第二章:霊ロラに何を求めるのか
これを説明する前に、人狼というゲームにおける三大派閥を説明する必要があるだろう。
無論、この分類は私の独断と偏見によるものだが、一般の感覚と大きくずれるものでもないだろう。
まず第一に、考察派。
各々の発言を精査し、投票結果を睨み、それぞれの意図や裏にあるものを推理して、人狼を探していく派閥である。
これがおそらく、人狼界隈における中心を占める集団であろう。
推理と考察によって、人狼を追い詰めることを至上とし、またそれが有効であると信ずる人々である。
次には、感覚派と呼ばれる人種が挙げられる。
肌感覚で人狼あるいは白と決め打てる相手を探していくようなタイプである。
こちらは考察派ほど多いわけではないが、一定の勢力を占めている派だといえる。
もっとも、理論だてて説明・説得することをあまりしないだけで、おそらくは考察に類することを無意識下で行っているだろう。
そういった意味では、考察派の亜種ともいえる集団になるだろうか。
そして、手順派。
こちらは考察派とは異なり、可能なかぎり、推理を排除したシステマティックな進行を好む派閥である。
というのは、推理は外れることはあるが、手順に外れることはないからだ。
無論、手数にある程度のロスは含むことになるが、一か八かの決め打ちよりも安定した手順を好む人々である。
最終決断は引き伸ばし、猶予と情報を掻き集め、可能であれば客観的な詰みを狙う。
それが手順派の戦術であり、理想だといっても、差し支えはないだろう。
霊ロラとは、このうち、最後の手順派に属する戦術である。
そのためかどうか、基本的に考察派との相性は悪い。
というのは、考察派とは云ってしまえば、「綺麗に勝ちたい」という願望を抱く人種である。
犠牲者はより少なく、より少ない手数でスマートに勝利したい。
手順派にとっての理想が、客観的な詰み手順の実現であるなら、
考察派にとっての理想は、初手からの狼連続処刑によるストレート勝利であるだろう。
であるから、考察派たちは、確実に村側を1人、即ち真霊能者を巻き添えにすることになる霊ロラを好まないのである。
この対立は、決め打ち派とローラー派の対立に置き換えても良いだろう。
占2-霊2となったとき、霊能者をローラーして2手で確実に狼側1を処刑することを選ぶか、外せば負けを承知で決め打つか。
確実に手を進めたい手順派は前者を選び、無駄手を厭い綺麗に勝ちたい決め打ち派は後者を望む。
これは、どちらが正しいというものではない。どのようなプレイスタイルを選ぶかは、最終的には個々の自由だからだ。
しかし、考察派からの反感を承知であえて言ってしまえば、「綺麗に勝ちたい」という欲それ自体が無駄なのである。
そんな欲を切り捨て、たとえどれだけ真に思えようとも霊能者を切り捨て、客観的な詰みという最高勝率を目指す。
詰みでなくとも、手順を突き詰めることによって、僅かでも勝率を上げる。それが、霊ロラに求められるものである。