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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
MoonLight*HoneyMoon
77/88

AM10:30 楓ちゃんの部屋~本社会議室

「……楓ちゃん?」

 楓ちゃんはふうっと目をつむってる。


 ……寝てる。この子、ほんとーに、無防備だよな。


「……和也が必死になるの、判る気がするな……」

 危なっかしいわ、これじゃ。


(それにしても……)

 ……なんで、この子には判ったんだろう。

 俺自身もよく判ってなかったのに。


『心から……好きだっていえる事をして下さい』


 ……誰かに、そう言って欲しかった、のかもしれないな、俺も。


 ……不思議な子だな、楓ちゃんは。

 こっちのこと、見透かされてるような、感じがする。

 

(まあ、あの和也がメロメロになったっていうだけでも、大したもんだけどさ)

 きっと、今みたいに優しい言葉にも惚れたんだろうな。そんな気がした。


 はあ、と熱い息が楓ちゃんの口から漏れた。


 ……多分、これから熱上がってくるよな。

(……仕方ない。応援を頼むか)


 俺は、電話をかけた。

「……もしもし? ああ、俺、晴人だけど。ちょっと、頼みたい事があるんだ」


*** PM12:00 本社会議室


「……素晴らしいプレゼンでしたね、高橋会長代理」

 少し笑いを含んだ声。

 振り返ると……晴人に良く似た背の高い男性が。

「達人伯父さん」

 俺は頭を下げた。

「……グループ企業の面々も満足されていたようだし。君のような後継ぎができて、靖人伯父上も安心だ」

 じーさんは、向こうで役員たちと話をしていた。

 達人伯父が褒めてくれた……ということは、第一段階はクリアしたな。この人は身内だから、と甘く見たりはしない。


 はあ、と伯父がため息をついた。

「晴人も君のように、やる気を出してくれればよいのだがね……」

「晴人……は……」

 今、楓と新プロジェクトを立ち上げようとしてる、そう言おうとした時、着信音が鳴った。

「失礼します」

 スマホを確認する。晴人?


「……もしもし?」 

『……和也? 会議終わっただろ?』

「え? ああ」

 こいつ、終わる時間見越して掛けてきたのか?

『……楓ちゃん、熱出して寝込んでる』

「え!?」

 楓が!?

『……お前、今日大事な仕事があるから知らせるなって。今……』

「……すぐ帰る」

 俺は皆まで聞かずに、電話を切った。

「……申し訳ありません、達人伯父さん。私はこれで失礼します」

「和也?」

 俺は一礼し、じーさんの元へ向かった。


「……和也。これから会食でもと……」

 じーさんの言葉を遮り、頭を下げた。

「申し訳ありません、会長。本日私はこれで帰らせて頂きます」

 周りの役員たちが目を丸くしてる。じーさんの顔つきが変わった。

「……楓さんに、なにかあったのか?」

「……体調を崩して、寝込んだそうです。すぐに帰ります」

 じーさんが頷いた。

「……わかった。お前は今日の責務を十二分に果たしておる。早く楓さんの所に行ってやりなさい」

「ありがとうございます……失礼します」

 俺は一礼して、会議室を足早に出ていった。

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