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バースたちの恋愛日記  作者: 三月 璃夢
第二章 あなたと出会う前の話
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閑話  ビター・ビター・スイート

バレンタインのお話です

井上夜空こと僕は困っている。


「りっくん甘いもの苦手だしな……」


バスの吊り広告を眺めてため息をついた。

ビビットピンクのド派手な公告に過多にも見える装飾のチョコレート。

世間はバレンタインだ。

愛する夫のためには美味しいものを作ってあげたい。

帰り道に寄ったスーパーでレシピ本とそこに書いてあった材料を買う。


「喜んでくれるかな」


本を開くとお湯でチョコレートを溶かすらしい。

お湯をかければいいのかな。

とりあえずやってみたがとても水っぽくなってしまった。

ネットで調べるとお湯を張った鍋にチョコレートの入った容器を浮かべるのが正しいみたいだ。

それから一時間くらいキッチンで格闘しそれなりにプレゼントできそうな物になった。


バレンタインデー当日。

学校から帰ってきたりっくんは大量のチョコが詰められた紙袋を両手に下げていた。


「私、こんなに食べきれないよ」


困った風に笑う彼にすらときめく僕はなかなか重傷だと思う。

番が居ようが関係なくαはモテる、虎視眈々と彼らの一番の座は狙われているのだ。

それを知るよしもない愛しの番様はぽりぽりと頭を掻いた。


「本命チョコいくつ?」

「この厳ついヤツに惚れる物好きとかいるわけないだろ」

「その『物好き』が目の前にいますけど?」


顔が首筋に近づいて来た。

決まってこうだ、彼は愛を伝えるとき番痕に唇を這わせる。

少しくすぐったくて笑い声が漏れた。


「りっくん、ちょっと待って」

「ああ、わかった」


彼のために作ったクッキーを渡す。


「これ、夜空が?」

「うん!」


このときの僕はもう言いようがないくらいに顔が崩れていただろう。


「ありがとう。愛してるよ」


再び唇が僕らを繋ぐ場所に触れた。

そのまま互いの下がゆっくりと絡まる。

背がやや硬めのマットレスに当たった。


ここから先はほんのり苦いチョコレートたちだけが知っている。

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