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6.お嬢様は姉上様と再会する(1)

今宵は星がよく見える。


窓に腰掛けてファーレンは空に目を凝らしていた。夜になれば闇が支配する神殿とは違い、王宮の窓は広く開放的だ。


星の動きから未来を予見する『星読み』は古くは神殿の業であったが、あまりにも当たらないため、今では余興的な扱いとなっている。にも関わらず、ファーレンはこの業が最も好きだった。


星を読んでいると時の流れは悠久でありそれに比して人間はいかに小さな存在であるかがよく分かる。自分の悩みも、取るに足らないちっぽけなものだと思えてくる。


神魔法士として鍛錬が足りないと師から破門されかかった時も、恒例の軍事サバイバル訓練をサボっていて陰口を叩かれた時も、国王の側室の地位が将来約束された『一の巫女』に妹が指名され、憧れていた王子が手の届かない存在になった時も。


ファーレンは星空を見上げて思いを巡らし、自分の悩みを忘れるようにしてきた…そして今も。


春の大祭の夜、突然に姿を消した妹の代理という形で側室の地位が転がり込んできた時は素直に嬉しかった。


妹のことは少し心配ではあったが、あの娘が何の考えもなく逃亡を図るとか、ましてや殺されたりなんて(逆はあっても)絶対に無い。


そう言い切れる以上、子どもの頃に出会って一目惚れした王子に嫁げるのを喜んだって別にかまわないと思ったのだ。


(でも…まだ20日やそこらで、こんなに憂鬱な気分になるなんて)


最初の頃は日を空けず訪れてくれた国王も、このところ急速に姿を見せてくれなくなっていた。来ても数分立ち話をしてさっさと帰ってしまう。


(まだ正妃も決まっていないのになぜこうも避けられるのかしら…わたくしは王だけを愛しているのに)


日中はひたすら退屈であるか、でなければ父が小言を言いにやってくるか、だった。


(口を開けばエイレン、エイレンって…あの娘が空けた穴をわたくしが埋めて差し上げているのも忘れたのかしら)


すうっと微かに吹いた夜風の冷たさにファーレンは身震いし、自分が星を見ていなかったことに気付く。


「ファーレン様、そろそろ窓を閉められては。冷えてはなりませんから」


侍女に声を掛けられ、ファーレンはゆっくりと首を振った。


「いいえ、もう少し待って。もう少しだけ、続けても良いかしら」


侍女が頭を下げて出ていくと、再び、今度は何も考えないようにしながら星空を眺める。嫌なことは早く忘れてしまわなければ、きっといつか、それに縛られて身動きできなくなってしまうのだから。


ふと視界の端で星が動いたような気がした。


(流星?…いえ、違うわ!)


ソレはすごい勢いでどんどんこちらに近づいてくる。というか、落ちてくる。


(ぶつかるっ!)


ファーレンが思わず目をつむった瞬間、物凄い音と共に王宮が震えた。


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