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バースたちの恋愛日記  作者: 三月 璃夢
第二章 あなたと出会う前の話
25/25

そのΩ、発情期につき 【取り扱い注意】

今回もいかがわしいシーンあります

彼の飼うインコとコオロギのコンサートで目が覚めた。

横を見ればりっくんは小さく呻いて身をよじっている。

枕元のスマホによれば只今の時刻は六時半を少し回った所。

日付けは発情期三日前。

布団を畳んで軽く伸びをし、いい感じの味を出してる茶箪笥から抑制剤を取り出す。

眠気の残る頭で飲んだ薬は市販品。

いつものは病院の処方箋が必要で色々とドタバタしているうちに貰い損ねたのだ。

まあ、なんとかなるよとまだ生温い布団に再びもぐり込んだ。


三日後。


「あら、おはよう」


隣にりっくんの姿はなく、リビングで夜勤明けのお義母さんと目があった。


「陸なら先に学校いたわよ。なんか用事があるみたいで」


ああ、思い出した。

今日りっくんは日直だ、朝早く行かなければいけないらしい。


「夜空さん、顔赤いけれど大丈夫?」


頭にひんやりとした手が当てられる。

少しぼーっとするけど多分平気だと思う。



「おはよ、井上くん。ふらふらしてるけど保健室とか行かなくていいの?」


席の近い女子が挨拶をしてくれる。

返そう、と思ったらすごい勢いで走ってきたりっくんに腕を掴まれた。


「悪い、借りてく!!」

「……元々君のだよ」


小声でクラスメートの呟く声が聞こえた。




「おい、夜空!!」


りっくんの大声に他意はないと分かっていても肩がびくんと恐怖で震える。


「発情期、抑制剤飲んだのか?」

「市販品なら……」


ため息を一つ吐かれる。


「あのね、夜空。今までかなり強いのばかり飲んで市販品で抑えられるわけないだろ。それになんで発情期なのに学校来たの?」


言えるわけなかった、発情期を経験したことないなんて。

前回までの抑制剤は発情期自体を抑え込むから市販品はただ性感の昂りを軽減する作用しかないなんて知らなかったんだ。

今もりっくんの声が、挙動が、キラキラ見えて鼓動が早くなって意識が快楽に持って行かれそうで、少しだけ、ほんの少しだけ怖い。

僕よりやや大きい手が頭をゆっくり一往復して抱きしめられた。


「安心しろ、大丈夫だ。私はもう夜空から離れる気なんてないんだから」


その言葉に一瞬頭がボーッとなり、下半身に嫌な感触が広がる。


「とりあえず、ね?」


りっくんの服をぎゅっと掴んでコシのない声を捻り出した。


*****


「あ、榎本さん」


廊下で夏絆さんとすれ違う。

一応二つ下だけど大学では同級生なので「先輩」とは呼ばれていない。


「そういえば、昨日までアレだったんですよね、大丈夫でしたか?」

「あー」

「って聞かなくてもなんとなくわかりますよ。やっぱりΩにとっては大事な期間なんだなとは思います。肌艶もいいですし」


そのまま別れて教室に入る。

背中で死んでるりっくんを引きずって席に座らせた。


「うわ、げっそり」


物珍しそうに幸也くんがやってきて驚いている。


「だってさ……意識あるときはずっとシたがるし、食事も私の飲むからいいとか言い出すし、ゴム切れたらすかさずナマでヤろうとするし……疲れた……」


流石に申し訳なくなってりっくんのくれた携帯栄養食を口に突っ込む。

もごもごと飲み込む音がして彼の饒舌が止まる。


「ま、こういうのも悪くなかったけどね」


拗ねた風に呟いてみればさっとりっくんの顔に朱になった。


「おい、ユキ!! ノート見せろ」

「えー、どうせαだし補修ないからいいじゃん」

「ごちゃごちゃうるさい!」


……何言ってんだろ、僕。

事実だけれど、きっと、まだ発情期が抜けてなかった、そうだ。

言い聞かせるように三回頭の中で繰り返した。

閲覧いただき、ありがとうございます

よろしければ評価感想等よろしくお願いします

次回からは800字程度のショートショートになりますので引き続きお読みください

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