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デスゲーム居残り組

作者: 上連(重装歩兵/Lv.20)

「とうとう終わってしまう、か」


 昔、小説などのSFで人為的問題を示唆されていたVRMMOだが、技術革新の末、遂に完成し、民間企業によって発売されてしまった。もちろん、様々な自称知識人達の手で散々叩かれはしたが、それらの小説、中にはアニメ化した作品もあり、その世界に憧れる人は星の数ほどいた。政府は世論誘導に失敗し落胆するも、VRMMOの稼働を国内サーバー限定とし、この技術を国宝と認め強引に国有化した。

 しかし、現実は知識人達の語った通りになる。セキュリティ管理主任が謀反を起こし、ゲーム内を独立化し、デスゲームを開催した。これに対し企業は、システム開発主任、すなわちVRシステムを開発した本人が自らゲーム内にログインし、プレイヤーを先導していった。もっとも、彼自身、ゲームを楽しむつもりもあった。

 そうして小さな世界の神となろうとした男と、創世の主とその仲間による戦いが始まり、そして終わった。最高責任者チーフゲームマスター権限によって、チートを封じられた黒幕は、プレイヤー達の手によって呆気なく葬られた。


 デスゲームは終了し、プレイヤー達が現実世界に帰っていく中、アクティブエリア|(敵性NPC発生地帯)から出ようとしないプレイヤーがいた。

「始まりがあれば終わりも来る、ね」

 頭上のゲーム終了の文字を一瞥し、呟く。

「阿呆らし」

 一太刀で臥した龍の腹に乗り、そのプレイヤーは船を漕ぎだした。


 現実世界では上を下への大騒ぎになっていた。未帰還プレイヤーがいたからである。既にゲームサーバーはサポートを終了してしまっており、この不祥事の原因はサポート後の確認漏れだった。このことはすぐにマスコミに嗅ぎつけられ、記者会見へと流れていった。無論、デスゲーム開催によって自称知識人達は勢い付いており、国際的にも世論は反VRMMOに傾いていた。

 この度は、から始まる謝罪文の後、主任は続けた。

「この度の事件を受け、本VRMMOプロジェクトは永久凍結し、このプログラムを完全に消去いたします」

 この宣言に、世論は真っ二つに割れた。

 一方は彼の英断を讃えるもの。いずれ再び現れる技術だとしても、今現在起こりうる悲劇を回避したことを評価した。自称知識人達も多くはこの案に賛成している。

 もう一方はこの技術を公開すべきだというもの。いずれ起こりうる悲劇ならば、多くの人の手によって解決策を講じるべきだという主張だ。国際世論はこちら側だが、技術吸収する気を隠すことすらしないゴリ押しだ。それもやたらと圧力を掛けており、国内世論は反諸外国に傾きを大きくしている。


 記者が手を挙げ質問した。

「ゲーム内に取り残された人はどうするのですか?」

 もっともな意見だが、外国記者の前で言うべきことではないと思い、主任は顔を少し顰めて答える。

「残念ですが、我々の努力ではどうしようもありません。その方には申し訳ありませんが、我々の可能な限り、ご家族へのアフターケアをする所存です」

 再びこちらのサーバーで新たにゲームを公開するならば可能性は微小ながらある、とは言えなかった。実行すれば、どちらにせよ不利益を被る。良くも悪くも、会社に忠実な者だった。また、記者も何人が、どんな人がゲーム内に取り残されているか把握してないらしい、とも感じ、彼とも彼女とも言わなかった。



 サーバーが停止し、再びログアウト出来なくなった世界。

「リメイク、まだかなぁ」

 アニメで見たような建造物を乱立させた街中で独り、プレイヤーは独白する。

「デスゲームが終わっても戻らなければ、ずっとゲームができるなんて楽観し過ぎたかなぁ」

 可能な限り自分を鍛え極めたプレイヤーは、退屈そうに郊外の草原で寝転ぶ。その彼とも彼女とも知られぬ者は気付かない。もう二度と現実には戻れないと。


 既に数年の月日が経ち、自分は既に死んでいるのだと。

私自身、生き残れたらこうするだろうなと。

ゲーム時の生活云々は加害者のお企業様が負担するはずですし、スポンサーとかのコラボアイテムなんかあれば、なんかもう十分じゃないかなって。会社や学校も関係ございませんな世界ですし。そんな世界で、安全圏で十二分にレベルを上げれば、もう何も怖くない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私は原始人並みのアナログ野郎なので、VRMMOはわかりませんが(最近、ソードアートオンラインとかいうアニメを見て勉強中です)……何か怖いですね。そう言えば、全ては精神を病んだ主人公の妄想だっ…
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