第四章:霊能者は真占確定の夢を見るか?
ここにひとつの命題がある。皆さんも考えてみてほしい。
霊能者の能力は、処刑先が人狼であったかどうかを知ることである。
さて――では、この霊能者の能力は、果たして、何の役に立つのだろうか?
さあ――どうだろうか?
あなたがどう考えたかを知る術はないが、本章では、非確定霊能者の存在価値を否定することを目的としていることを、ここに記しておく。
霊能者の能力によってもたらされるものを否定することで、霊ロラのメリットを相対的に向上させるという試みである。
冒頭の質問に、多くの方は、真占い師の特定と答えるだろう。
次に多いのは、人狼の特定によるライン推理、だろうか。
もしくは、残狼数の把握による手順構築であるかもしれない。
では、まずは真占い師の特定について、否定していこう。
俗に「悪魔の証明」といわれる言葉がある。ある事象が存在しないことを証明することは不可能、といったような意味である。
霊能者による真占い師の特定は、これに近い。
確定霊能者でさえ「単独の霊視結果で占い師が真であることを証明することはできない」のだ。
意外に思われるかもしれないが、少し考えていただければ、これは直ぐに理解できるはずだ。
狂人による誤爆、または狼による黒囲い。或いは第三陣営による黒判定。
たとえ占い師が狼と判定した先を処刑して、霊視結果が狼であったとしても、これらの可能性は排除できない。
翻って、ある占い師が贋であることの証明は簡単である。黒判定の先が白、或いは白判定の先が黒であれば、それで済む。
つまるところ、霊能者による占い師の真贋判断は、消去法によってのみ判断されるのである。
2名の占い師のうち片方の贋が判明したことで、残りが真占い師となるといった具合にだ。
しかし、これはたとえば3-1陣形であっても、甚だ困難である。
偽占2名の偽を暴かねばならず、それには最低2回の占判定割れ→処刑を必要とするからだ。
2-1であれば1回の判定割れで済むとはいえ、それだけに狼は狩人を狙うか、あるいは直接に占機能の破壊を目指してくる。
そして、占い師の一方が死亡してしまえば、その占判定が正しくとも狂人誤爆の可能性は残るし、違っていれば村人1人を吊った挙句に偽確定した占い師の処分に困ることになる。
付け加えるならば、これらは占い先が統一されている場合の話であって、自由占であることの多いカード人狼では、占い師の特定は更に難しい。
恋陣営の入った東京村標準編成であれば、不可能といってもいい。1COの能力者であっても信用できないからだ。
霊能者が1COであってこれなのだから、2COの際にどうなるかは云うまでもないだろう。
このように真占い師の特定は極めて困難である上に、よしんば占い師を確定させることが叶ったとしても、前章で述べたように、占い師の確定は一定以上の経験を積んだ人狼にとっては、さして大きな脅威ではないのである。
ゆえに、真占い師の特定を目的とした霊能者の保全は、村側の勝利にあまり貢献しない。
次に、ライン推理について否定していこう。
そのプレイヤーの言動として不自然な庇いや不自然な攻撃、考察、投票などによって、繋がり(或いは繋がりを切ろうと偽装した)を見出す推理手法である。
この推理の有効性自体を否定する気はない。
実際、二種類の人種以外には有効なことが多いからだ。
ひとつは、息をするように嘘を吐く人種。
たとえ仲間を庇うような言動をしていても、それが全く本心からのように装うことができるプレイヤーである。
もしかしたならば、自分自身さえも騙しているのかもしれないが、彼らの本心は、純真で心の白い私にはわからない。
もうひとつは、そもそも嘘を吐かない人種。
これは、完全に村側として考察するタイプのプレイヤーである。
彼らの視点には赤窓は存在せず、純粋に表のログだけを読んで発言するため、ラインというものが発生しない。
私はどちらかというとこのタイプ(Web人狼に限る)であるつもりだが、実際、序盤で処刑されることはほとんどない。
カード人狼については、私は嘘が吐けない清い心を持っているので、割と仲間の足を引っ張ることがしばしばある。まあいい。
先に述べたように、この二種類の人種に対する場合を除けば、ライン推理は有効である。
が、哀しむべきことには、熟練した人狼プレイヤーたちは、このいずれかの資質を備えている場合が多い。
よしんば備えていない相手であったとしても、ひとつの問題がある。
この推理は大抵の場合、霊能力によらずしても可能なのである。
なんとなれば、ある個人が狼かどうかという情報は、霊能者より占い師によってもたらされる場合が多い。
そして、霊能者が確定していない場合、占い師の占判定と霊能者の霊判定の情報量は、概ね等価である。
霊判定が占判定の後追いで発生する以上、霊視能力が存在しなくとも、占判定で黒が出た時点でライン推理は可能なのだ。
いや無論、占を経ずに処刑した先が黒であるケースもあるだろう。
そういった場合には確かに有効であろうが、いずれにしても、非確定霊能者の判定を元にした推理には「○○が真の場合」という枕詞が付随することになる。
が、そもそもの話をするならば、黒判定が存在しなくとも、ライン推理は可能である。
というよりも、序盤の推理はそういったものであることが多い。
個々人の背景や嗜好などといった情報から対象の思考をトレースし、そこから外れる言動があれば怪しむ。そういうものだからだ。
つまるところが、ライン推理を行うに当たって、霊能力による黒判定は重要なファクターではないのである。
最後に、残狼数の把握――である。
これについては、ライン推理と似たような理由によって、重要性が落ちる。
占わずに処刑した対象が狼であった場合を除いて、この目的で非確定霊能者を保全する意味は薄い。
また、占機能が破壊されて以後であるが、通常は残る占師と霊能者を処刑するものであるから、狼側2が減るのは確定であり、それまでの占判定次第では狼@1匹が確定するため霊能力の意味はなくなる場合が多々ある。
第三陣営ありの場合には事情が異なってくるが、これについては、飼い狼や村人の人柱、あるいは狼との交渉など多くの対応策が編み出されているため、やはり霊能力による残狼把握にはそこまでの重要性はない。
そも、ハム(妖魔)ならば兎も角、恋陣営ありであれば真霊能者が表に出ているとは限らないのだから。
以上をもって、霊能者の霊視能力それ自体が、村の勝利に貢献する比率が少ないことの主張を終える。
次章では、では何故、初手から霊ローラーなのかを記していく。