表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/123

80.4人の休日

開店前のBAR『プラチナ』。

アリエルが奥の部屋からのそのそと出てきてバーカウンターにグラスを置き、水を注ぐ。

「……、飲みすぎた……。」

アリエルはそう呟くと、グラスの水を飲み干しカウンターに突っ伏した。

カランカラン。

BARの扉のカウベルが鳴る。

「まだ開店前だ、出直しな。」

アリエルが客を見ず、ぶっきらぼうに答えた。

客は黙ったまま、カウンターに座る。

「……。なんだアリエル、飲みすぎか?」

アリエルが顔を上げると、そこにはイーグルがいた。

「アンタか……、まだ店を開けてないんだ。帰ってくれ。」

アリエルは青い顔をしてひねり出すように声を出した。

「……。これじゃあバーボンは飲めねぇな。」

イーグルはため息をつき、タバコを咥えて火をつけた。

紫煙がBARを漂う中、扉のカウベルが鳴った。

カランカラン。

「いらっしゃい。今日はバーテンダーがグロッキーだから、休業だ。」

アリエルの代わりにイーグルが答えた。

「むっ?そうなのか?休みなら前日に伝えてくれ。」

その声の主は、異界の魔王トリトスだった。

「魔王様か……。今日もバイトご苦労さん。」

イーグルはトリトスを見もせずに、手を上げひらひらとさせる。

「アリエルは体調不良か?仕方ない、我の調合したドリンクを飲ませるか……。」

トリトスはバーカウンターの中に入り、ドリンクを調合し始めた。

「アリエルが飛ぶぞ?」

イーグルはトリトスに問いかける。

「うむ。間違いなく飛ぶな。」

トリトスは魔王に相応しい笑いをニヤリと浮かべた。

トリトスの調合したドリンクは赤紫色に発光したドリンクで、とても人間が飲むような代物じゃないとイーグルは思っていた。

「さぁ!飲み干すがいい!」

トリトスは調合したドリンクを、アリエルの口に流し込んだ。

「ぐばぁ!げはっ!あばばばば。」

アリエルは全身を痙攣させ、言葉にならない声を出した。

「やったか!?」

イーグルがそう叫ぶとアリエルが目を覚まし、イーグルとトリトスに怒鳴った。

「お前ら俺を殺す気か!」

「だが、体調は良くなっただろう?」

トリトスがアリエルに問いただした。

「……、確かにな。だが、飲むかどうかは聞くべきだろうが!」

アリエルは感謝はしつつも、少しだけ怒っていた。

「グロッキーで返事もろくにしない方が問題だろ?あ、バーボンをロックで。」

イーグルはニヤリと笑いアリエルに注文をした。

カランカラン

扉のカウベルが鳴る。

「いらっしゃい。まだ開店前だ。」

アリエルがぶっきらぼうに答えると、扉を開けたのはローズだった。

「開店前なのに、随分賑やかね。外まで聞こえたわ。」

ローズはそう言うとカウンターに座り、タバコを咥えて火をつけた。

ローズはカウンターに座ると、静かに煙草を深く吸い込んだ。

彼女は、イーグルの隣に座っているトリトスの疲弊した様子と、アリエルが突如元気になった(そして少し怒っている)様子を観察していた。

「まさか、アリエルが二日酔いでグロッキーになるなんてね。それだけ大きな仕事だったってこと?」

ローズは紫煙を細く吐き出し、視線だけをイーグルに向けた。

「アリエルはただの飲みすぎだろうが、俺とトリトスはとんでもねぇ場所で、とんでもねぇ本を回収してきた。報酬は1000万クレジットと、未来のバーボン代をな。」

イーグルはそう答え、グラスに残った『ブラック・アビス』の最後の氷をカランと鳴らした。

「ローズ、それでアンタは何しに来たんだ?開店前のBARに、ただ煙草を吸いに来たわけじゃないだろ。」

イーグルはローズをチラリと見て話した。

「今日は完全にオフよ。近くに用事があったからついでによっただけ。まぁ、依頼はないから今日は皆自由に過ごしたら?」

イーグルはニヤリと笑うとタバコを吸い話し始めた。

「そうか……、なら俺は可愛い姉ちゃんがいる店でも行こうかね。アリエルのイカつい顔にも見飽きたしな。」

「イカつくて悪かったな。」

アリエルがムッとしつつグラスを拭き答える。

カランカラン。

扉のカウベルを鳴らしながら、イーグルはBARから去っていった。

「我は魔力の回復に務める。今日は上がりだ、また明日の夜。」

トリトスはそう言うと、奥の部屋に去っていった。

「さて、ローズ。何か飲むか?」

アリエルはそう言うと、棚からコーヒー豆を取り出した。

「今日くらいは皆自由だから、私も帰るわ。」

ローズは椅子から立ち上がると、カウベルを鳴らし店から出ていった。

イーグルとトリトスが去り、ローズも店を出て行った後、BAR【プラチナ】にようやく完全な静寂が戻った。

アリエルはカウンターを拭き終えると、棚からコーヒー豆を取り出し、手早く淹れた。

グラスに注いだ深煎りのコーヒーの湯気が、先ほどの魔王のドリンクの残滓を追い払うように、カウンターを漂う。

「俺も今日はBAR休むか……。」

アリエルはコーヒーを一口飲み、小さく呟いた。

彼は、二日酔いの頭痛ではなく、トリトスとイーグルが持ち帰った任務の波紋を、店の静けさの中で感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ