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バースたちの恋愛日記  作者: 三月 璃夢
第一章 運命はネットの中に
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3-4 β撲滅の会

「やっぱりそうだよな……」

見ているのは国営の番に関するサイト。

『番が成立しているΩは首にICタグが内蔵されたアクセサリーをつけること、従わない場合禁錮三ヶ月以上の刑に処す』

学校でαとして過ごしている僕はチョーカーをつけることができない。

もちろん、保護者にも成立したことを話していないので国を通してチョーカー着用義務を免除してもらうことも不可能だ。

テーピングをしてシャツを着ていれば基本バレないだろうし、このままでいいか。

引き出しを開ける。

鍵付きの小箱に仕舞い込んだチョーカーをそっと取り出す。

いつも通り僕以外、誰も居ない部屋の窓から西陽が差し込んでアメジストの中で煌めいた。

薄く削られたそれは中にチップが入ってるように見えないほど美しい。

陸人さんはこの石が僕の瞳と同じ色だと言っていたけど、こんな綺麗に澄み渡っていないと思う。

番が成立したあの日から僕らは親に隠れてこっそりと会っている。

話によると陸人さんは生まれつきΩから発されるフェロモンに対する感受性が弱く、医者からは「運命の番の香りしか感じ取れない」と言われたらしい。

初めて出会った冬にそれを感じたらしいけど軽く受け流してしまったと笑っている。

「あのとき気づいてれば夜空をこんな目に合わせなくて済んだかもなのにね」

そんなことない。

今が幸せだから十分だ。

そう返すと彼は少し頰を朱に染め「バカ!」と言った。

そんなところも好きな僕は彼のことが大好きな末期患者なのかもしれない。



一ヶ月後のデートの日。

彼とは動物園に行く約束をした。

普段乗ってくるバスの前で待っていると陸人さんが降りてくる。

「陸人さん!!」

そのまま胸元に飛び込んだ。

僕より少し大きい背丈で抱きしめ返される。

「ただいま、夜空」

耳元でやや高めの声で囁かれた。

もう、それだけで僕にとったら身体と心を解かされるほどの心地よさだ。

動物園を巡って近くのホテルで休憩をする。

一休みした後、陸人さんと服を着ながら将来の話をする。

彼は動物が好きだからαの特権を生かして大手のペットショップで働くと言っていた。

僕はバース性がなぜあるのか、どこで発生するのかについて大学で研究しているからゆくゆくはその仕事に就きたいと話す。

「は? 『研究してる』? え、だって夜空まだ高校生だよね……」

「αもしくは選抜コースに所属してる人は飛び級みたいな感じで大学試験を受ければ入れるんだよ」

簡単に仕組みを説明した。

彼は「うん、よくわからない」と困った顔をしていたけれど彼なりのプランがあるなら大丈夫だろう。

別れ際、再び抱き合った。

彼の柔らかい匂いを吸い込んで「またね」と笑う。

駅前の電光掲示板では「【再来】β撲滅の会による犯行か?」と不吉なニュースが流れている。

「怖いよねー、β殺しちゃったらうちらもそろそろ死んじゃうよwww」と他人事のようにJKたちが言い合っている。

陸人さんとラインをしながら家に着く。

ついていたテレビでは未だに同じニュースが流れていて「βたちは生きてても益がないんです。 αは優秀だしΩはαを高確率で身籠もる。 なのにそのαもβと交わってしまえば子どもは大体βになってしまう。だからβは死ぬべきなんです」と捕まった人たちが叫んでいた。

我が家ではバース性の話はタブーになっている。

チャンネルを変えずに電源を落とす。

疲れ切った身体でベットに倒れ込んだ。

容疑者たちの声が耳に残ってざわついていたけど段々と思考がまとまらなくなってやがて僕は眠りの世界に落ちていった。

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