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20.お金を手に入れることは。実に大変




「売れないなぁ……」

「そーねー……。ちょっと私が際どい格好して客引きしよっか? ユハナス商団長?」


 僕らは、ルーニンさんの指導で作った、農作物の袋の山を後ろにして。市場の一角を借りて、売りさばいていたんだけど……。

 とにかく、売れない。本当に売れない。だいたいなんで、みんな見向きもしないんだ?


「……そうだなぁ、ルーニンさん流に、試食を出してみよう。マティアさん、売り子やってくれる?」

「いいわよー。こんなこともあろうかと、露出度高い衣装持ってきたんだー」


 そういって、市場のトイレに向かうマティアさん。

 ものの5分ほどで出てきたときには、何というか。

 辛うじてランジェリーに見えないくらいの露出度の、黒い衣装に身を包んでいた。


「……マティアさん。その格好はさすがに……。恥ずかしくない?」


 僕がそう聞くと、マティアさんはケラケラ笑って言う。


「娼婦のお仕事やってたから。別にどうってことないわよこれくらい」


 そういって、僕と一緒に麦ご飯を炊いたり、サツマイモを焼いたり、インゲン豆をゆでたりし始める。コンロや鍋は、市場で借りられるんだ。そして、試食がある程度揃ったら。

 マティアさんは客引きを始めた。


「いらっしゃーぃん♡ おにーさーん、おじさまぁー♡ 美味しいお野菜あるわよぉ? これ食べたら、ミネラルビタミンばっちりで、彼女や奥さんが夜のお勤めの時に喜んじゃうかもぉ~♡」


 なんて品のない事を言うんだ、マティアさんは。泣きそうになってきた。野菜卸の仕事で、こんな色気を振りまいても。お客さんなんて集まるわけないのに。


 集まるわけないのにねぇ……。

 

 でもさ、集まったんだよ、これが!!


「これ、旨いな。おねーちゃん、インゲン豆10kg袋で5袋くれ!!」


 とか。


「この米も麦も。いい味するな!! 十分商用に耐える。ウチの店で出してみるかな? 10kg袋で麦と米3袋ずつ買おう」


 とか。


「ウチは、石焼き芋屋なんだけどさ。このサツマイモ、これだけ糖度が高いと、石焼きにしたら蜜がたっぷり出るに違いない。そこの袋、全部くれよ」


 とかとかとか!!

 急に忙しくなってきて、接客のマティアさんはお客さんを引き付けていてくれているので、僕はある意味必死になって商品の受け渡しと会計をしていた。


 一日が終わって……。


「えっへっへ♡ どうだユハナス商船長!! 色気は無敵なんだよー!!」


 ほとんどの商品が売り切れて、客引きと売り子の仕事に疲れたのか、市場のベンチに座って麦茶を飲みながらそう言う、マティアさん。僕も実に疲れたので、売れ残ったサツマイモの焼いたものを齧って、糖分補給。甘いなホントにこれ。


「とにかくだけど、売れ切ってよかった。もうほとんど残ってないよ。これなら、この惑星に泊まる必要もないから、イデスちゃんの船まで帰ろう」


 僕がそう言うと、マティアさんは。急に真面目な顔をして言った。


「あのさぁ……。ユハナス商団長?」


 なんだろうか? 少々切なそうな表情にも見える。


「えっと……。なに? マティアさん?」


 僕は、なんだかそのマティアさんの表情につられて。ちょっと胸がドキドキし始めた。


「なに? じゃないでしょ? 今夜はホテルに泊まるって。イデスちゃんに言ってきたんだから。ホテル泊まろうよ」

「えーと……。なんでさ?」


 僕は赤面しながらも。何か獲物を捕まえようとしているかのような、マティアさんの言葉をそらして、なんとか逃げようともがく。


「ふん……。所詮ヘタレ童貞かぁ。もういいわ。私だってそんなに安い値段、自分に付けないし。こんな純粋好感情で女の子が誘ってるのに逃げるってさぁ。あんた、後悔しても知らないわよー? あはははは」


 ようやく笑って、僕に対する狙いを解いてくれたみたいなマティアさん。いや、実際の所。

 ヘタレ童貞と呼ばれようが何だろうが、マティアさんがいかに可愛くて色気があって魅力的でも。

 何か僕は怖さと、コレチガウヨ感が襲って来て、ホテルに二人っきりで泊まるのは不味いだろうと思ったんだ。


「売上金、結構行ったね。でも、これだけで一年分の収入と考えると……。だいぶ経済のやりくり的に苦しい。みんなにお給料も払いたいしさ」


 僕がそう言うと、マティアさんも頷く。

 夜になってきたので、気温が下がってきた夜の街を、二人で歩いて宇宙港に向かいながら、話し合う。


「もう一つ。何か普段の仕事が必要になると思うわ。農業の方は、人手が多く要る時以外は、ルーニンさんに任せておけば問題はないと思うし」


 うん。それはそうだ。今日の市場での野菜穀類の好評っぷりを見るに、ルーニンさんの農業の腕はかなりなものだしね。


「僕らの小惑星、F.L.Stには、水と塩と土。それに農園がある。次にやるとなったら……。そっか、食事の施設だね。外食店をやろう」

「宇宙外食店かぁ……。だったら、大型宇宙船に依頼して、私たちのF.L.St小惑星を、宇宙街道沿いに引っ張ってもらって移動しないと。今ある辺鄙な宙域では、お客さんは捕まらないし」


 うん。そこら辺を考えられるマティアさんは、ただ色っぽいだけの元娼婦って括りで済ませられる女の子じゃない。

 そこら辺が分かってきたので、僕はもう少しマティアさんに僕らの商団での発言をしてもらおうかな、とか思い始めたんだ。


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