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私立英証雌雄学園  作者: 甘味 桃
第1章:始まりの春
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『第9節:魔力A+』


「兄上が心配なのでぼくは校舎に向かいます」


「待って、私が運ぶよ。その方が早いから」


シャロ先輩が手を伸ばした瞬間、ゴーレムの破片が先輩を縛る。


「ぐ、、何これ。動けない」


「どうしてシャロ先輩に」


「楓君には何もないってもしかして私だけ?」


「正解ですよ」


声の方に視線を向けると、白いローブを纏った男が静かに歩みよる。


(とき)君?」


「誰ですか」


蔵本 時(くらもととき) 魔力クラス3年生。

 入学式以降学校で見かけなかったけど何でこんなこと」


「手荒な真似をしてすいません。こうでもしないと話ができないと思いまして」


「話って」


「俺と付き合ってください。そうすれば離してあげます」


「嫌だ、入学式の日にも言ったけどあなたの考え方は嫌い」


「どんな告白されたんですか」


「彼は魔力がA+あるの」


「ええ!A+が2人もいるんですか」


「正確には3人よ。武力がA+の人が同級生にもう1人」


「三大ステータスにA+が1人ずつ。黄金世代ですね」


「そう。学園設立から50年以上にして初めてのこと。

 だから俺はシャロさんと付き合うと思いました。

 魔力A+の俺と知力A+のシャロさん。お似合いだ」


「だからその考えが嫌いなの。そんな外付けの評価じゃなくて、

 ちゃんと人間性の相性で私は付き合いたいの」


「答えは変わりませんか。最後のチャンスですよ」


「絶対変わらない。あなたみたいな人とは付き合わない」


拘束され何をされかも分からない状況下でこの強気。

シャロ先輩は拘束を解こうと抵抗するが、電気は全て岩から地面へと流されるためスーツが機能しない。


先ほどゴーレムを倒せたのはスーツのおかげであって機能しない今、自力で拘束を解けずにいた。


「はぁ、そうですか」


「待っててください。あの人を倒してこの拘束を解く」


A+に真っ向から挑むのは得策ではない。しかし、ぼくに集中させれば拘束が弱まるかも知れない。シャロ先輩ならその隙を見逃すことはない。


「中々の魔力だな。お前なら拘束を解けるだろうが、あまりお勧めはしない。

 何か仕掛けてきた時点で、シャロさんの岩を爆発させるから」


「これ爆弾!?いやー!!」


「落ち着いてください。解除後、シャロ先輩のスーツなら爆破より速く抜け出せます」


「そっか!」


「それもお勧めしない。学園中のゴーレムはシャロさんのDNAを感知したら、自動で拘束するようにプログラムしてるからどこに逃げても無駄だよ」


「だから私だけが縛られたんだ」


「・・・待ってください。学園を去った貴方がシャロ先輩のDNAをどうやって集めたんですか」


「彼女の活動範囲は学園に留まらない。課外活動でシャロさんが戦った後に髪の毛を探したり、

 使い終わったティッシュから採取したり色々して3年かかったね。

 やっと十分な量が手に入ったから作戦を実行できた」


「・・・」


ぼくらは言葉を失った。目の前に真のストーカーがいる恐怖。

魔力A+という才ある者がこのような人間だと絶望する。


「えっと、私はこのままだとどうなるのかしら」


「殺します。俺を否定する人は必要ない」


「ふざけるな!何でも自分の思い通りしようとするなて傲慢過ぎる」


「はいはい、それは弱者の台詞。強者の俺は何でも好きにしていい権利がある」


蔵本は指をパチッと鳴らすと白色の魔方陣が敷かれ、巨大な戦闘機次々とが現れる。

その数は合計5機。


「こ、これだけ巨大な物を幾つも移動させれるなんて」


「時君は、空間系の魔法を使えるの。魔力系の中でも希少なんだよね」


「でも、移動できても操縦できるわけでは」


待てよ。そもそも、空間魔法の使い手がどうしてゴーレムや爆発魔法を使えるんだ。

・・・いや、A+は常識では計れない能力を秘めている。

蔵元の魔法に対して疑問を解決するのはほぼ不可能。

ならば、打破する事のみに集中しよう。


「はぁ・・・舐めないでもらいたい」


戦闘機は機動し始め空高く飛び上がる。

蔵本 時が指を動かすとそれに合わせて華麗な飛行を見せる。


「シャロさんは派手なことが好きだ。

 あの戦闘機に搭載されてるミサイルを、あなたに放つ」


自分の死に方を宣言されても、先ほどとは打って変わってシャロ先輩は冷静だ。

それは、会って間もないぼくへの信頼だった。


「楓君、私を守れるとっておきの忍術とかあるよね?」


「もちろんです。先輩を死なせはしません」


「さっすが!」


蔵本のため息は尽きない。何故目の前の2人は何故希望を抱くのか。

呆れている表情を浮かべている。


「それならミサイルを学園中に放つけど」


「な、なんで!他のみんなは関係無いでしょ」


「どうでもいいんだよ。俺の思い道理にならないシャロさんの顔が、絶望に染まるなら、

 その他のことはどうでもいい」


既に幾つものミサイルが放たれている。いかに学園に強者が揃っているとしても、

魔力で強化したミサイルを簡単には防げない。いかに魔力A武力Aの使い手であったとしても。


「楓くん、私のことはいいからみんなを守って」


反応も返答もできないでいた。ミサイルに込められた魔力から察してしまった。

自分では先輩を守るだけで限界。今から校舎に戻ったのでは間に合わない。

ただ静かに眼前だけのミサイルに集中する。


「楓君、楓君!」


どれだけ叫んでも判断を変える気はない。できないからだ。

己の無力さに悔やむ暇があるなら今助けられる人を助ける。


それが正しい判断だと信じているから。


夏季風物(かきふうぶつ)入道(にゅうどう)・・・」


術を発動しようとした瞬間、強大な魔力を校舎の屋上から感知した。


(なつ)(まい) 海壁(かいへき) 」


青い魔力を帯びた1人の存在が優雅に、そして速く学園の上空全体を舞う。

その軌跡には澄んだ青い魔力が張り巡り、広大な海が現れる。


ミサイルは海の中で勢いを失い爆発。

爆風も海の中に留まり被害が生徒と校舎に及ぶことはなかった。


「な・・・だ、誰が、俺の攻撃を防げるなんてA+のやつじゃない限り絶対に不可能だ!」


「い、今のは」


「楓君もしかして誰がやったか心当たりあるの?」


「はい・・・すいません。ぼく行かないと、あいつが目覚めた」


「ふざけんな!話せ、誰がやった。今からそいつを殺す!」


「おーおー、威勢の良い小僧だのう」


3人の視線が1人の人間に向けられる。

ぼくだけは、敵意を向けながら。

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