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バースたちの恋愛日記  作者: 三月 璃夢
第一章 運命はネットの中に
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2-3 ジンとゆず

ジン、なんて我ながらどこにでもいそうなネット名をつけたと思う。

そしてそれが重複不可のゲーム名で残ってたんだから少し驚いた。

私たちがプレイしているゲームは世界で200万DLを誇るが広告は一切出していない。

なんで知ったかは忘れてしまった。

ただいじめの時期にパソコンやスマホを触ることが多かったからその延長で見つけたんだと思っている。

今は高校に通っているけど友達はたくさん居なくていいしぶっちゃけ高卒の資格さえ取れればいい。

他方、ゆずさんは勉強が大変らしくて行きたい大学も決まっているとか、毎日朝8時からテストとか私だった1週間も持たずに高校やめてる。

最近気にかかることと言えばゆずさんのことがもっぱらだ。

好きな人は別にいるのに。

やや高音だけど聴いてて嫌にならないほどの丁度いい高さ、親の愚痴は多いけれど折り合いをつけてやっているようだ。

私とは違う完璧なα。

でも不思議と嫉妬は湧かなかった。

自分の存在を諦めてるからなのかよくわかんない。

VCに行くとゆずさんが既にいた。

「あ、こんにちは。 『狂信者さん』調子はどうです?」

狂信者、あまりにもゆずさんを崇拝してたらこんなあだ名になっていた。

少し苦笑したけど彼も気に入ってるみたいなので気にしてない。

話を聞くとテストの点数が思いの外悪かったらしい。

まあ、私の最高点より良かったけど。

彼が困ってるのはどうにかしたいけど生憎勉強は大の嫌いだ。

さぁ、どうしようか。

「あの、よかったら悩みなら聴きますよ。 私にはそれしかできないので」

口をついて出た言葉。

私はこの声が嫌だ。

無駄に低くて。

いつからかΩに産まれたいと思った。

発情期の間だけは誰かに求めてもらえる、子どもを産める、中性的な容姿に美しい瞳の色。

そんな不純な動機だった。

バカらしい。

どう逆立ちしても変わることはないのに。

黙りこくってた私を不審に思ったのか

「ジンさん、大丈夫ですか?」

生返事を返す。

本当は狂信者なんかじゃなくてもっと近くに居たい。


最近おかしい。

ゆずさんが「mutter」に浮上してない。

ラインに連絡しても返信がないしDMでも既読がつかない。

何があったんだろう。

不安に押しつぶされながら過ごして早1週間。

まるで一年のように感じた。

それほど彼の存在が自分の中で大きくなってるなんてと我ながら苦笑する。

その気持ちも彼の最新のつぶやきを見てかき消された。

「最近浮上してない理由は入院中だからです。 さっきやっと起き上がれるようになったので、心配してくださった方(居ないと思いますが)申し訳ありません」

そんな文面と共に貼られた一枚の写真。

白くて細い手足と点滴の針が刺さった肌。

気がついたらリプを送っていた。

「大丈夫ですか?」

冴えない返事だと嫌悪感が芽生える。

待つこと5分。

返信の早い彼には珍しい。

「あ、ジンさん! ご迷惑おかけしました。 ただの貧血ですよ」

それはない、たかが貧血であれほどの線に覆われるなんて。

「そうなんですね。 辛そうですがもっとお話したいです」

私たちの会話の横で他の方がたくさん心配をしている。

彼は人気者だ。

私とは違う。

彼の虹彩の色。

もしかしたら彼は……。

一瞬過ぎった考えを秒で捨てる。

α選抜にも入る優秀な彼がΩ?

Ωを卑下するつもりはないがそのためには全てを諦めて勉強しないと他のバース性の者が選抜コースに入るのは難しい。

だから、彼はαなのだ。

そう、結論づける。

だから、この感情は押し込めないとならない。

二人共倒れなんて考えたくもない。

ファンクラブにも書き込みがあった。

「こんな状況なんで通話はしばらく無理そうですね」

彼の声が聞けないなんて、少しだけ残念だ。

能天気にそう思った。

次は夜空視点に戻ります

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