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PM10:30 上空

 下を見る。炎が円を描くように立ち上ってくる。熱が凄い。黒煙が闇夜に消えていく。

 さっきまでいた家が、完全に炎にのまれてる……。


 私は風に乗って、燃えさかる別荘から離れた。


 がたがたと震える小さな身体。この子……炎、が怖いの……?


『あのガキと共に死ねばいい』

 ……確かに、そう言った。憎しみに満ちた目。あんな人のところに、この子は帰さない。


「ねえ、あなたの事、大切に思ってくれる人はいない?」

 震えながらも、男の子が顔を上げる。

「私があなたを、必ずその人の所へ連れて行ってあげる。だから……」

 ……じっとこちらを見る瞳。

「……その人のことを強く思って」

 ぎゅっと小さな身体を抱きしめた。


 ……やがて、小さくこくん、と頷くと、男の子は目を瞑った。


 意識をこの子に同調させる。集中する。

――男の子の身体が、銀色の光を帯びる。


 ……やがて、月の無い空に、銀色の糸が現れた。男の子から、山手の方に向かって真っ直ぐに伸びる、細い糸。


「この糸を伝っていけば……」

 この子を抱えたまま、私は空を駆けた。


 早く……早く


(夜明けが来る前に……魔力が、制御できなくなる前に……早く……!)


 風を切る。足元に街の明かりがところどころに見える。高速道路の光。頬に触れる夜明け前の空気が冷たい。


 人目に付かないうちに……早く……!


 時々襲ってくる頭痛。私は顔をしかめながら、途切れそうな銀の糸を辿っていった。

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