1-4 お似合いの二人
数学の授業から教室に戻ると机がぐちゃぐちゃになっていた。
倒れた机から教科書が好き放題に飛び出し、木の床に背もたれが着いた椅子はクラスメートが馬乗りで殴られている。
「あの……何してるの?」と疑問が口を突く前に彼は足早に立ち去った。
このことを先生に相談するために放送室を訪れた。
あったことを説明する。
「それで、榎本。机にそういうことをした人の名前は分かるか?」
ふと思う。僕は彼の名前を知らない。
特徴を言うと先生には伝わったらしい。
「また何かあったら言ってくれ」
会釈と返事をして階段を上がる。
教室の傍にある窓の前が僕とヒナさんの雑談場所だ。
憩いの場と勝手に呼んでいる。
そこに行くとヒナさんは誰かと話していた。
声をかけると自己紹介をしてくれた。
「榎本くんだっけ? 私は木村 愛衣、ヒナとは同じ小学校出身なんだ! よろしくね」
女の子然としていて不思議とヒナさんの横にいるのがしっくりくる。
どこか仲間外れな気がして後ろめたかった。
その日を境に彼女の中での優先順位がなんとなくわかるようになった。
一番上なのはメイさんで自分はピラミッドの真ん中くらいなのだと。
このどす黒い感情の名前を理解するときまであと数カ月。