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ダンデライオンの花嫁  作者: 千鵺
こんにちは異世界
13/24

いかんの意

中途半端に途切れていたので、3行程追記しました。

申し訳ありません(8/10)

白いやわらかな丸パンに、サラダと温かいきのこのとろっとしたスープ。



それらをゆっくりと時間をかけながら咀嚼して、胃に入れる。

お腹は空いていなかったが、あまり胃に負担にならない量だったのが幸いだった。

味付け自体は塩だけのシンプルなものだったが、出汁の旨味が出ていて思わずおかわりしたくなった。


全てを平らげたあと出されたお茶を飲みながら、ほう、と溜息を吐く。


「胃の調子はおかしくないですか?」


「?いいえ、美味しかったです、ごちそうさまでした」


それらの一部始終を黙って見守っていたファリースが声をかける。

アキは不思議そうにファリースを見やったあと、ぺこりと頭を下げた。

それを見たファリースが、ほっとしたように笑う。

その反応に、尚もアキが不思議そうに首を傾げると、苦笑して疑問に答えてくれた。


「アキ様はこちらについてから、3日間眠り続けておられたのですよ」


どうやら大丈夫そうで安心致しました。


「へっ」


今なんと。


アキが驚いて固まると、ファリースは困った顔で微笑みながら、アーノルドをちらりと見た。

その見られたアーノルドは我関せずといった表情を崩さなかったが、ファリースが尚も強請るとアキのほうへと視線を寄こして、重い口を開いた。


「・・・お前が眠ってから1日程でここへ着いた。

 それでも眼を覚まさなかったのでベッドへ寝かせたのだが、呼びかけても起きなかった」


「はぁ・・・」


つまり、移動時を含めると実際は4日ばかり眠り続けていたらしい。

起きたときに倦怠感も身体の不調も見受けられなかったので、アキにとっては寝耳に水だ。

来た早々に心配をかけてしまったようで、申し訳なくなる。


「あの、すみませんでした」


ぺこりと頭を下げる。

迷惑をかけてしまったときは、ごめんなさいだ。

いくら理不尽な状況に不満があろうとも、彼らに対して迷惑をかけたことに変わりはない。

その辺は、アキは潔いところがあった。


「いえ、アキ様が謝るようなことはございません。

 突然の異世界渡りに、状況が状況ですから、心労が溜まっていたのでしょう。

 それに先程も申し上げましたが、アキ様の体は今ゆっくりこちらに順応しようとしているのです。

 幼い身故、その分眠りを必要としていたのでしょう」


幼い・・・うん。


ファリースの言葉は染入るようにアキの中へはいってきたが、最後の一言にちょっと思考が固まった。



本当は高校2年生なんです。


もう17歳になってるんです。


今何故か7歳くらいにしか見えませんが、もう3年もすれば成人だったんです。


ああんもうどう表わしたらいいのこのもどかしさ!



にっこり微笑まれて、アキはひきつりながら笑顔を返した。

本当のことを言ったところで信じてもらえるのかわからない。

本人であるアキですら、信じ難いくらいなのに。

内心で葛藤するアキを前に、ファリースがにこやかに告げた。



「さて、それではアキ様は少しお休み下さい。

 また後程参りますから、ご説明はその時に致します」


「あ、はい」


慌ててアキが頷くのを確認して、今度はアーノルドへ向き直る。

直立不動の黒い人の名を確認するように一度呼んだ。


「アーノルド?」


「ここに居る」


「わかりました」


「えっ」


しょうがないですね、と何故か嬉しそう呟き、ファリースは止める間もなく部屋を出て行ってしまった。




わかりましたじゃないでしょおおおぉ!


アキはそれを為す術もなく見送るも、胸中でファリースを詰るのを忘れない。

何故ここに黒い人を残す。

何もすることはないでしょーよ!


ちらり、アキがアーノルドを見上げると、アーノルドもアキを見下ろしてきた。


「えっとー・・・・」




沈 黙 が 痛 い。






アキは途方に暮れ、困った顔でアーノルドを見上げることしかできなかった。

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