表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/123

85.招かれざる客と予期せぬ衝突

グレイパレスからの一件から数日経った、BAR『プラチナ』。

今夜も誰かの欲望や巨額の金が渦巻くこの街で、

バーテンダーのアリエルがいつも通りグラスを磨いていると、一人の客が店の扉を開けた。

カランカラン!

扉のカウベルが鳴ると、ぶっきらぼうにアリエルが「いらっしゃい」と言うと、扉を開けたのはイーグルだった。

イーグルはカウンターに座ると、咥えていたタバコに火をつけて一言「バーボン、ロックで」と言った。

アリエルはため息を付きつつもグラスにバーボンを注ぎ、イーグルの前に差し出す。紫煙が店内をゆっくりと漂う。

「グレイパレスのやつらは何か動きはあったか?」

イーグルがアリエルに声を掛けると、アリエルは首を横に振り答えた。

「いや……、怖いくらいに何もねぇな。一旦別な場所へ行くのも検討すべきかもな。」

その時、奥の部屋の扉が開きトリトスが顔を出した。

「グレイパレスの魔術師共も、我の痕跡は追えまい。しかし、異界の者が協力しているならあるいは……。」

トリトスはバーカウンターにグラスを置き、水を注いだ。

暫くは和やかなJAZZが流れた店内に、カウベルが鳴り響いた。

カランカラン。

「いらっしゃい。」アリエルが言葉を向けた先に居たのはローズだった。

「皆、シケたツラしてるわね。」

ローズはそう言うとカウンター席に座る。

「星渡の古書の件で派手に動きすぎたからな……。」

イーグルはそう呟き、バーボンを飲み干した。

「その魔術師の件で依頼人が来てるわ。」

ローズはそう言うと、店の扉を開けた。

扉の先には黒いハットを深く被り、黒いローブに胸元には銀の十字架をぶら下げていた。

「彼はバンパイアハンターよ。どうやら今回の魔術師達はバンパイアらしいわ。」

ハンターはカウンターに近づくと同時に、ローブの中から銃を取り出しトリトスに向けた。

「お前、人間じゃないな?バンパイアを狩るのに協力してもらおうと思ったが……、まさか異界の住人がいるとはな。」

静かなジャズが流れるBAR【プラチナ】に、ローズが連れてきた招かれざる客によって、張り詰めていた空気が一気に爆発した。

ローズは軽く咳払いをして、その場をなだめようとした。「落ち着いて。彼はBARの協力者よ。」

しかし、バンパイアハンターはローズの言葉を無視し、銃口を微動だにせずトリトスに向けたまま、冷たい声で続けた。

「異界の住人。魔術師どもと組んでいる可能性もある。俺はバンパイアを狩りに来た。

このBARが奴らの隠れ蓑なら、全員まとめて消す。」

トリトスは、銃口を向けられてもなお、表情一つ変えなかった。

彼は静かにカウンターの上のグラスを手に取ると、ゆっくりと水を一口飲んだ。

「人間よ。その程度の粗末な武器で我を脅かせるとでも思っているのか? 我がもしお前の敵であれば、その引き金を引く暇もなく、お前は別の次元で塵と化している。」

その超然とした態度と、トリトスから漏れ出るかすかな魔力に、ハンターの銃を握る手がわずかに震えた。

カウンターの奥でグラスを磨いていたアリエルが、静かに口を開いた。

「ハンター。BAR【プラチナ】は、依頼人以外の無用な戦闘を好まない。貴様の依頼は受けよう。

しかし、俺たちのメンバーに銃を向けるなら、ここで報酬の清算は不可能となる。その銃を下げろ。」

アリエルは、その威圧的な体躯からくる静かな迫力で、BARという「砦」のルールを突きつけた。

イーグルは、トリトスとハンターの間に紫煙を吐き出すように立ち上がった。

彼のコートの裏に仕込まれた装備が、僅かに擦れる音がする。

「全く、悪魔に魔術師。遂にはバンパイアってか?バンパイアハンターさんよ。俺たちは金で動くプロだ。トリトスは魔王だが、今は酒代のツケを払う義理堅い協力者に過ぎない。

グレイパレスの件のケツを拭きたいなら、報酬を提示しろ。異界の存在を狩るなんてのは、命懸けの仕事だ。バーボン代は高くつくぜ。」

イーグルの言葉は、目の前の衝突を即座に「仕事」へと切り替えるためのトリガーだった。

彼はハンターの目を見て、金銭と命の価値を冷静に秤にかける。

ローズは静かに、アリエルが磨いたグラスに氷を入れ、カウンターに滑らせた。

「マスター、バーボン。このハンターさんの報酬が確定するまで、一杯だけね。

それとハンターさん、グレイパレスはただのバンパイアじゃ済まないわ。彼らは『星渡の古書』に関わっている。命懸けの依頼になることは、覚悟しておいた方がいいわ。」

ハンターはしばしの沈黙の後、ゆっくりと銃口を下げた。だが、その目はトリトスから一切離れない。

「…報酬は銀の十字架に誓って保証する。奴らの隠れ家と、奴らが企む『システム掌握』を阻止する手助けをしてもらおう。だが、貴様—」

彼はトリトスを指差し、断言した。

「貴様は、信用しない。」

トリトスは水を飲み干し、静かに答えた。

「信用されなくとも構わぬ。我の関心はこの世界の安寧と知識の保持にある。

お前の狭量な正義に付き合う気はない。しかし、この街の平和を乱す者と、我の協力者に銃を向ける者は、等しく『ツケ』を払ってもらう。」

新たな依頼人と、BAR【プラチナ】のメンバーたちの間に、不協和音を奏でるような緊張が走った。

グレイパレスとの戦いは、「バンパイア狩り」という形で、さらに複雑な局面を迎えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ