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年齢とか関係なくパンチラとか男はつい目が行っちゃうよね

「『淫靡なる宝石』の二つ名を持つ悪魔種の女性型モンスター、グリンドだ」

「ねぇえ? 大人しくしてるからこの枷を外してぇ~、食い込んじゃって痛いのぉ。お・ね・が・い」


 ゲームであればハートマークのエモーションを飛ばしそうな、過剰に媚びたポーズで彼らを出迎えたのは、ゴスロリ服に角と羽の生えた少女だった。

 先日森で捕らえた、ゴスロリ悪魔である。

 その見目麗しい美少女の姿が偽りの姿であり、高ランクの幻惑魔法で隠していることを、仙治は知っている。

 両手と両足はそれぞれ自由な動きを封じるように、鉄棒で出来た枷をつけられていた。

 腰を捻ってシナを作って見せているため、腰痛の方はすっかり治っているようだ。


「バ――」


 バア、と思わず叫びそうになったのをぐっとこらえる仙治。

 グリンドのほうも仙治に気付いたようで、みるみるその顔が紅潮していく。


「その胸当ては……!? ちょっと、なんでここにそれがあるのよっ!?」

「む? 知っているのか?」

「えー……まあ、一度……」

「ふむ、すでにあの胸を堪能したことがあるのか。ならば、あれをもう一度味わえるのだから、貴様としても嬉しいのではないかね?」

「アーソウデスネーウレシイナー」


 仙治としても、冒険者ギルドに引き渡した後、モンスターがどうなるか考えなかったわけではない。

 よもやそれをヒンデルが買い取っていて、しかもそれにもう一度自分が関わらなければいけないとは、夢にも思っていなかった。


「……奪ってほしいギフトっていうのは」

「<吸精Ⅲ>だ。見ての通りの美女、私も味わいたいのだが……それがあるせいで手が出せないのだ。そんな高ランクの吸精をされては、あっというまに干からびてしまう」

「あー……ある意味助かったんだなぁ」

「なにがかね?」

「いやこっちの話。えーと、それくらい高ランクのギフトとなると、奪うのにかかる時間もかなりものだぞ。一日で終わるかどうかわからん」

「そんなに……いや、それでも破格というべきか。よかろう、早速やってくれ」


 黒ずくめが牢を開け、仙治を持って近づいていくと、グリンドは思わず後ずさりする。


「ひぃ、触手いやぁっ!」

(俺も若作りのブリッコババアなんかイヤだよ!)


 だが、またしてもお互いに拒否権は無かった。

 壁際まで追い込まれたグリンドはとうとう逃げられなくなり、胸当てを装備させられる。

 しっかりと留め具までつける頃には、自然に動き出した触手がゴスロリ服越しにグリンドの豊満な胸を撫で回し、揉み始めていた。


「あっ……やあんっ! ふあっ! ……んんんっ、だ、だめぇっ!」

(……うぅ、そんな声出さないでくれ)


 少女の艶のある喘ぎに、ヒンデルが身を乗り出して牢の鉄柵に顔を近付ける。

 老婆の悲鳴とは似ても似つかない声色に、その正体を知っている仙治もつい興奮しそうになってしまう。

 幻惑魔法の効果は見た目や声だけでなく触覚にも働くようで、触手から伝わる胸の感触はしわしわの垂れ乳に触れた時とはまったく異なるものだった。ぶよぶよだった肌はしっとりとしたハリを持ち、触手に押されればその分、弾力を返してくる。


「はぁ……っ! んあっ! や、あああっ!!」

(まずい……何か気を逸らすようなことを考えないと……)


 興奮するまいと努める仙治の意思とは裏腹に、触手の動きが次第に激しくなっていく。幻惑魔法のせいで表面的には美少女を凌辱している感覚なため、理性では拒絶しているのに興奮を抑えきれない、男の悲しい性を表しているかのようだ

 そんな激しい葛藤に苦しむ仙治とは真逆に、素直に自分の煩悩に従って鼻の下を伸ばすヒンデルは、しばらく触手プレイを眺めて愉しんでいたが、一つ咳ばらいをして鉄柵から離れた。


「オホン! で、では、後は任せたぞ」


 黒ずくめをその場に残し、いそいそと牢を後にするヒンデル。その足早な去り際を見た仙治は、この後のことを察する。


(帰って自分の囲っている女にエロイことでもするんだな……くそぅ、羨ましい!)


 仙治としても、この少女の正体さえ知らなければ、喜んでその胸を堪能しているところだったが、脳裏に老婆の顔がチラついてしまい、それは叶わなかった。

 ヒンデルが去った後も黒ずくめはしばらく牢の前に立っていたが、いつまでも続く触手凌辱に耐えきれなくなり、頭を振りながら鉄柵の前を離れて行った。

 仙治からはまったく見えなくなったが、それでも彼は牢の入り口近くの床に腰かけ、すぐに駆けつけられるよう待機している。


 グリンドが胸当てを装備したまま、絶え間なく触手攻めを受け続けること数時間。小窓から差す日の光が無くなり、牢の中はすっかり暗くなっていた。

 黒ずくめの居る場所だけ蝋燭を灯しており、仙治とグリンドのいる牢にはその灯りの端の揺らめきだけが届いていた。


 こんなにも長時間、触手を使い続けたのは初めての事だったが、仙治は疲れなどは感じていなかった。否、精神的には多大な疲労を感じていたのだが、そんなことは無関係に触手は動き続けた。

 途中、水っぽい音が聞こえてきた時はしばらくナンマンダブを唱えることで乗り切ったが、そこでほとんどの精神力を使い果たしてしまった。。

 彼の精神状態はやはりある程度、触手に作用しているようで動きは止まらないながらもかなり大人しいものになっている。


「はぁっ! はぁ……んっはぁっ……!」


 グリンドも刺激にある程度慣れてきたこともあり、息を多少整えられるようになっていた。

 それまで黙って触手攻めを続けていた仙治は、小さな声で呼びかけた。


「……大丈夫か?」

「だいじょっ……んっ……ではない、わねっ」

「その枷、もしかして<怪力>のギフトがあったら壊せるか?」

「こんな麗しっ美少女がっ、そんな、できるとっ!」

「真面目に聞いてるんだ」

「……そうね、出来るとおも、わっ」

「ふむ……」


 彼女の答えが予想通りのものだったことで、仙治は少しだけ悩む。すでに答えは出ているようなものだったが。

 果たして、自分が逃げるのと引き換えに、このグリンドを解放してもいいものかどうか。

 見た目を偽った老婆が巨乳美少女の振りをして男たちを誘惑するなどというのは、酷く重い罪業である。

 自らの正義の心に従うならば、本当なら決して許せないところではある。

 だが、正体さえ気づかなければ男の方もある意味、幸せとも言えるのではないだろうか。


(はなはだ不本意ながら、正直、俺もいまちょっと愉しんでしまっているのが嫌だ……)


 若干落ち込む心に喝を入れ、話を再開する。


「取引をしないか?」

「……聞いてあげっるっ」

「逃げられるように<怪力>を返してやる。その代わり、俺をバスダの町まで運んでくれ」

「途中で、んっ! 捨てられるとは、思わない……ふぁっ! あるいは、別の場所に……ひっ」

「そうなったらなったで仕方ないが、その時は<怪力>はまた奪うしめちゃくちゃ胸を揉みまくってやる」


 本当はそんなことはしたくもないが、一応脅しのつもりで言っておく。


「んんっ……いい、わ。約束して、あげ……る……」

「よし、じゃあやるぞ」


『付与か略奪か

 <give> or <rob>』

(giveだ)

『どのギフトを与えるか選択してください』


「ああああっ! んひっ、い、あんっ!? ふぁああっ!?」


 装備された時からずっと表示したまま放置していたウインドウを操作して、現在所持しているギフトを表示する。同時に、大人しくなっていた触手の動きが急に活発になり、さらに長く伸びて胸をさらに激しく揉み、周辺の肌にまで伸びて行く。

 <怪力>を選択し、付与を行う。

 激しく蠢く触手から小さな針がいくつも飛び出し、グリンドの胸に刺さった。


「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ――っっ!?」


 大きく仰け反ったグリンドが絶叫し、付与が無事に終わった事を告げるウインドウが現れた。

 触手の動きはそこでまた収まるが、装備している限り完全には止まらない。


「はぁっ! ……はぁっ! はぁっ! ……はーっ、ふぅ……」


 グリンドはしばらくそのまま息を整えていたが、やがてぐっと両手に力を籠めると、ばきりと音を立てて、鉄の枷が歪み、留め具がはじけ飛んだ。


「なにごとだ!?」


 黒ずくめが慌てて駆けつけるが、その前に足の枷も強引に引きちぎったグリンドは、鉄柵を思い切り蹴りつける。

 がんっがんっと激し音と共に一発ごとに歪んでいく鉄柵は、六回目で石の床から引き抜かれ、がらんと床に転がった。


「こ、これは……」


 黒ずくめは牢が破壊される様子をただ見ているしか出来なかった。何が起きたのか完全に理解することは難しかったが、枷で封じられていたはずのグリンドが、今はもう鉄の牢くらいでは留められないほどの力を発揮していることだけは確かだった。


「うふふ、ごめんね。ここにいるのも飽きちゃったから、帰ることにするわぁ」

「ま、待てっ……」

「あら、私と勝負する? 力比べ? エッチなことでも良いわよぉ?」


 こんな力を発揮する怪物を相手に正面から挑めるほど、彼は武勇に自信があるわけではなかった。


「くっ……」

「何もしないならぁ、見逃してあげる」


 そのまま横を通り過ぎていくグリンドにも、何も言えず見送ることしかできなかった。


「あ、ちょっと待った。少しそいつと話したいことがあるんだ」

「うん? いいわよぉ」

「俺の名前は仙治、あんたは?」

「……スライだ」

「スライ、もしまた会えた時に、俺が<竜化>を奪えるくらいまでランクアップしてたら、話次第であんたのことを助けてもいいぜ」

「……覚えておく」


 それきり黙ったままの黒ずくめを置いて、グリンドと仙治は地下牢を出る出る。

 狭い階段を昇ると、そこは廃墟と化した小さな砦だった。星明りに照らされた石積みの建物は半分がた崩れており、つる草がそこらじゅうに蔓延っている。


「人間の町はー、こっちね」


 まだ少し荒い息ながら、落ち着いた様子で歩き出すグリンド。

 程なくして、夜のバスダの町が見えてきた。夜の町はほとんど真っ暗だが、周囲を囲む壁にだけ寝ずの番が立って灯りを焚き続けている。

 その灯りが届く少し手前のところで、グリンドが呪文を唱える。すると、彼女の姿が闇に溶けるようにして見えなくなる。

 そのまま町の入り口に立つ番兵に近づいて行っても、彼らはまったく彼女の存在に気付かない。

 横を通り抜ける時にふと何かに気付いたように一人が振り向いたが、


「どうした?」

「いや、なんか香水みたいな良い匂いが……あとちょっとばあちゃんちの軟膏みたいな薬草の匂いがした気がするんだが」

「ははは、なんだお前、故郷が恋しいのか?」


 やはり姿は全く見えていないようで、容易に町の中に入ることが出来た。


「本当に町に連れて来てくれたんだな」

「うふふ、約束は守るわ。それにずっと閉じ込められててお腹も空いちゃったから、ちょっとつまみ食いしていこうかなってぇ」

「……出来れば、人死にとかは出さない方向で頼めないもんか」

「えー? あなたのせいで昂っちゃってるし、今夜はちょっと燃えちゃうかも」

「いやうん、もう好きにしてくれ。俺と関係ないところでなら」


 その後も魔法で人の目を誤魔化しつつ、鍛冶屋に仙治を送り届けたグリンドは夜の町に消えて行った。

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