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バースたちの恋愛日記  作者: 三月 璃夢
第二章 あなたと出会う前の話
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1-1 せいぎかん

しばらく陸人はでてきません

男女共にバレンタインデーを意識し始める頃、浮足立つ街を尻目に超未熟児の男の子が産声を上げた。

緊急帝王切開で生まれたその子は肺が開いておらず、すぐさま投薬が行われる。

優秀な医者たちにより一命を取り留めた彼はアメシストの瞳を星に見立てられ、「夜空」と名付けられた。


βの両親を持ちながら、珍しい瞳の少年のバース性は三歳児と五歳児の検診ではΩだった。

それによりほんの僅かな亀裂が三人の間に入ったことをすやすや寝息を立てながらお包みの中にいる子には到底知りえなかった。


「榎本夜空くん!!」

「はい!!!」

濃いラベンダーのレース地のブラウスに身を包んだやや年の行った女性教師が彼の名を呼びそれに元気よく返事する。

ややツヤ消しなブラウニー色の真新しいランドセルを机の上に置きながらも足はゆらゆらしている。

初めてのクラスメート、教室、先生……目新しいモノ、好奇心旺盛な少年が目を輝かせないはずもなく、席の近い同級生たちに片っ端から話しかけた。

入学式から少し経ったある日彼は出来た最初の友達の瞬華まどかと帰るために校門に向かって走っていた。

着くまであと数歩の所、短い空色の髪が乱暴に捕まえられその薄い腹に一撃が入ろうとしている。

相手は新入生の中でも特に大柄なαだ。

考えるより先に身体が動いていた。

「やめなよ!!」

友達を庇う。

思いっきり急所に蹴りが入った。

うめき声すら出ないほどの激痛。

酸素を求めて口がパクパクと動く。

「見ろよ! Ωがのたうち回ってるぜ!! しかも自ら突っ込んで来てさ、美しい友情だな」

嘲るような声に何かが頬を伝った。

「いいか、こんなことになりたくなかったらまどか(こいつ)に関わるんじゃないぞ」

念押しの口調に屈辱感に胸がいっぱいになる。

それでも夜空が首を縦に降ることはなかった

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