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ダンデライオンの花嫁  作者: 千鵺
こんにちは異世界
17/24

しょあくの根源

泣き叫んで、しばらく後。




「・・・そもそも、事の起こりはいつからですか?

 何でわざわざ他所様のとこの人間掻っ攫ってきてしかもそれを王様の花嫁に、なんてことなっちゃったんですか。」


ぐったり、アーノルドに凭れつつファリースへと問いかけた。

アーノルドが緩く腕で囲ってくれているおかげで安心感はんぱない。

しかし泣いたおかげで気力も体力ごっそり持って行かれましたよ。

どうしてくれるこの腹黒鬼畜ドS。


「現在に至るまで、世界が出来て800有余年、初代が建国して500年が経っています。

 神は世界を創世して後、自分の為したことに満足し、一旦この世界を離れました。

 その間、何処で何をしていたのかは定かではありません。

 しかししばらく時間を置いて帰ってきた神は、異様に人間に固執するようになっていたとか。

 おまけに他の世界でお気に入りを見つけて一緒に連れてきちゃったらしいのです」


「・・・いやいやいや」


それ誘拐っていうんだよ悪いことなんだよ。

誰か神様に教えたげて。

あとなんかだんだんファリースの口調が崩れてきてる気がする。

連れてきちゃったって。

神官長しっかりして。


「お気に入りとは言え相手は人の子。

 側に置いておきたくても、神の側で生きるには弱く、儚いものです。

 神はその事実に悲しみましたが、それでもその人間を愛しておられた。

 幸せになってほしいと考え、考慮に考慮を重ねた末、この国に目を付けたのです」


「・・どうして?」


「ここは神の作った始まりの人間が興した国。

 それ故、もともと思い入れも深かったのでしょうね。

 お気に入り同士、そこに生きる人間と異世界の人間をくっつけてしまえば良いと」


そうすれば皆幸せ~ってか。

いやいや、ないですよ!


「ちょい。まて。なんで神様なのにそんな短絡思考なの!」


「まぁそういう神様なんですよ。

 子ども心が未だにおありといいますか」


「神様迷惑極まりない!ていうかそれが最初の出来ごと!?

 そんで何回も繰り返してるとかもーなに!なんなのっ」


こども心なんて捨ててしまえ!


思わず頭を抱えてしまった。

異世界の人間連れてきちゃった後に困って自分とこの王様にそれを押しつける神様て。

仮に、当時の王様が未婚な人だったならいいかもしれないが。

いやだめだけど。

既婚よりましってだけだ。


「・・始まりの花嫁を娶った王様は、まだ奥さんいなかったの?」


「いえ、正妃は既におりましたし、子どもも2人いらしたそうですよ」


つい気になって問うてしまった自分を勢いつけて殴り飛ばしたい。

いるじゃん!

しかも子持じゃん!

っつーか、


「一夫多妻制なのここ!」


「子を残すのは王の仕事の内です。

 妾妃を娶らず正妃だけを傍に置いた王も中には居りますが。

 それ以外のどの時代も、後宮には大体3人から4人はいらっしゃいますよ」


「悪夢だ・・・」


そんなとこなのに、わざわざ花嫁をぶっこんだわけですか。

酷すぎる。


「花嫁は、嫌がらなかったの?」


「そうですね、まぁ半々だったと言われておりますよ。

 突然何も知らずに連れてこられた方と、事情を全て知っていた方の二通りだったとか。

 しかし、今までの花嫁たちは皆、最終的に折れて大人しく王へ嫁いだそうです。

 まぁ基本的に花嫁たちは皆から大事にされますし、妃同士の確執も無縁ですから。

 そこさえ目を瞑れば、幸せにはなれるでしょう」


「・・どゆこと?」


正妃と妾妃が居るような世界では、王の寵愛を巡って泥沼の争いがあるのは当たり前だと思っていた。

そもそも、愛する人を誰かと共有出来るような懐の深い人間など稀と言っていい。

皆、独占欲というものを持っているものなのだから。

そんな私は一夫多妻制とか我慢出来ない性質です。

心狭いとか言われたって良いさ。ふんだ。


「花嫁たちは神の加護のもと、この世界の人間にはほとんど嫌われないようになっているそうです」


「・・・・・・・加護・・・」


「連れて来られてからは、様々な加護が地味についているのですよ。

 それ故か、花嫁たちは時に神の愛娘と呼ばれます」


そのまんまです。

世界最強の親ばかがついてるから嫌われないってすごいね。

でも地味とか。

おい神官。


「・・・・・んで、キッカケはわかりました。

 なんでそれが常習化しちゃってるんですか」


はい、次の質問。

大事よねここ。


「神はこの国に花嫁が受け入れられることを殊のほか喜びました。

 歴代の王達も、神の加護付きの娘を王家に取り入れた方が益が多いと考えた。

 双方の利害が一致したわけですね」


・・・・・。


「・・・・・つまり?」


あぁ、この先を聞きたくない。

これの予想が当たってたら、わたしは憤死出来る気がする。


「えぇ、つまり、まぁぶっちゃけますと、調子に乗っちゃったわけです」


「砕け過ぎです!

 口調くらい一貫させろ!」


いらっと来てうっかりどうでも良い突っ込みをしてしまった。

そんなことどうでもいいのに。

そうじゃない、大事なのは、


「調子に乗っちゃって?

 神様は異世界から人間を誘拐をすることを止めず?

 王族が黙ってそれを受け入れ続けた結果?

 ・・・・それが慣例化しちゃったって、こと?ねぇ、そゆこと?」


思わず、地を這うような低い声が出た。

いつの間にか俯いてしまった顔を上げられないまま、手を強く握る。

落ち着けわたし。

ここで怒ってもどうしようもない。

しっかりしろ。


「まぁ、言ってしまえばそういうことですねぇ」


残念でなりませんよ、えぇ全く。


あえて空気を読まないにこやかな声が頭上から降ってくる。

ぷちり、頭のどこかで紐が切れるような音が聞こえた気がした。



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