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3.お嬢様は土木工事に着手する(2)

青空の下、川原では3人の女が洗濯をしている。いずれもまだ少女といっても良さそうな若い娘で、年頃にふさわしく手を動かす間もおしゃべりは止まない。


確かに絶好の洗濯日和だ。


が、川原に住む女達が洗濯をするという光景は珍しすぎるものだった。しかも朝のこの時間、となるとなお珍しい。


病気の治療などで呼ばれる度に注意しても全く効果が無かったのに、何が起こっているというのだろう。


リクウは思わず道の上から目を凝らし、そして気付いた。娘達の1人のフードから見覚えのある濃茶色の巻き毛がこぼれていることに。


自分が注意を払って何の特徴もない髪型に変えたのだ。もしかしなくても、他人のそら似ということはじゅうぶんに有り得る。しかし遠目に見ただけでなぜか確信してしまうのだ。


(あの娘だ)


だとしたら、絶対に捕まえてひと言注意してやらねば。


そう決意し、リクウは歩き出した。傍目からはそうと分からぬように、しかしかなり急いで。



「いやだ、また外れたわ」


「姉ちゃん登れない?あたしが登ってみようかな」


「よしなよ、木登りなんてガキの頃以来じゃないか」


川原に着くなり聞こえてきたのは娘達の騒ぐ声だった。どうやら洗濯物を干すためのロープを木の枝に張ろうとしているらしい。


「手伝いましょうか?」


声をかけると娘達はいっせいに振り向き、それぞれの反応を見せた。


精霊魔術師(まじないし)さま、お久しぶりです」


「母ちゃんが死んだ時はありがとうございました」


幼げな顔立ちと黒い瞳がよく似た姉妹が口々に挨拶をする。その横で、姉妹より頭1つ分背が高いもう1人の娘は、被っていたフードを取り払った。


「ご機嫌よう、リクウ様。ちょうど良いタイミングだわ。手伝っていただきたいことが山ほどあるの」


濃茶色の巻き毛と瞳。この国では珍しくもない取り合わせが全く無駄に思えるほど、その礼は優雅であり、その笑みは禍々しいほどに妖艶だった。

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