『第1節:へー、マドンナってイタリア語なんだ』
4月も終わりが近づき始め、これから暑さとジメジメな梅雨が近づくのかと思うと少し憂鬱。
今のは未来に起こるであろう憂鬱の話。
では、現在進行形で起こっている憂鬱な話をするとしよう。
僕が住む寮の部屋は松ランク、寮は男女別の棟に分かれて
下から梅の層、竹の層、松の層となっている。
寮の1階は男女寮共々に出入り可能な集会場。
2階から寝室で異性は無断では立ち入り禁止、入るなら事務室に申請して記録を残す必要がある。
そして、先輩が僕の部屋に遊びに来た以降・・・。
「わた、わわ、たしを。選びなさい!・・・ください」
彼女の名前は鬼塚 遙。僕に告白とストーキングを繰り返している。
ツンとデレのブレンドが下手くそな告白を。
「兄上、また来ましたね」
「来たね」
「やっと香織の魅力に気づいた女の子が現れたんだし、
付き合っても良いんじゃないか」
ちょっと何言ってるかわからない。
奏が言う僕の魅力とは何ぞや。
この子が僕に告白してくるのは別に僕が好きだからではなく、
詳細はわからんが少なくとも先輩が絡んでいる。
相変わらず先輩絡みで厄介事がやって来る。
きっかけは先輩が僕の部屋に来た次の日。
運動場に向かおうとしたら、いきなり初対面の女の子に話しかけられ第一声が・・・。
「しゃ、シャーロット=レーンなんかより、
私にしときなさい!」
白と青のフリルが目立つ原宿だか秋葉にいそうな、
ゴスロリファッションの女の子がいきなり告白?
と言うか・・・ん~、まあ、そんな感じの言葉をかけてきた。
「誰だお前」
もうちょい優しい言い方もあったと反省しているが、
突然の意味不明な台詞にこっちもテンパった。
「ひゃ!すい、すいません。せ、先輩。
私、知力クラス1年 鬼塚 遙と言います」
後輩か。確かに僕でも見下せるぐらい小柄だけど、
私にしときなさいはどういう意味だ。
「んで、私にしとけってのは?」
「き、昨日シャーロット=レーンが貴方の部屋に泊まりに行ったの知ってます」
・・・ほう。確かに女の先輩が男である僕の部屋に来た。
けど、彼女が何故それを知っているのか、
男なら近くの部屋に住んでいる奴が目撃しててもおかしくない。
のに、彼女がその事実を知っている理由は
先輩に発信器でも付けたか、監視カメラや申請記録をハッキングしたか。
仮に後者ならかなりマズい。学園のあらゆる記録は本来機密。
校長ですら勝手に閲覧するのは不可能。
その情報を把握できたのなら彼女の情報網はとんでもない。
「どうしてそれを知ってるの」
「・・・」
黙りか。これは穏やかじゃないな。
まあ、それより先に確認したい事あるし。
「さっきの続きだけど私にしとけってどういう意味」
「私の方が、い、良いおん、女?」
いや知らんがな。何故に疑問形、そんで良い女だからどうしろってんだ。
「もしかして、僕と先輩が付き合ってると思ってる?」
「へ、ち、違うんですか?」
「違う違う」
「う・・・嘘だ!」
竜宮レナか。思い込みが強い奴は苦手だ、どうしたものか・・・。
「嘘だと思うかは勝手だけど僕は事実を言ったからな、
後は先輩に確認するなりしろよ」
「私じゃ・・・ダメですか?」
裾を掴んで上目遣いをするな!可愛すぎだろ!
「君の言い分だと何か先輩が絡んでるみたいだけど、理由は何なの」
「・・・」
また黙り。勘弁してくれ、口数が少ない人は苦手なんだ。
「とりあえずちょうど先輩いるし、訳を聞こうか」
「え!?」
よし離した、【逃げ足】発動。
こんな簡単な嘘に引っかかるとは。
この日から気を抜けば鬼塚が現れ、やっと先輩から解放されたのに
また追われる日常の再来となった。
同じ1年の楓にどんな人なのか聞いたが、知力クラスでも
1人でいることが多く、先輩と話してるとこも見たことが無いと。
現れては私を選べと言い寄られる日々。
被害を受けてる訳ではないから大事にしてないが、とりあえず奏に相談すると。
「シャロ先輩に誰なのか聞いてみたら?」
確かにそれが手っ取り早いと考えた。
けどあの人は厄介事好きだし、話すと更に事がややこしくなると思って話してない。
それに彼女の行動で1つ不可解な点がある。
僕が先輩と一緒にいると絶対に姿を見せない。
さりげなく理由を聞いたらはぐらかすかお得意の黙り。
何の解決策も見つからないまま時間だけが過ぎ今に到る。
「君さ、僕に選ばれてどうしたいの」
「一緒に・・・い、いたい?」
だから何故疑問形なんだよ、本当の事は全然言わないのに嘘まで下手とか
会話が成立つ気がしない。
「はぁ、どうしたものか」
「香織先輩が私を選べば、い、良いと思います」
「よし、わかった」
「兄上!?!?」
楓さ、声デカいから落としてくれ。
「遂に香織が折れた」
「ほ、本当に私を選んでくれるんですか?」
「条件は、君が隠してる事を教えること」
「う・・・」
悩んでる。とても悩んでらっしゃる。
目的を果たすか、素性を晒すか究極の天秤にかけられてる。
「私は!」
遂に彼女が口を割ろうとした瞬間、学園全体に放送が入る。
その内容は・・・。
「お、公募行事か」
「本当に突然なんですね」
「香織は今回彼女と参加か」
「そうだ、さっきの続き・・・いない」
放送に夢中で気づけば彼女は姿を消していた。
まあ、どうせ直ぐ現れるだろうと思い僕たちは大食堂に掲示板の確認に向かう。




