいー!僕お家帰るー」


「待ってくださいよー兄上ー」


「そうだよ待てよー香織―」


かくして謎の少女鬼塚 遙が巻き起こした事件は一時ではあるが幕を閉じた。


うんうん、ハッピーエンドだ。

終わろう、こののまま終われ。


終わって・・・くれよ。


どうしてあの人が走ってこっちに来るんだよ!


「香織くーん。みんなー」


「逃げるぞ!」


「何でだよ」


「シャロ先輩に失礼ですよ」


クソ、裏切り者め。

そもそもあの人はどうしていつも遠くから

走ってくるんだ。


「ねえねえ、みんなは親睦会に出る?」


「あ、その話なんですけど、ぼくと兄上で

 チームを組んで奏さんと勝負しようって話に」


「安心院と一条の対決だ、凄い!」


「香織と楓はシャロ先輩を知力クラスの枠で誘おうとしてましたよ」


「喜んで、絶対勝とうね」


「僕やるなんて言ってないし

 奏が不利過ぎないか?」


「良いさ、俺は俺でメンバー探すから」


「そういえば楓君は魔力クラスなのに、

 香織君って武力クラスなんだ」


「魔力と武力なら武力の方が上なので」


「・・・なるほど」


まあ、疑問になってもしょうがない。

ぶっちゃけ魔力が低くても魔力クラスと名乗るのは違反ではないけど、

武力の方が上だからそっちにしただけで僕自身も特に気にしてない。


「いっすよ、そんな気にしないで。

 楓から諸々聞いたみたいだし」


「うん、だからいつでも頼って。

 貴方の力になるから」


・・・あ、そうだ。


「早速なんですけどお願いが」


「何?」


「楓と奏と親睦会に出て欲しいです」


「兄上!?」


「出たくないにしても俺と交代する意味ある?」


「なんか、安心院と一条とレーンが組んだらどうなるのかと思ってさ」


僕の言葉を聞くと3人は顔を合わせる。

お互いがお互いの実力を把握している。


安心院は様々な技能を備えた人材を育成し続け、柱となるべく活動する。


一条がもたらすのは安心と安全。

鍛え抜かれた肉体と精神で人が守りたいものを最後まで守り抜く。


一方レーンは、叡智にあふれた存在。

その力で数多くの製品を生み出し人々の生活を豊かにしてる。


方法は違えども3つの家系は世のため人のため活動してる。

では、もしも同じ目標を持って活動したらどうなるのか・・・。


「良いね、私やってみたい」


「ワクワクしてきた、香織ありがとう」


「兄上のご期待の応えるよう全力を尽くします」


「楽しみにしてる」


ここに優勝最有力候補のトリオが結成された。


桜が散り終わり、葉桜へと変わり始めた様子を眺めながら

鬼塚の件も含め、僕の日常にも変化が起こり始めようとしている。

そんな予感が胸を過ぎった。


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