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プロローグ
朝食を、というか料理自体いつぶりだろう。
ましてや人のためなんて初めてだ。
母も楓も料理が好きだから僕は食べる専門、
だからどうやって献立を考えたらいいかわからない。
「香織君のお勧めで」
一晩中漫画やアニメについて語り通した先輩は、少し疲労感を孕んだ声を出す。
僕に気を遣ってくれたのか、「何でも良い」ではなく「お勧め」を注文。
脳が疲れているなら必要なのは糖分。
なら、朝食にぴったりスイーツ系、フレンチトーストにしよう。
卵と牛乳をかき混ぜ砂糖を加える、食パンの耳は切っておき身だけを浸す。
バターで熱したフライパンでほどよい焼き目がつくまで焼いたらお皿に盛る。
切り取った食パンの耳は揚げて塩をふる。
「できました」
「いただきます」
教科書に書かれた見本のような姿勢で、ナイフとフォークを使って食べる先輩に見とれて気づけば自分の手が止まってしまう。
「美味しい!」
「ありがとうございます」
嬉しい。先輩だからではなく、純粋に美味しいの一言が
こんなにも嬉しいだなんて。
甘い物を食べたら塩気の物が食べたくなる。
食パンの耳で作ったラスクを出すと先輩はまた美味しいと言ってくれた。
時刻は午前7時35分。
先輩は授業の準備をするため自分の部屋に戻り僕もシャワーを浴びて着替え始める。




