ヴァルキュリア・イン・キッチン
「できるもん! 私にだって肉じゃが作れるもん!」
ヴァルキュリー。
そう称される彼女たちの役目は戦士たちの魂の選抜にあるという。ヴァルハラからこの世界に降り立ち、主神オーディンに従い勇猛なる戦士の魂を導く。
という話も今は昔。
戦士などという黴の生えた職業は残念ながら現代社会にはない。したがって、彼女らが導くべき魂も無い。彼女たちは役目を失った。
つまり、ニートだった。
「戦乙女だよ!? ヴァルキュリーだよ!?」
数ヵ月前から俺の家に住み着いた金髪ニート、もといロダはそう言った。
けれど、俺は欠片も信用できない。ここ数ヵ月のロダとの不本意な共同生活により、彼女の家事スキルの無さは痛感していたからだ。いや、金髪美少女が家事スキルを持っていないことなんて我が人生のバイブル(ライトノベル)から学んではいたが。
さておき、独り暮らしの俺の少ない食費を当たりの無い宝くじに賭けることは出来ない。
「作るっ! 私が肉じゃが作るっ!」
ブカブカの青いパジャマを着ていることからも分かる通り寝起きの彼女はいかにもニート、まさしくニート。そんな奴に俺の晩飯を任せられるだろうか?
いや、任せられない!
俺のスーパーハイテク脳みそが出した結論の通りに、俺は黙って首を横に振る。
「えー、ひどいよ! 作るー! 私が作るー!」
その言葉と共にロダの右手が拳を握り始めるのを見て、俺は顔が引きつった。彼女の小さな体躯に潜む怪力を舐めてはいけない。先日、ロダに「貧乳」と言ったら、彼女が壁に大穴を開けたことから俺は学習したのだ。
ニートでも、ヴァルキュリーだった。
「分かった。分かった分かった。とりあえず落ち着こうよ。落ち着こう。……というか拳を握るのを止めろ!」
俺に腹パンする一歩前だったロダを一旦止める。
それが実行されれば肉じゃがではなく肉塊が出来上がっていたことは間違えない。
…………肉じゃが1つで何やってるんだろう、俺。
晩飯の1回くらいロダに作らせてやれば良いじゃないか。彼女だってヴァルキュリーいえど戦“乙女”なんだ。料理くらいさせてあげれば良いだろう。
そもそも彼女がこんなに躍起になっているのだって俺が原因だ。
俺が「かつては名の知れた戦乙女も今は肉じゃがすら作れぬニート。これじゃ、お父さんも泣いてるな」と言ったことが。最も「肉じゃがを作れ」と言う意味ではなく「ヴァルハラに帰れ」と言う意味だが。
作らせてやれよ、俺。
頬を紅潮させ、瞳に涙をためている(拳も握っている)彼女にその一言を呟いた。
「……はぁ。分かった。作ってくれ。肉じゃが」
花が咲いたように彼女の顔に喜色が浮かんだ。
まぁ、これは可愛いと認めざるを得ない……かな。
「うんうんうん! 作るね! 私肉じゃが作るのがんばる! 美味しいの作るから! 残さず食べてね!」
天使のような(実際にはヴァルキュリーだが)笑みを浮かべ、小さく鼻唄を歌った。エプロンを着けながら、彼女は台所へと向かっていったのだった。
~~
「できたぁー☆」
「うん。どれどれ」
パクっ★
「オボロゲェェェェエエエエ!! オェッ! エッグ! まっず! 何コレまっずゲェェェ! ウップウップ! ゲェェェエエエ!!」
あ、ふざけて書いたの分かっちゃいました?
まあ、許してください。




