『第2節:陰キャでも楽しめる学園行事は貴重』
行事の情報は学園の至る所で掲示される。
しかし、大食堂で確認する生徒が多い。
広くみんなが集まり、食事もあるため飲み食いしながら
行事について話し合える大食堂は大変人気である。
「日程は6月1日」
「去年はいつだったんですか?」
「去年はクリマスに・・・香織、話してないの?」
「そうなんですよ。兄上から連絡なんて全然来なかったんです」
「ほら。奏だって楓と仲良いし話してるもんかと」
「兄から話してもらった方が嬉しいもんかと」
「はい、嬉しいもんかとです」
どんな日本語だ。んなことより今は行事だろ。
「兄上は演劇ですよね」
「え、意外」
奏、お前もか。
既に企画提案と投票が行われている。
ランキングも出ていて、1位は・・・。
「他校交流会?香織、あれって」
「おいおい。できんの」
「交流会は別の行事にありますよね」
他校交流会。
我が英証雌雄学園と締結のある2つの学園と武力・知力・魔力3クラスが互いの実力を競い合う。
本来は7月後半か、8月前半にやる・・・のに。
「これが当選されたら今年は2回やるんですかね」
「そもそも他校にどうやって頼むんだ。
本来の交流会は恒例行事だけど今回は例外だろ」
「でもいざとなればあの人が何とかしてくれそう」
あの人?・・・あー、あの人ね。はいはいあの人あの人。
何故だろう、きっと来るのではなく、もういる気がする。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん!」
呼んでねーよ。大魔王じゃないだろあんた。
いや、魔王感はあるよ。それこそピッコロみたいな。
「こんにちはシャロ先輩。」
「こんにちは、香織クシャミした?」
「こんにちはって誰が大魔王だ」
「ポコペンポコペンダーレガ
ツツイタポコペン」
「ほほー、香織君は私が口から卵出すとこ見たいのかな?」
「このネタに直ぐわかるあたり流石です」
「ふふん。当然」
何故わざわざ目の前に現れたか問いたいがあまり意味が無いので、行事の話を切り出す。
「私もできるかなって思ったよ。でも公募行事はみんな
ノリで企画提案するから実現可能かは二の次だし」
「今まで候補に出た事無いから、面白半分で投票する奴も多いな」
投票数が150票を超えている。全校生徒500名以上だから約3分の1が交流会を望んでいるのか。
奏の言うように面白半分で投票しているのか。・・・あれ面倒くさくね?
「あれだと演劇は難しいかもしれませんね」
楓の言うように[演劇大会]はあるが票が4票しかない。
僕たちが入れても8票、おそらく今年は交流会で決まりか。
「こればかりはしょうがないよ。来年に期待だね」
「来年じゃ先輩いないっすけどね」
「・・・」
ここ最近、黙る人を見る機会多すぎる。
何だよ全員口を閉ざしやがって、変なこと言ったか?
気まずくなるから反応してくれよ。
「私投票してくる!」
「ぼくも行きます!」
「じゃあ、僕も」
「香織は座っててくれ、俺が代わりにしてくるから」
「おお。すまんな」
何だあいつら、急に走り出して。
お腹空いたしご飯でも食べよ。
「香織先輩」
背後から声が聞こえ、振り向くと鬼塚がいる。
「あの、さっきの話の続きなんですけど」
「そうだ、話して欲しい」
「場所だけ変えさせてください」
そう言うと彼女は僕の裾を引っ張り、多くの自販機とベンチがある休憩所まで連れてくる。
「話す前に何か飲む?」
「い、いえ!お気になさらず」
そう言っても視線が思いっきりイチゴオレを指してるから本心は飲みたいんだろ。
ちょうど僕も喉が渇いてるからコーヒーとイチゴオレを買って彼女に渡す。
「ありがとうございます」
嬉しそうに渡されたイチゴオレを眺めてる、そんなに好きなんだ。
お互い一口飲んで軽く喉を潤すと、遂に鬼塚は胸の内を話し出す。
「私・・・漫画家志望なんです!」
「う、うん」
「シャーロット=レーンじゃなくて私と組んでください」
おー、まさかのバ○マン展開。
疑問が解けるかと思いきや新たな疑問が生まれた。
何から聞けばいいのか。とーりーあーえーず。
「僕は別に先輩と漫画描いてないよ」
「う、嘘です。これが証拠です」
「単行本?少女漫画か」
彼女が僕に見せたのはどこにでもある普通の少女漫画。
少年漫画は読むけど少女漫画は読まないから、目の前の作品については全く知らない。
上、中、下巻の3冊で早読みが得意だから上巻だけ直ぐに読むと
なんとなくだけど彼女の言いたい事が理解・・・う~ん、どうだろう。
正反対恋愛。
成績優秀で人気者の主人公の女子高生が後輩男子に恋する話。
主人公の性格はおとなしめで絵に描いたような清楚。
後輩男子は勉強は苦手だけど運動神経抜群で明るい性格。
なるほど、成績も得意分野も正反対の2人の恋愛話。
彼女がこれを証拠と言うって事は、この作品のモデルが僕と先輩だと思い込んでるのか?
初出版は去年の7月、僕と先輩が会ったのは去年の4月の入学式。
時系列は問題無いけど、作者名は無 希星。もしかして・・・。
「これ、先輩の作品?」
「はい、下巻の発売日に先生のサイン会があって」
「そこで先輩だと知ったわけだ」
お~~マジか~~。あの人作品出してたんだ。
僕が少女漫画は読まないの知ってるから言わなかったのか。
「だけど、まさか香織先輩と作った作品だとは思いませんでした」
「いやいやいや。僕全く関わってないから」
「う、嘘です。入学式で見ました、香織先輩が
シャーロット=レーンと楽しそうにしてるの」
見た?入学式で?・・・もしかして。
「僕が先輩に追いかけられてるところ?」
「あの日常が作品の根源であり、香織先輩とシャーロット=レーンが
一緒の部屋にいるところを見て確信しました。」
んー、違うと思うなー。仮にそうだとしても
先輩が僕に何も言わないで作品を出すとは思えない。
それとさ・・・別に楽しそうにしてねーから!!
こ、ろ、さ、れ、か、け、て、た、か、ら!!
あと1つ、作品についてとは別に気になる事が。
「あのさ、何でずっと先輩をフルネーム呼びなの」
「すいません、それは話せません」
「僕が先輩と一緒にいる時だけ姿を見せないのも秘密?」
「はい、すいません」
まあ、目的がわかったからいいや。
漫画家志望の彼女は同じ漫画好きの僕と作品を作りたい。
ところが既に先輩とコンビを組んでいると勘違いして、いきなり告白紛いな申し込みに来たと。
・・・紛らわしすぎるわ!!!
私を選んでとか言うか?
率直にコンビを組んでって言われれば逃げづとも話し合ったさ。
「ってか僕が漫画好きってどこで知ったの」
「ゆ、有名ですよ。香織先輩が漫画好きなのは」
確かに隠してるつもりないしむしろオープンな方と言っても良い。
だけど何故だろうか。
話しているうちに彼女とは初めましてではない気がしてきた。
こんな派手な格好で僕好みの白銀の髪色をした人を忘れるなんて事は無いと思うが、
どこかで会った気がする。
幾つも疑問を残しながら、漫画家としてコンビを組むかは考えさせて欲しいという
要望を受け入れてもらい、僕たちはその場を後にした。




