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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第2章:始まったばかりの春
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『第8節:モノは使いようとはよく言ったもんだ』


視界から楓たちが消えると、僕は倉庫の様な所にいる。

倉庫は学園の至る所に置かれてるからどこにあるやつかは推測つかん。


「どこだここ」


「おい」


声のする方に振り返ると1人の軍人さんがいる。

迷彩服を纏い片手にマシンガンを携える強面の男が、眉間にしわを寄せ睨んでくる。

今のは空間系による移動魔法。

高度な魔力系なやつじゃないと使えない筈。

まさか、この人がそうなのか?


「なに黙ってんだよ」


「誰だお前」


「俺に生意気な口を聞くな」


嘘だろ撃ってきやがった!

回避能力が無い【逃げ足】では当然銃を向けられれば、そのまま蜂の巣にされる。

しかし、物は使いよう。銃口から逃げるのならば容易い。

僕が5分ほど逃げ回ると相手は撃つのを止め、愚痴を漏らす。


「チッ、安心院家の長男は落ちこぼれじゃないのかよ」


ふーむ、僕を狙ってるのは間違いなさそうだけど動機がわからん。

安心院家の長男より強いことを証明したいにしても、落ちこぼれとわかってるなら意味が無い。

となれば・・・。


「僕に何か恨みでもあるの?あんた誰」


「その前に俺が誰だかわかるか?」


でーたー!質問を質問で返すやーつー。

お前の頭大丈夫か。

なんて言い返せばまた撃ってくるに違いないからこっちが答えよう。


「知らん!」


「グッ・・・武力クラス3年 軍隊格闘術専攻 柳原 群」


「あー先輩っすか。こりゃ失礼しました」


武力クラス・・・武力クラスの人がどうやって僕をここに連れてきたんだ。

魔力クラスの知り合いにでも頼んだのかな。


「ようやく立場を理解したようだな。

 武力B+の俺に勝てるだなんて思うなよ」


・・・武力B+ねえ。

まあ、B-の僕は人のこと言えないけどさ、自分より格上のAやA-が

いるのによくそんなデカい口叩けるな。


「で、僕に何か恨みでもあるんすか?」


「シャロに近づくな。あいつの優しさにつけ込んで、いい気になってんじゃねーぞ」


はー!はー!近づくな?いい気になるな?

僕より先輩と仲良くしてたり一緒に写真撮って

自慢しまくってるやつたくさんいるのに

な、ん、で、ぼ、く、に、言、う、の???


それに蔵本 時といい先輩絡みで問題起こすやつ多くないか。


「嫌だと言ったら」


「二度とシャロと話せない身体にしてやる」


「・・・はぁ~、意味の無い事を」


「意味が無い?」


「あのさ、僕1人ボコっても他の人が先輩に近づくだけだよ。

 んでまたそいつ拉致して警告してボコるの?」


「だ、だったら何だよ」


わからないか。いや、わかった上でやってる。

本当はただ好きな人と一緒にいたい。

でも、上手くいかず他のやつが仲良くしてるのが妬ましい。


この時、人は目の前の相手を超えようとするのではなく、

蹴落とそうとする。その行為に意味ない。

何故なら、そんなことをしても好きな人は自分に振り向かないからだ。


柳原って人は先ほど僕の質問に返答する際、若干同様していた。

つまり、自分の行為がただの八つ当たりだと理解している。

「だから僕をボコる暇があるなら先輩と仲良くする方法考えろよ」

・・・と言いたいが。

ここでそんな正論言う行為にもまた意味は無い。


正論を言うことは正解ではないのだから。


誰も傷つかない事が正解なら、僕が言うことを聞いて

先輩と距離を置けば解決・・・。

だが断る!先輩は漫画・アニメ好き仲間なんだ。

ぼっちの僕が唯一リア充っぽい事ができる相手でもある。


「よーし、いっちょ戦りますか」


「勝つつもりか。お前は武力B-の落ちこぼれだろ、しかも魔力はD-しかないゴミカス」


「たかが武力B+でずいぶんデカい口叩きますね。

 最悪でもA-になってから言えよ」


「うるせええええええええ!!!」


感情に任せた乱射。武力のステータスが上がらないのも

気にしてたのか。いや~先輩の時といい人の地雷踏むのが

得意なのかも。まあ、あの程度でここまで怒るのはどうかと思うが。


さてさて、正確に当てにくるのと違い

だだ僕がいる方を狙って撃つなんてスキルを使うまでも無い。

・・・僕以外なら!

このまま冷静さを失ったままでいてくれれば勝機はある。

・・・たぶん!


「武力B-の落ちこぼれ、魔力D-のゴミカスの力を見せてやる」


巻物を開き僕の為に一族のみんなと一条が共同で作ってくれた忍者刀。

その刀は極限まで軽く、長脇差し程の丈夫な黒刀。

ある性能に特化しているこの刀は斬るという概念が無い。


幻刀(げんとう) 孤影(こえい)


【逃げ足】を使い銃口から逃げ続ける。

しばらく逃げ続けていると弾切れとな、りリロードの好きが生まれるのを

見逃さず攻撃を仕掛けたいが僕じゃ柳原に届く前にリロードが終わる。

だから・・・。


夏季風物忍具(かきふうぶつにんぐ) 花火玉(はなびだま)


巨大な花火を起こす忍具。

忍術なら火遁を付与し攻撃として使えるが、音と光だけの忍具では陽動でしか使えない。

だが、柳原の意識が一瞬花火のみに向けられた。


「くらえ【不意打ち】攻撃」


【不意打ち】D

相手の意識が自分以外に向けられた時発動可能。

いかなる攻撃も必中させる事ができる。


今使えたのは柳原が冷静さを失っているおかげだけど。

そして、魔力を込めればその性能を持つ特殊な素材で作られた刀。

奏に教わった剣術を元に生み出した僕だけの剣術。


冬季剣術(とうきけんじゅつ) 雪崩斬(なだれぎ)り」


この刀が真価を発揮するのは僕が魔力を込められる1秒間に相手の頭、正確には脳を斬ること。

肉体に直接的なダメージは無い。

だが、対象には地獄を見せる。


「あ、あ、あ、あ、ああああああああああ!」


おーおー。デカい声だ。今頃は雪崩で埋もれて凍え死ぬ映像見てさぞ苦しんでんだろうな。

にしても条件だらけだけど当たれば強力技だ。


四季剣術なんてカッコつけたこと言っても、ただただ刀で魔力増幅して頭に刃通して幻影見せる。

僕程度の魔力じゃ1日で2~3回が限界。


「さて、帰るとしますか」


と、思ったが何やら柳原に異変が起き始めたぞ。


「こ、こ、こ、こここ殺す」


うーわー、肉体が膨張してる。ざっと4mぐらい?

上半身の筋肉がどんどんデカくなって赤い肉団子に見えるのがキモい。

顔も子供が見たら泣き出しそうなグロテスクに変貌してる。

こーわーいー。

それに魔力が高まってるけど魔法薬飲んだ?


「安心院 香織―――――――!!!」


はい、僕が安心院 香織です!

巨大な右腕を高速で振ってくる。


「変わり身の術」


ご存じ変わり身の術。

敵を殴ったと思ったらまさかの大木で本体は違うところにいる術。

僕の魔力じゃ1日1回、そもそも移動距離が

大したことないから速いやつが相手だと・・・。


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


このように次手が早く逆にこっちは回避手段が無いから詰む。

【逃げ足】で右腕から逃げる手もあるにはあるが、発動までの1秒間で攻撃されればそのまま食らうし、落下物など意志がないやつは対象にできない。


右腕が僕の顔面に届くまでの刹那、頭に声が響く。


(さっさと変われ。)


意識が一瞬薄れかけるが、直ぐに戻る。

そして柳原の右腕が宙に舞う。



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