1.お嬢様は家出をする(1)
なろう初投稿です。よろしくお願いします。
5/21……というか実は初めて書いた小説です。本編が長引くに従って、変に意識して上記のように書いたことが悔やまれてきたので正直に白状しなおします。色々勉強させてもらいつつ書いてます、よろしくお願いしますm(_ _)m
月の明るい夜だった。
春が訪れる前の凍て付く空気に凍えた吐息を、柔らかな光が白く浮かび上がらせる。
どこに潜み、隠れていても。
少女はわずかな茂みの陰で息を殺し、追っ手の気配を探っていた。
逃げるのが得意だと思ったことは、ない。
追う方の訓練ならしたことはあるが、逆の立場になることがあるなどほんの数日前まで思ったことも無かったのだ。
追っ手とはどこまで気付くものだったろうか?
この早い心臓の鼓動は離れていても彼らに聞こえるかもしれない。
フードからこぼれ落ちてしまう金の髪の輝きは?
そして何より、この身にまとわりつく血と神魔法のにおいには?
追っ手の兵士達がボンクラであることを少女は祈った。
……どうかこれ以上、罪のない彼らの血を流さないで済みますように!
何を犠牲にしても逃げおおせよう、との決意の前には身勝手で都合の良すぎる願いだったが、そう祈らずにはいられない。
だが。
「巫女様はあちらだ!」「あちらにおられるぞ!」
複数の呼び声と近付く足音が、彼女の願いが虚しかったことを知らせる。
「仕方がない」心の中で呟き、戦闘態勢をとる。
この茂みを探られる、その瞬間に彼らに魔力を叩き付けて逃げよう。
それならば呪文も何も要らない。ただ、セーブが効かずに追っ手の何人かは致命傷を追うだろ。
「仕方ない」2度目に呟いた時には先ほど心を占めていた祈りはすっかり消え去っていた。
今宵は春の大祭。より多くの血を神に捧げるのに相応しい晩である。
ならばこれから行う殺りくこそは、己の神殿の巫女としての最後の仕事に相応しいだろう……
彼女は笑みの形に歪んだ唇をぺろりと舐めて、意識を集中させる。ありったけの魔力を、その身から解放するために。
冷たい感情と力が全身を支配する。
一瞬の後、周囲は轟音と真昼のような閃光に彩られた。
※※※※※
精霊が騒がしい。
リクウは起き上がり剣を片手で引き寄せた。
春の大祭の夜、先程まで祭りの熱気を帯びていた王都も今は寝静まり、精霊も普段の落ち着きを取り戻したところだった。
精霊魔術師の彼が、祭りの期間に活動拠点を移動するのは、凶悪な犯罪が比較的少ないからである。春の大祭では雪深い北都近郊の『冬の家』から王都郊外の『春の家』へ移動するのがならわしなのだ。
今回も先程までは、例年と同じく予定通りだった。森の中の大木の陰で宿をとったところまで100%何事も無かったはずなのだ。
しかし今感じているこの気配は。
(神魔法と血の匂い……どこからだろう)
目をすっと細め、気配の元をたどろうとした瞬間。
その気配が、爆発した。