1-2 いじめ
「痛い!! やめてよ」
茶けた金髪の紗良は紅いシトリンの瞳に涙を溜め叫ぶ。
「うるさいな。Ω(お前ら)はα(俺たち)に使われてればいいんだよ」
「そんなわけないよ!! みんな同じ人間だもん!!」
心底呆れた笑みを浮かべて恵剛は言う。
「Ωが人間? あんなの子どもを産む為の機械だってばぁちゃんが言ってたぞ」
臆病な夜空は諍いの成行きを教室の隅で見守ることしかできない。
紗良の小さな悲鳴。
それをもって今日の放課後になる。
彼女は泣きながら夜空の手を握り帰路に着く。
「最近学校はどう?」
母親ののんきな声が夜空を苛立たせる。
「瞬華ちゃんとさーちゃんと遊んでるよ」
Ωの社会的地位は低い。
きっと教師も親も見て見ぬ振りをする。
こんな世界おかしいのにとわだかまりを抱えながら期待に満ちてたはずの小学校生活はいつのまにか「中学年のお兄さん」と呼ばれるくらいまでの学年になった。
瞬華も紗良も惠剛によるいじめのせいでクラスを分けられた。
そして当たり前のように次のターゲットになったのは夜空だ。
同じように陰湿なそれは夜空の精神を確実に蝕む。
親に相談してもどこ吹く風。
勇気を出して担任に言っても、「間違えてるのは榎本くんだよ、新井くんは正しいわ」と突き放される。
涙なんて出ない。
そして壊れたココロは中学になってもヒビ入り続けた。
またしても同じクラスになった夜空と惠剛。
「 気をつけろよ、あいつΩだから。近づくな、お前らもΩになっちまうぞ」
もう声を大にして叫べるほどの力なんて夜空には残っていなかった。
駆け足感がすごいな……次の話でちゃんと書きます