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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第2章:始まったばかりの春
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『第9節:金持ちの知り合いはやっぱ大物だらけなのかな』


「香織君を傷つけるのは私が許さない」


バチバチと雷鳴が響き、僕と柳原の間にいる先輩は今まで見たことがないほどの怒気を孕んだ表情を浮かべている。


「速いっすね、相変わらず」


「ありがと、とりあえず移動するよ」


「え、ちょっと」


この歳でお姫様抱っこされるとは。

わ、スーツにも電気通ってるから少しビリビリする。

先輩が斬り破った扉まで運ばれると強く僕の手を握りしめる。

いや、それならスーツの電気切ってくれ、痺れる。


「もしかして、香織君1人で戦ってたの?」


「戦うというか、逃げ回ってたが正しいですかね」


四季剣術のことはできれば他言したくない。

父も最低限の戦力として許してはくれたが、

自分1人で何とかしないといけない時の最終手段。


なんて言えばこの先輩は「じゃあ、私が尽きっきりで守るよ」

みたいなお節介を言い出す気がするから黙っとこ。


「そっか、この私から逃げきれたんだもん、あんなやつ訳無いよね。

 待ってて、今からやっつけてくるから」


全校生徒の顔を覚えたと言っても、姿が変わりきってるから柳原だと気づいてないのだろう。

ウィンクすると同時に僕の目の前から一瞬で柳原の目の前まで移動する。

柳原の拳と先輩の刃が交わる音が戦いの合図となる。


先輩の戦い方は荒々しい

それは空の怒りの如く豪快で。


先輩の戦う様は眩い

それは流星の軌跡の如く煌めき。


先輩の戦う姿が・・・神々しい。


全身に轟く雷鳴(サンダーロック)


峰打ち連撃を与え柳原の動きが鈍り遅くなっていく。

肉体に雷を流し動きを封じようとするつもりか。


にしても柳原の身に何が起こったんだ。

あの速さと力、武力がA-ぐらいあるだろ。

理性さえ失っていなければ楓とも良い勝負できんじゃないか。

違うか、理性を失う条件にあれだけの力を得たんだな。

まあ、知力だけど戦闘タイプA+の先輩には全く歯が立ってない様子。


「ガ・・・ハッ」


遂に動けなくなった柳原が倒れるとズドンと鈍い音が響く。

先輩は安堵の息をつくとこっちを見るなり手を振り声をかけてくる。


「香織くーん」


僕も手を振ろうとした・・・だが、僕は先輩の元へと走り出す。

柳原の魔力がどんどん膨張してるのを感じるからだ。

まさか爆発する?

何が起こるかわからないし自分に何ができるかもわからない。

とにかく先輩が危ない。そう直感した。


「先輩後ろ!」


「え?」


柳原の身体が光り出す、僕は先輩の盾になり

巻物から「秋季忍具 栗の殻」を取り出す。

巨大な栗が僕と先輩を包み込みその直後、大爆発が起こる。


強固な栗の殻を破るほどの爆発は、そのまま倉庫を吹き飛ばしてしまった。

殻が破られ爆風が僕たちに届く寸前、僕は先輩を守ろうと必死で覆い被さる。

幸い先輩は僕より僅かに小柄なため爆風が先輩に届くことはなかった。

それでも強すぎる風圧で僕たちは吹っ飛ばされたが、先輩には怪我は無いようだ。良かった。


「か、香織君!」


僕が着ているのは衝撃、耐火、気温、様々な耐性を持つ制服。

更にパーカーも一族に頼んだ特別製で制服と同等の性能を持つ。

その制服でも耐えきれない威力の爆発は、僕の後ろ上半身を焼き尽くす。

熱いのか痛いのかすらわからない苦痛。

音が耳に入ってこない、声が出せない、意識も薄れて・・・。

あ。大丈夫か。あの能力で治るんだし。


今回で3回目の【超回復術】とやらの能力が発動。

意識がある状態は今回が初めてだ。

ってかめっちゃ光るやん!話に聞いて想像した以上に光ってる。

おー痛みがどんどん引いてく。


「良かった、ありがとう助けてくれて」


「助けられたのは僕の方ですよ、ここがよくわかりましたね」


「楓君が香織君の魔力を感知して教えてくれて、

 私が一番速く動けるから先に来たの」


「いや~凄いスーツだ」


「この制服も凄いよ、でも制服もパーカーもボロボロだね。

 脱いだら?」


「裸でいろと?」


「上だけなら男子は平気じゃん。

 女の子はそうもいかないの」


「案外そう言い切れないのでは」


「香織君の変態」


「バレたか」


「しょうがないな~ちょっとサービス」


おほ、谷間のチラ見せだと!

ツヤのある谷間!Bカップの控えめな谷間!

ブラが赤色とか経験人数どんだけーー!!


「ちょ、見過ぎだ馬鹿!」


Yeah!ビンタのご褒美だぜ!

などと楽しんでいたら背後から良くない気配を感じる。


「あーにーうーえ」


優しい声で話しかけてくるが何だこの

心が鎖で縛られたような感覚は。


「よう、ありがとな楓。お前の感知能力が無かったら僕はたぶん死んでた」


「そ、そうですか。お役に立てたなら何よりです」


「ああ、最高の弟だ」


ここで頭を撫でる。昔から楓は僕に撫でられるのが好きらしい。

顔を赤く染め恥じらいながら笑みを浮かべ反応する。


「嬉しいです」


ふう~良かった~。機嫌直してくれた。

死、に、か、け、たー。


「無事だったか、何だこれ爆発の跡?」


楓に続いて奏が到着する。そして奏に言われるまで忘れてたが

生徒1人が自爆したなんて非常事態だ。


「た、確かに香織君の傷ばかり気にしちゃったけど、あの人突然爆発したの」


「巨大な魔力を感じましたが誰が兄上を」


「柳原 群って名乗ってた。

 でも武力クラスなのに魔力って変だよな」


「・・・誰?」


え、先輩が知らない?

既に新入生とも顔見知りになったコミュ力お化けの

先輩が知らないだと。武力クラスと知力クラスとはいえ

3年生の柳原は同級生。


「柳原 群 武力クラス3年生で軍隊格闘術専攻。知らないんですか」


「うん。そんな人会ったことも聞いたことも無い」


ならあれは誰だったのか。部外者が生徒のフリをしていたにしても

僕と先輩の関係を知っていたり、結界の件が説明つかない。

何より、自爆する理由がわからない。

騙されて奥の手用に危険な魔法薬を使ってしまったのか、答えが見つからない。


4人で考え込んでいると奏が1つの仮説を提唱する。


「もしかして魔力クラスが作り題した人形って説はないのか」


「自分もしくは他人を模した人形は魔力がB+以上あれば。

 長い時間が必要ですか理論上可能です。確かにそれなら・・・」


「知力がB+以上でも人形は作れたよな?」


「はい、ですが作れるのは人形のみで、動かすには強力な魔力が必要です。」


「じゃあ、知力と魔力の人が共同で作った可能性もあるよね。

 私も合同研究とかよくやるし」


「そ、そうでした」


珍しい、楓がそんな見落としをするなんて。

だが確かに人形ならば説明がつく、僕と先輩の関係は学園じゃ軽く有名だし、学園内なら結界の心配はいらない。

人形の自爆は証拠隠滅。


「けど、誰のDNAを使ったんだ、人形を作るなら不可欠だろ。

 先輩が知らないなら学園外の人のDNAを使ったことになる」


「私が調べてみる。軍隊の方に多少顔が利くから偽名じゃなければわかると思う」


流石はレーン財閥ご令嬢、サラッと凄い事をおっしゃる。

まあ、柳原 群や軍人がまるっきり作り物ならお手上げだけど

それは0から人格を持つ人形を生み出す魔力A+の力が無いと不可能。

とりあえず動機だ何だは置いといて、疲れたしお腹空いたし

僕たちは寮に戻ることにした。



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