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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第2章:始まったばかりの春
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『第2節:しっかり寝たのに眠いと憂鬱だよね』


「シャロ先輩、おはようございます」


「眠そうっすね」


「む、先輩に何て口利くんだー」


おい話せ、頬を引っ張るな、好きになるだろうが。

いや、もう好きなんだけど、フラれたんだけど!


「し、シャロ先輩。兄上が困ってますので」


「だって挨拶返さないんだもん」


「ふみまへん、おはーっす」


「もう、挨拶はちゃんとしないとだめだよ」


「眠そうに挨拶してきたのにちゃんとですか」


「う・・・おはよう!香織君」


「おざーっす」


「ちゃんと挨拶しろって言ったでしょーが!!」


へ、ヘッドロックは止めて。いくらBカップでも顔の近くはいろいろまずいから。

うわめっちゃ良い匂い、やっぱこのままでいいや。


「そ、それよりシャロ先輩眠そうなのに早起きですね」


「早起きは三文の徳って日本のことわざにあるでしょ。

 だから毎日早起きを心がけてるの」


「で、毎朝僕に電話してくるの止めて欲しいですよ」


「今日はやらなかったでしょ・・・あ」


何だ?え、え、え?何で力強くすんの。


「いつも私が電話してもろくに起きないくせにどうして今日は起きてるの!」


「か、楓が起こしに来たので」


「本当に仲良しね」


「当然ですよ、僕と兄上はなかよ・・・」


今度は楓が黙り込んだけど絶対面倒くさいことになる。


「何故、兄上はぼくに電話してくれなかったのですか?」


「連絡することがないからかな」


「授業とか行事とかいろいろあるでしょ!」


近い、顔がちーかい。あったけどそういうのっていちいち連絡しないだろ。


「もしかして私と踊ったことも話してないの?」


「先輩と踊った?」


ちょちょちょ、胸ぐら掴んで顔近づけないで。あ、先輩の目綺麗。


「去年のダンス大会で一緒に踊ったじゃん!」


「ダンス大会なんて行事にありましたっけ?」


「楓は知らないのか、ここは生徒が提案して投票で決めた行事をやるんだよ」


「公募行事のことですか。他にはどんな案が出たのですか?」


公募行事。

学園側が不定期に開催する行事。

生徒が考案した企画を投票で決める。

決まった後は[企画運営会]とその企画に沿った活動会が率先して準備から当日の進行を担当する。


因みに昨年はダンス大会。

様々なジャンルのダンスで1位を決める審査型と、発表を楽しむ参加型の2つ。

[建築物研究会]と[ダンス研究会が]会場設備を行い、[企画運営会]が当日の運営を担当。

こんな感じで生徒が主体となって行う行事なのだ。


去年は何で参加したのか思い出すと、先輩がクジで決めた男子と踊るとか言って巻き込まれたんだ。ジャンルは競技ダンス他人と息を合わせるなんて、ぼっちにはなかなかの難題を突きつけやがった。


「候補に挙がったのは芸術大会、写真大会、十種競技大会とかいろいろあったよ」


「僕としては演劇大会が良かった」


「え、以外」


「ぼくも以外です。やる方ですか?」


「そりゃあ、参加した方が面白いだろ」


「・・・」


ん~?ポカーンと口開けてるけどそんな変なこと言ってないぞ。

ワサビぶち込んだろか。


「じゃあ、今年は私演劇大会に投票するよ」


「ぼくも投票します」


「ありがとう。まあ、他に面白そうなのがあればそっちに投票して欲しいかな」


「そっか、香織君ってアニメ意外にも好きな物あったんだ」


笑顔なのにどことなく寂しそうな声色で話す先輩。

何か嫌なことでもあったのだろうか?そう感じた僕は直ぐに話題を変えようとしたが。


「よかったら朝食お作りしますよ」


僕同様に空気を察した楓が話題転換をしてくれる。

わかるのは先輩が良くない気持ちでいるということ。

楓のご飯を食べればきっと元気になるだろう。


「本当?じゃあ、せっかくだしお言葉に甘えて」


先輩は楓に和食を注文し僕と一緒に座って待つ。


「綺麗に炊けてる」


昨晩、先輩が用意していた白米の炊け具合に楓は声を漏らす。


「でしょ、料理得意だもん」


小さな笑みを浮かべて話す先輩が一人暮らしをするOLに見える。

時折、本当に同じ高校生かと疑いたくなるほど大人の雰囲気を漂わす先輩が目の前にいると、年上好きであることは関係無く僕は魅了されてしまう。


「何か飲みます?」


「じゃあ、麦茶で」


理由を付けて先輩を視界から外さなければ見つめてるのがバレてしまうと思い、冷蔵庫に向かうが自身の本音に気づく。


やっぱ好きだな。


一昨日フラれたばかりなのにこの想いが薄れることは無かった。

もし先輩に彼氏ができたら、漫画やアニメの話はできなくなるのかな。

・・・違う。先輩と話ができなくなることより、先輩の気持ちが1人の男に向けられて、手をつないで、キスして、セックスして、

恋人との思い出を作り、自分の手が届かなくなることが辛い。


・・・あーあーこんなこと考えるなんてキモいキモい。

そもそもどうして手が届くなんんて思い込みしてんだか。

まあいいや、新しい恋探そ。人生は長いんだし。


「ポジティブに行きますか」


「もしもし」


え?うわ、怪しい薬(的なの)を作ってた人だ。何の用だよ。


「これ、差し上げます」


「透明な液体?」


「ひひ、これを使えば、ひひひひ」


いや、最後まで説明しろや。使うと何が起こるんだよ。

透明な液体が入った小さい瓶をポッケにしまい先輩に麦茶を運ぶ。

料理中の楓をずっと見てるけど手際の良さに注目してるのだろう。


「ありがと、楓君って家でも料理するの?」


「しますね、うちは料理も母親から教え込まれるので」


「じゃあ、香織君もできるんだ」


「最低限ですけどね。家庭料理なら作れますが、凝ったやつは無理です」


「でも料理できる人って素敵だと思うよ」


「あざっす、おっす」


「何その返事、変なの~」


笑って反応してくれるが正直辛い。

これ以上の関係になれないのがわかっている。

という現実がどうも僕の心を苦しませるようだ。

漫画やアニメの話をするだけでも普通に楽しいが、好きな人となるとどうしても欲が出てしまう。


昔の恋を忘れたいなら新しい恋をするしかない。


どこかで聞いた言葉だけどこんな好きな人そういないだろ~。


「できました」


運ばれたのはホクホクでツヤツヤの白米、ほどよい湯気が沸いたネギ入り味噌汁、塩の香ばしさが漂う焼き鮭、副菜には綺麗に盛られたきんぴらゴボウ。


見本的な和食料理だ。


「美味しそう!」


「召し上がれ」


味噌汁を一口飲んだ先輩の頬が緩む。


「お~いし~」


「良かったです」


作ってあげる楓、美味しそうに食べる先輩。

端から見ればカップルに見える2人を前にしてるとこの場を離れたくなる。


「ごちそうさまでした」


片付けを終え、しばらく3人で雑談をしていたら時刻は午前6時を周り、起床した生徒がごぞっと食堂に足を運びに来る。


朝食を早めに済ませた先輩は楓の料理に感化されたからか、みんなに朝食を作ると言いだし男どもが次から次へと列を作り出す。


「シャロ先輩って本当に人気者なんですね」


いや、僕から言わせれば・・・。


「楓君おはよう!」


「エプロンしてる、もしかして料理するの?」


「食べたい食べたい!」


「え、ぼくはもう食べ終わって」


「作ってやれよ」


「はい、兄上が言うなら」


中学の頃から男女問わず中心にいる楓は僕から言わせれば先輩同様人気者だよ。

入学してもうモテモテか。


上に先輩、同級生に奏、下に楓。何で僕の周りは人気者だらけなのかね~。

あ、先輩は周りと言えるほど近い存在かな?


まあ、いいや。



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