秘密証書遺言
彼は富豪と言われる人だった。
子供が3人、妻がいる。
彼が一番見たくないのは、家族の不仲であったため、遺言を行うことにした。
だが、内容は誰にも知られたくないと考えた彼は、秘密証書遺言を行うことにした。
弁護士に相談をすると、まずは、遺言書を書いておいてほしいということ。
それは、自筆で書かれたもので、封印されていること。
さらに、封印された後に公証人1人と証人2人の署名がなされているということ。
ここが重要だそうだ。
こうして作成されたものは、遺言書があるという証明にとどまり、内容がどうなっているのかということは、証人も公証人も知ることができない。
だから、秘密だということらしい。
さて、それから半年後。
彼は不慮の事故によって急に亡くなった。
葬式が終わり、弁護士が遺族の前に立って白い封筒を見せる。
そこには、証人の名前と住所が2つ、公証人の名前と住所が1つ書かれている。
「これは、故人が私に遺言を託したものです。彼がなくなった今、この場において、開封したいと思います。なお、検認は、すでに済ませております」
弁護士がすでに封が切られている封筒から、手紙を取り出す。
「ひとつ、妻には全財産を金銭に直した価値において半分を与える。ふたつ、子らには残りの財産を平等に与える。みっつ、遺言執行人として、私を指名する。以上です」
なお、署名捺印がなされていることや、本人が自筆したものであるというのは、検認の時点ですでに把握済みであるため、ここでは省いている。
遺族は、これらの遺言を聞いて、そのまま遺言執行人の弁護士に従う形で、遺言内容が執行された。