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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第1章:始まりの春
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『第2節:義務教育を終えたピカピカの1年生ここに参上』


国歌斉唱、来賓の挨拶、学長の言葉、在校生による校歌斉唱。

睡魔と賢明に戦いながら、入学式を終えればクラスに分かれてガイダンス。

それが終われば自由時間だが、新入生は研究会の勧誘でもみくちゃにされるのがお決まり。


女子の初対面の相手に対するぶりっ子演技。

男子の高校生デビューを目指した俺イケてますけどパフォーマンス。

仮面を被った人間の舞踏会場と化した教室を後にし、家同士の繋がりで、小さいときからつるんでる一条 奏と共に寮に向かう。


「さて、早めに昼飯済ませるか」


「香織、新入生歓迎会行こ」


これだ。こいつは絵に描いたような優等生で、勉強も家柄の剣術も常に優秀で、顔も良く女子からモテモテ。そう、やつは・・・


リア充。リアルを充実してる、リア充。

大切なことなので2回言いました。


だから行動も模範的に、新入生歓迎会なんてふざけたイベントにも参加しようとする。


「死ぬ気か?」


「何でだよ」


まあ、そういう反応だろうな。

人生イージーモードの彼には、このイベントの本当の地獄を知らない。

ここは何をやってもできない、非リア代表の僕が教えてあげよう。


「あんなブラック組織歓迎会に参加す意味が分からない」


「ブラック組織?」


「あれは上級生が新入生を食いものにするための活動だよ」


「ほう、その心は」


「弱そうな男は先輩のパシリ兼財布に。

 可愛い女の子はチャラ男の餌食に」


「香織なら大丈夫だろ。あの安心院家の長男なら人気者になれると思うし」


「実力が無ければ直ぐ人は離れていくよ。それにこんな見た目だし」


ボサボサもっさり頭で右目が前髪で隠れてる鬼太郎ヘアー。

見えてる左目は、いつも半開きで病気目というか死んだ魚の目というか。

更に猫背だから、視線が下に向いてるため、初対面でも根暗なのがバレてしまう。

身なりを整え、姿勢を正せば根暗という印象は防げると思う。

しかし、必要最低限でしか人と関わるつもりがないのでやらない。

僕のこと小学生になる前から知ってて、この見た目を家族以外じゃ、誰よりも見てきたくせに首を傾けながら奏は言う。


「・・・え、カッコいいじゃん」


はぁぁ、容姿の基準は人それぞれなので、この発言を否定はしない。

けどこいつは、女が男に最低下求めるものを僕が所持していないのに気づいてない。


「あ、の、ね。僕は身長168なんだよ。

 女は175以下の男は男と見てない。」


「そんな厳しいの?」


「だって、ヒール履けないし」


「意外と女心に気使ってるんだな。

 でも確かに、香織がヒール履いても俺より低いな」


「あ?お前今いくつだよ」


「185、いやこの前測ったら188だった」


「あーあー。一条家は安泰だなー」


「はいはい、卑屈になるのは後にして説明会行くぞ」


などどとくだらない会話をしてると、校舎入り口に到着。

外では新入生を勧誘しようと、上級生達が待ち構えている。

なんか、目が怖い。凄く怖い。僕でなくても行くのに気が引けるオーラ出してるよ。


「あいたた、お、お腹が痛いから保健室行きたいー(棒)」


「なるほど、力ずくで連れて行けと」


刀に手を添え腰を低く構えるっておいおい、僕の僕の首を落とすつもりかよ。

力ずくでで連れて行くってどこに?あの世?


「へー、できるの?」


「造作も無い」


もちろん本気の奏に僕は全く敵わない。

油断してるなら勝算は(たぶん)あるが、こいつはそんな相手に失礼なことはしない。

なら、本気モードの奏に勝つには・・・


「あー!侍家系、一条警護会社の1人息子でイケメンの一条奏がいるぞ。是非とも勧誘しよう」


戦わずして勝つことである。


「おま」


上級生たちの視線が一気に集まりだす。

ある者は写真を撮り、ある者は顔を赤く染め、ある者は鏡を見てお色直しをする。

って反応してるの全部女子生徒じゃねーか。


「一条警護会社ってあの」


「え、かっこよくない?」


ざわつきの声が大きくなる。

一条家は剣術に優れた侍がボディーガード、施設警備などを営んでいる。

国内屈指の実力と知名度を誇る。

では、そんな一条家と繋がりがある僕の安心院家は・・・また別の機会に。


徐々に徐々にと距離を詰め始める生徒達、次の瞬間。


「是非我が活動に参加してほしい!!」


一斉に奏の元に押し寄せる上級生、奏の取る行動は逃げの一手。


「覚えてろー!」


ふっ、勝った。

さてさて、今ので人が減ったおかげでスムーズに食堂まで行ける。


・・・奏を追わなかった活動会がいくつかあるけど、

本当の実力者ならあんな無理矢理な勧誘はしないってことか。


実際かなりの手練れ揃いだ、気配で分かる。

その中でも、総合拳法研究会と書かれた看板を掲げた集団の奥にいる男の人。

おそろしく強い。


中国服、冷たい表情、眼光だけで人を殺しそうだ。

うわ目が合った、早く行こ。


「きみ、うちに来ないかイ?」


「え、僕ですか?」


「面白い気配してるネ」


中国なまりの日本語やっぱ中国人か、ん、気配?


「課外活動をやる予定はないんで。

 誘ってくれてありがとうございます」


「断るのは爪を隠してるからかナ」


・・・気づかれたか。


「そんなんじゃないですよ、皆さん強いですよね。

 僕弱いですし、研究会の名が廃れますよ」


「今すぐ決めなくていイ

 少しでもその気になったらおいデ」


「はーい」


若干ではあるが初対面で僕の秘密に感づかれるとは。

あんな強者はそういないだろけど、とりあえず秘密がバレないように気をつけないと。


猛者だらけの学園に入学したことを再確認しようと深呼吸をし、気持ちを整え始める。

視界に散る桜が映り込むのに心を癒やしていると、空から大声が響き渡る。


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