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7.お嬢様はお泊まりをする(2)

「さっきは姉と、なかなか良い感じだったわね」


強い風が容赦なく体温を奪う中、エイレンはニンマリとしてみせた。


「君のことをよろしくお願いされましたよ。よほど心配なんでしょうね」


「わたくしのことなんか心配する前に、ご自分の将来(さき)を心配なさればいいのに」


憮然としてぼやく。姉は側室になっても驚くほど変わっていなかった。おっとりと星を見上げ、妹の世話を焼きたがり、何の努力もせず日々をお喋りと妄想に費やす姿にはつい、イライラしてしまう。


リクウはふっと微笑んだ。


「良いお姉さんじゃないですか。妹思いで」


「それは認めるけれどもね…さて」


エイレンは周囲を見回した。夜が明ける前に王宮から脱出しなければならない。


「わたくし、これから神魔法を使うわ。もう一度、跳ばなくては」


「了解しました」


「ただ問題があるの。実は…詠唱途中で意識落ちそう」


怪我の応急処置は済んでいるが、やはり無理をしすぎたようだ。いくら己を叱咤激励しても、目の前がくらくなっていくのを止められない。


神魔法の詠唱途中で意識が落ちれば、間違いなく暴発してしまうだろう。


「できる限りフォローしますよ」


と、リクウは軽く請け合った。


「ありがとう。もしわたくしの身体が四散しても恨まないから、ご自分の身だけは守ってね」


言い置いて詠唱を始める。


神魔法を使う時、この身は己であって己でない。天から降りる残酷な力に満たされて心は目を閉じ、胸の最奥にある炎だけが眩い光を放ち始める。


定められた文言を詠唱することだけが、それを魔法と呼べる形にまで昇華させる唯一の手段なのだ。


あと少し。


エイレンは己の口が紡ぐ歌を聞きながら目を閉じる。


魔法の力に身体が浮くのを感じた瞬間、意識は闇にのまれた。


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