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82.トリトスの休日:魔力の回復と、静かなる計算

イーグルが歓楽街へと飛び出し、ローズも店を出た後、BAR『プラチナ』にはようやく静寂が戻った。

トリトスは、消耗した魔力を回復させるため、奥の自室へと向かった。

人間の姿に戻った彼の体は、先ほどの魔王の咆哮ロア・オブ・オーバーロードの反動で鉛のように重い。

グレイパレスの図書館で次元操作の魔術を用いた代償は大きく、体内の魔力核はほとんど空の状態だった。

トリトスは自室の床に座り込み、目を閉じた。

彼の周りには、彼が編纂した複雑な魔力吸収の魔術円が、床の板一枚一枚に微細な魔力で刻まれている。

彼が目を閉じると、BAR『プラチナ』がある街ブラックボックスの「混沌」のエネルギー、そして地球の奥底から立ち上る微弱な魔力の流れが、彼の体へと吸い込まれ始めた。

魔力の回復は、彼の元魔王としての本質であり、最も重要なルーティンだ。

だが、今回はただの回復ではなかった。彼の精神は、先の任務で直面した『星渡の古書』の力、そして組織の冷徹な判断について深く考察していた。

「組織の目的は、古書の回収のみ。我の命は『捨て駒』か……」

彼は静かに息を吐いた。命の危険を冒すのは慣れているが、イーグルに「貴様の鉛玉は効きが悪い」と告げ、彼を逃がした瞬間、トリトスは自身の魔王としての存在価値を組織から試されていると感じていた。

そして、結果的に彼は、人間たちが築いた科学と魔術の二重の檻を、自らの力で打ち破ることに成功した。


数時間が経過し、彼の魔力核に再び力が満ちてきた頃、トリトスは自室の壁に貼られたブラックボックスとグレイパレスの簡易地図に視線を向けた。

彼の緑色の瞳は、壁の地図を立体的に捉え、グレイパレスから放たれた微かな魔力の波紋を追っていた。

それは、彼が次元操作を用いたことで生じた、「魔王の痕跡」だった。

「図書館の魔術師は、我の魔王の血と次元操作の術を知っている。そして、イーグルが協力者だと知っている可能性が高い…」

彼は、あのローブの魔術師たちが、古書の回収失敗の報復として、必ずBAR『プラチナ』を突き止めようと動くと予測した。

BAR【プラチナ】は、知識を求める魔術師たちにとって、『星渡の古書』を奪還するための唯一の手がかりとなるからだ。

彼の静かな休日は、次の戦いへの戦略的な準備の時間へと変わっていた。

「イーグルよ、貴様はいつも金と酒のために命を懸けると言うが、我は『世界の安寧』という、我の血に刻まれた最も重い『ツケ』のために動く。

そして、その安寧には、このBARと貴様の生存が、何よりも重要だ。」

トリトスは地図から視線を外し、再び目を閉じた。彼の体は完全に回復したが、彼の心は休まることなく、来るべき魔術師たちの追撃に備え、静かに計算を続けていた。

これが、元異界の魔王であるトリトスの、BAR【プラチナ】での「休日」の過ごし方だった。

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