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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第2章:始まったばかりの春
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『第7節:勉強には値引きするという意味も含まれてると最近知りました』


さーて、修行始めますか。

魔力を上げるのは多分無理だから武力を鍛えるとして、実戦修行やりまくるか。

ここは先生に頼もう。


この学園の教師は3人のみ。

武力・知力・魔力それぞれAを持つ教師が各クラスの授業を担当している。


とは言っても生徒は自主的に学んでいるから知力と魔力は、ほとんど教師を必要としない。

じゃあ、武力はと言うと。


「ホッホッホ。ほれ、立たぬか。この程度で死ぬわけないじゃろ」


100を超える生徒が血反吐を吐きながら倒れている。

去年、同じ光景を見た気が・・・何とかレーン先輩なんて知らない。

息1つ切れず、スーツの上からでもわかる鍛えられた肉体を有する白髪オールバックのその人は、一体何歳なのだろうか。


武力クラス教師、(つじ) (ごう)

仏のような顔で地獄の授業を行うことで有名。

先生は無敗という訳ではないが、先生に攻撃を当てられる者は少ない。


心外迎撃拳(しんがいげいげきけん)相手の意識の外から攻撃する拳法。

習得するには合気道並に相手の呼吸に合わせる技術が必要。

先生は【意思疎通】のスキルを持っているため、相手の意識がどこに向いてるかを把握し意識外から攻撃する。


意識を常に集中させなければ隙を一瞬で突かれるため、集中力向上にはうってつけ。


【意思疎通】を使って生徒に自分の教えを的確に伝え、欠点の理解と長所の向上から、先生の教え子は皆著しい成長を遂げる。


奏もよく辻先生に教わってる。僕は、まあ、先輩がね。

あー、今思い出すと本当に面倒くさかった。


とにかく、先生とひたすら戦ってレベル上げしよう。


「先生―、相手してもらえますか?」


「ほ!香織、お主遂にやる気になったか。」


「待ってたんですか。」


「お主の父である彩華も私の教え子。

 息子の香織を育てるのを楽しみにしてたのじゃ」


父が先生の教え子!?そんなこと一言も聞いてない。

っても、この学園に通ってたなら辻先生に教わるのは当然か。

琴刃さんとだけ修行してるイメージだったけど。


「ではかかって来なさい。どれほど動けるか見せてもらおう」


僅かな魔力、未熟な体術、持てる物全てを駆使して挑んだ。

しかし攻撃は全く当たらず、思わぬ所から攻撃が来る。

拳や足の動きが眼で終えても身体が反応できない。


止まることのない先生の攻撃を食らい続け、立つこともできず倒れたところで先生は止まる。


うっわ本当に地獄だわ。

体中殴られては蹴られ殴られては蹴られ、仏の顔した殺人鬼かよ。何人か殺ってんだろ。

これなら先輩に追いかけられた方が100倍マシ。

でも、これぐらいやらないと強くなれないか。


「ま、まだまだ」


「その息や良し」


先生の拳が目の前に来た次の瞬間、僕は意識を失う。

あまりに速い攻撃に全く反応できなかった。

優しい陽射しの心地よさに癒やされていると目が覚める。

痛みで身体が動かせない。

は~弱いな~僕は。強い奴はいいな~。


「目が覚めたか」


「はい、父とは違う強さを感じました」


「ホッホッホ。人の強さなど十人十色、

 違って当然じゃよ」


「違って当然・・・。うちの四季忍術も、本人の感性で違う風景を生み出すのと同じですね」


「香織は戦闘に関する知識はあるが、身体が全然着いてこれてないようじゃの」


「武力B-なもんで。経験積むのが一番ですか」


「私はそうしてきたが、香織は基礎修行を繰り返して身体の使い方を覚えた方が良いの」


「目安とかあります?」


「武力がBまでが目安かのう。しかし、求める強さの定義を明確にする方が先かのう」


「強さの定義?」


「多数を相手取りたい。一対一で必ず勝ちたい。護りたい人に傷を付けたくない。

 お主は戦いの中で、何を求める」


・・・考えたこともなかった。

四季忍術は魔力Aが前提であるため、広範囲かつ威力も高い事から、多対一でもタイマンでも効果を発揮する。

術を極める他には、どのような相手が来ても倒せるように知識を身に着けておく。

僕は、何のため、誰のために強くなりたいのか。


「直ぐには答えが出そうにないので・・・決まったら改めて勝負を申し込みます」


「楽しみに待っとるぞ。

 わからないことがあれば遠慮無く聞きなさい」


頭を下げると辻先生は他の生徒と戦い始める、

時刻は13時を回りお腹も鳴り始めたし昼食にするとしよう。


「兄上―」


聞き慣れた高い声が遠くから聞こえる。

まあ、僕を兄上なんて呼ぶのは世界で1人だけなんだけどね。

楓に奏か、昼食べて来たんだ・・・ん?


「香織くーん」


なーんであの人も来てんの。軍服完全装備じゃん。

まさかだけど今日は真剣勝負しようだなんて言わないよね。

陽射しでより輝く黄金色の髪をした先輩が、笑顔で僕の名前を叫びながら手を振っている。

うっはー可愛いー見てるだけで幸せ。


どう反応したらいいかわからず、とりあえず手を振ろうとしたら、何故か僕の足下に青色の魔方陣が現れる。


「何だこれ」


視界から楓たちが消え、もしかしたら異世界に行けるかも!

などと一瞬でも期待したが、次に視界に映ったのは薄暗い倉庫の中であった。


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